憩室炎(けいしつえん)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
憩室炎は、大腸(主にS状結腸)の壁にできる小さな袋状の出っ張り「憩室」に、炎症や感染が起こる病気です。憩室自体は多くの人にありますが、炎症が起きると腹痛や発熱などの症状があらわれます。
重要な事実
- 憩室は加齢とともに増えることが知られています。
- 多くの人は無症状ですが、炎症を起こすと腹痛や発熱が出ます。
- 便通の変化(便秘や下痢)を伴うこともあります。
- 軽症の場合は保存的治療(安静と食事・水分の調整)で改善します。
- 重症になると入院が必要なこともありますが、適切な治療でほとんどの方は回復します。
日本では、食生活の欧米化や高齢化に伴い、大腸憩室を持つ人は増えています。しかし、憩室を持つ人のうち、実際に憩室炎を発症するのは一部で、比較的まれな病気といえます。
40歳以上、特に高齢の方に多くみられます。男性よりも女性にやや多いという報告もあります。また、便秘傾向のある方や、低繊維の食事を長年続けている方はリスクが高まると考えられています。
症状
- 激しい腹痛が突然起こり、我慢できない場合
- 腹部全体が板のように硬く張る場合
- 高熱(38.5度以上)が続く場合
- 冷や汗や意識の混濁、血圧低下の兆候がある場合
- ⚠腹痛が数日続き、悪化する場合
- ⚠血便や黒い便が出た場合
- ⚠吐き気や嘔吐が止まらない場合
- ⚠発熱を伴う腹部の痛みがある場合(すぐに受診)
一般的な症状
- 左の下腹部を中心とした痛み(持続する痛みが多い)
- 吐き気や嘔吐
- 便通の変化(下痢または便秘)
- 腹部の張りや圧痛
原因
主な原因
- 憩室に便や細菌がたまり、炎症が起こることが直接の原因と考えられています。
- 慢性的な便秘や、便が硬くなる状態が憩室の発生に関係するとされています。
- 食生活の欧米化(低繊維・高脂肪の食事)が影響するという説がありますが、はっきりとは証明されていません。
リスク要因
- 年齢(40歳以上で増加)
- 便秘傾向
- 肥満や運動不足
- 非ステロイド性抗炎症薬(消炎鎮痛薬)の長期使用(特定の薬ではありませんが、一部の薬でリスクが高まるという報告があります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛がある
- 高熱が出ている
- 血便がある
- 嘔吐が続く
- 腹部が張って痛みが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 腹痛が数日続くが、我慢できる程度
- 微熱が続く
- 便通の変化が気になり始めた
診断
診断は、問診(症状や経過)、お腹の触診、血液検査、CT検査(画像検査)を組み合わせて行います。憩室炎は他の病気(虫垂炎や大腸がんなど)と症状が似ているため、医療機関での確認が重要です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度を調べます)
- 腹部CT検査(憩室の炎症や周囲の合併症を詳しく確認します)
- 腹部超音波検査(エコー)
- 尿検査や便検査(他の病気を除外するために行うことがあります)
診察で予想されること
医師からお腹のどこが痛むか、痛みが続くかどうか、発熱や吐き気があるかを尋ねられます。必要に応じて、血液検査やCT検査が行われます。検査自体に特別な痛みはなく、結果が出るまでの時間はそれほどかかりません。診断がつけば、その場で治療方針について説明があります。
治療
治療は、炎症の程度と合併症の有無によって異なります。軽症の場合は、自宅で安静にしながら食事や水分を調整することで改善することが多いです。中等症以上の場合は、入院して抗生物質(薬物)の点滴などによる治療が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 安静にして、体を休める
- 水分を十分に摂る(飲める場合)
- 医師の指示に従って、消化に良い食事(おかゆ、柔らかい野菜など)をとる
- 激しい運動や重い物を持ち上げることは避ける
- 排便を我慢しない
医療治療
医療機関では、炎症を抑えるための薬物療法が行われます。抗生物質の投与は、経口または点滴で行われます。痛みがある場合は、痛み止めが使われることもありますが、種類や使用法は医師が判断します。軽症のうちは、外来での経過観察と処方薬で対応することが多いです。
手術が検討される場合
炎症が強い場合や、膿瘍(のうよう)ができる、腸に穴が開く(穿孔)、腹膜炎を起こしたなどの合併症がある場合は、手術が必要になることがあります。また、繰り返し再発する場合も手術を検討することがあります。手術の方法やタイミングは主治医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
憩室炎の回復後は、症状がなくても大腸に憩室が残っていることがあります。無症状の場合は特別な制限はありませんが、再発を防ぐために規則正しい食事と排便習慣を心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 繊維質の多い食品(野菜・果物・全粒穀物)を意識してとる
- 水分を1日1.5〜2リットルを目安に飲む(医師の指示があればそれに従う)
- 適度な運動(ウォーキングなど)を続ける
- 決まった時間にトイレに行く習慣をつける
- 喫煙している場合は、禁煙を検討する
食事と運動
食事は、穀物・野菜・果物を中心としたバランスのよい食事が基本です。便秘を防ぐために、食物繊維を十分にとり、水分をしっかり飲みましょう。運動は、腸の動きを整えるのに役立ちます。お腹に負担のかかる強い運動は避け、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を毎日続けることがおすすめです。
精神的健康と心の健康
再発への不安や、腹痛によるストレスは気分に影響することがあります。症状がないときは普通に生活できますので、過度に心配しすぎないことが大切です。気になる症状が出たら早めに相談するという姿勢で、前向きに生活しましょう。
予防
憩室炎を完全に予防する方法はまだ確立されていませんが、便秘を予防し、規則正しい生活を送ることは、発症リスクを下げる可能性があります。食物繊維を多く含む食事と十分な水分摂取が大切です。
ワクチン
該当するワクチンはありません。
検診プログラム
憩室炎を早期に見つけるための特別な検診はありませんが、大腸がん検診(便潜血検査や大腸内視鏡検査)を定期的に受けることは、大腸全体の健康管理に役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 膿瘍(炎症の周囲に膿がたまる)
- 穿孔(大腸に穴が開く)
- 腹膜炎(お腹全体に炎症が広がる)
- 瘻孔(腸と他の臓器の間に異常なトンネルができる)
- 腸閉塞(腸が詰まる)
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、多くの方は数日から数週間で症状が改善します。軽症の場合は、外来での治療で治ることがほとんどです。重症でも、入院治療や手術によって回復する見込みは高いです。再発を繰り返す方もいますが、食事や生活習慣の見直しによってリスクを減らすことができます。安心して医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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