子どもの虫垂炎(ちゅうすいえん)~いわゆる「盲腸(もうちょう)」について~
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
虫垂炎は、おなかの中にある虫垂(ちゅうすい)という細い袋に炎症が起こる病気です。「盲腸(もうちょう)」と呼ばれることもあります。放置すると炎症が悪化し、虫垂が破れることもあるため、早めに診察を受けることが大切です。
重要な事実
- 虫垂炎は子どもにもよく見られる病気です。
- 初期の症状は風邪や胃腸炎(おなかの風邪)と似ていることがあります。
- 痛みがおへその周りから始まり、右下腹部へ移動することが典型的です。
- 治療が早ければ、手術をせず抗生物質だけでよくなることもあります。
- 虫垂炎はほかの人にうつることはありません。
虫垂炎は、子どもがかかる外科の病気の中で最も多いものの一つです。日本では10歳前後から思春期にかけて、特に多く見られます。
虫垂炎はどの年齢でも起こりますが、特に5歳から15歳くらいの子どもに多く見られます。男の子にも女の子にも発症する可能性があります。
症状
- 激しい腹痛が続く、またはどんどん強くなる
- おなか全体が張って、触ると硬い
- ぐったりして、呼びかけに対する反応がにぶい
- 便に血が混じっている
- 呼吸が苦しそう
- ⚠腹痛と発熱がある
- ⚠嘔吐が続いて水分をとれない
- ⚠痛みのため歩けない、体を丸めて動けない
- ⚠いつもと違って元気がない、顔色が悪い
一般的な症状
- おへその周りが痛む(その後、右下腹部に痛みが移ることが多い)
- 食欲がない
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 微熱から高熱までの発熱
- 下痢や便秘をともなうこともある
子供の症状
- 子どもは症状をうまく言葉で伝えられないことがあります。
- 「おなかが痛い」と言うだけで、痛む場所がはっきりしないこともあります。
- いつもより機嫌が悪い、ぐったりする、泣き続ける、といった様子が見られることもあります。
- 乳幼児では風邪や胃腸炎ととても似ているため、診断が難しいことがあります。
高齢者の症状
- お年寄りでは痛みを感じにくく、症状がはっきりしないことがあります。
- 発熱がなかったり、痛みが弱かったりしても、炎症が進んでいることがあるので注意が必要です。
原因
主な原因
- 虫垂の入り口がふさがると、中に細菌がたまって炎症を起こすと考えられています。
- 便やリンパ組織(体を守る組織)が虫垂の入り口をふさぐことが原因になることがあります。
- 感染症がきっかけになることもありますが、はっきりした原因がわからないことも少なくありません。
リスク要因
- 年齢:10歳から20歳代に多いとされています。
- 便秘:虫垂の中に便がたまりやすいことが関係する可能性があります。
- 食生活や体調によって、腸内の細菌のバランスが変わることが影響するかもしれません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- おなかの痛みが数時間続いている
- 痛みが右下腹部に移ってきた
- 吐き気や嘔吐がある
- 熱がある
- 食欲がなく、ぐったりしている
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みはあるが、今は耐えられる程度で、様子を見たい場合
- 受診のタイミングに迷う場合
診断
虫垂炎の診断は、医師の問診と診察に加えて、血液検査や尿検査、画像検査などを組み合わせて行います。子どもの場合、症状をうまく伝えられないこともあるため、時間をかけて慎重に診断されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:炎症の程度を調べます。
- 尿検査:尿路の病気ではないかを確認します。
- 超音波(ちょうおんぱ)検査:おなかの中の様子を映して、虫垂の腫れを確認します。
- CT検査:必要に応じて、より詳しく調べます。
診察で予想されること
小児科または外科の医師が、おなかをやさしく押して痛みの場所を確認します。血液検査や画像検査には時間がかかることがありますが、診断を確定するために必要な検査です。診察中も、子どもが不安にならないよう、保護者がそばで安心させてあげてください。
治療
虫垂炎の治療は、炎症の程度や子どもの年齢、体の状態によって決まります。軽い炎症であれば、抗生物質による治療で改善することもあります。悪化している場合や破れる危険がある場合は、手術が必要になることがあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示なしに、痛み止め(ちつうざい)を自分で使わない。
- 診断がつくまでは、食事や飲み物を控えるよう指示されることがある。
- 安静にし、症状の変化があればすぐに医師や看護師に伝える。
- 治療後は医師の指示にしたがって、食事や運動を少しずつ再開する。
医療治療
治療の基本は、炎症を抑える抗生物質(こうせいぶっしつ)の投与です。点滴(てんてき)や内服薬で行われます。炎症が強い場合や、虫垂が破れている場合は、入院して集中的に治療します。破れる危険がある場合や抗生物質でよくならない場合は、手術が行われます。
手術が検討される場合
虫垂が破れそうな場合、破れてしまった場合、抗生物質での治療がうまくいかない場合には、虫垂を切除する手術(虫垂切除術)が行われます。最近では、おなかに小さな穴をあけて行う腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)が多くの施設で行われており、体への負担が少ないとされています。
この病気と共に生きる
入院や手術をした場合でも、回復すれば退院し、通常の生活に戻ることができます。最初は消化の良い食事から始め、体力に合わせて活動量を増やしていきましょう。退院後も痛みや熱などの異変があれば、すぐに医師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 退院直後は激しい運動を避ける。
- 十分な休息と睡眠をとる。
- 水分をこまめに摂る。
- 手術の傷を清潔に保ち、異常(赤み、腫れ、しみ出しなど)があれば医師に伝える。
食事と運動
退院後は、おかゆややわらかい食べ物など消化の良いものから始め、便通を整えるために、医師の許可を得てから野菜や果物なども少しずつ加えましょう。運動は、軽い散歩から始め、激しい運動やスポーツは医師の許可があるまで控えます。
精神的健康と心の健康
入院や手術は、子どもにとってこわい経験になることがあります。痛みや不安を感じたときは、保護者がそばでゆっくり話を聞き、「大丈夫だよ」と安心させてあげてください。無理に元気を出させる必要はありません。
予防
虫垂炎を確実に予防する方法はまだわかっていません。ただし、便秘を防ぐために、バランスのよい食事、規則正しい生活、適度な運動を心がけることは、健康的な腸を保つために役立つと考えられています。
ワクチン
虫垂炎を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
虫垂炎に対する特別な健康診断や検診はありません。
合併症
治療しない場合
- 虫垂が破れる(穿孔:せんこう)と、おなかの中に細菌が広がり、腹膜炎(ふくまくえん)を起こすことがあります。
- おなかの中に膿(うみ)のかたまり(膿瘍:のうよう)ができることがあります。
- 治療が遅れると、入院期間が長くなったり、手術の範囲が広がったりすることがあります。
長期的な見通し
虫垂炎は、適切な診断と治療を受ければ、多くの子どもは完全に回復し、後遺症なく元の生活に戻れます。治療が少し遅れても、しっかり治せる病気です。心配なことは遠慮なく医師に相談してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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