心房中隔欠損症(ASD)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心房中隔欠損症(ASD)は、心臓の上のほうにある左右の部屋(心房)を隔てる壁に、穴があいている先天的な心臓の病気です。穴の大きさや場所は人によって違い、小さい穴は無症状で自然に閉じることもありますが、大きな穴は心臓に余分な血液が流れ、負担をかけることがあります。
重要な事実
- 生まれつきの心臓の構造の異常です
- 小さな穴は自然にふさがることがあります
- 大きな穴は心房細動や肺高血圧などの合併症につながる可能性があります
- 適切な治療により、多くの人が健康的な生活を送れます
生まれつきの心臓病の中では最も多いタイプのひとつで、1000〜2000人に1人程度の割合で見られます。
女性にやや多い傾向がありますが、男性にも見られます。大人になるまで症状がなく、健診や他の目的の検査で偶然見つかることもあります。
症状
- 急に激しい胸の痛みや圧迫感がある
- 突然、息ができずゼーゼーする
- 意識を失いそうになる、または意識を失った
- 片側の手足・顔の麻痺、ろれつが回らないなど脳卒中の症状
- ⚠安静にしていても息苦しさが続く
- ⚠動悸が止まらず、ふらつく
- ⚠脚のむくみが急に増した
- ⚠日常生活が困難になるほどの強い疲労感
一般的な症状
- 無症状のことが多い
- 運動や作業で息切れしやすい
- 疲れやすさ
- 動悸(心臓がドキドキする感覚)
- 頻繁な風邪や呼吸器感染症
子供の症状
- 体重が増えにくい、成長がゆっくり
- ミルクや食事中に息切れする
- 疲れやすく遊びを嫌がる
- 気管支炎や肺炎を繰り返す
高齢者の症状
- 動悸が続く、不整脈が出る
- 階段を上がるだけで息切れする
- 脚や足首のむくみ
- 立ちくらみや失神
- 脳卒中(ふらつき、しびれ、ろれつが回らない)のリスクが高まる
原因
主な原因
- 胎児の心臓が形づくられる過程で、心房の壁が十分に閉じずに穴が残ってしまう
- 多くの場合、明確な原因はわからない
- 一部の染色体異常や遺伝子変化が関わることがある
リスク要因
- 家族に心房中隔欠損症などの先天性心疾患を持つ人がいる
- 妊娠中の風疹ウイルスなどの感染症
- 妊娠中の糖尿病(母体の持病)
- 妊娠中のアルコール摂取や特定の薬の使用
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の「救急対応が必要な症状」がある場合は、ためらわずに救急診療を受けてください
- 動悸や息切れが急に悪化した
- 胸の痛みが続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 生まれたときに心雑音を指摘されたことがある
- 健康診断で心電図の異常を指摘された
- 妊娠や大きな手術を考えている
診断
健康診断や風邪の診察で心雑音が聞こえ、心電図や胸部X線検査で疑いが見つかります。確定診断には、心臓の超音波検査(心エコー)が最も重要です。
行われる可能性のある検査
- 聴診(心音の確認)
- 心電図(心臓の電気的な活動)
- 胸部X線検査(心臓の大きさや肺の状態)
- 心臓超音波検査(心エコー)(穴の位置と大きさ)
- 経食道心エコー(食道からより詳しく調べる検査)
- 心臓カテーテル検査(血管から細い管を入れ、血圧や血流を測る検査。必要に応じて)
診察で予想されること
最初はかかりつけ医から心臓の専門医院(循環器内科)を紹介されることがほとんどです。専門医が問診とさまざまな検査を行い、穴の状態に合わせた治療方針や経過観察の計画を説明します。必要に応じて心臓外科との連携も行われます。
治療
治療方法は、穴の大きさ・位置・患者さんの年齢・症状の有無などで一人ひとり異なります。小さな穴で症状がなければ経過観察だけの場合もありますが、大きな穴や症状がある場合はカテーテル治療または外科的手術が検討されます。
自宅でのセルフケア
- かかりつけ医と心臓専門医の指示に従って定期通院する
- むし歯や歯周病を放置しない(血流感染により心臓の感染症を起こすリスクがある)
- 疲れを感じたら無理をせず、十分に休む
- 妊娠を考えている場合は、事前に心臓の状態を確認してもらう
医療治療
症状を和らげるために、心臓の負担を減らす薬や、不整脈を抑える薬などが処方されることがあります。ただし、薬だけでは穴をふさぐことはできません。穴をふさぐ方法としては、太ももの血管から細い管を使って穴にパッチを当てるカテーテル治療や、体の外から心臓を手術する方法があります。どちらを選ぶかは、穴の形・大きさ・周囲の組織の状態によって医師が総合的に判断します。
手術が検討される場合
穴が大きく、右心系に負担がかかっている場合、肺に血液が流れすぎる場合、または不整脈や心不全の症状がある場合は、カテーテル治療が可能かどうかを検討し、難しい場合は心臓外科手術が勧められます。乳幼児で成長障害や心不全がある場合は、早期の手術が必要になることもあります。
この病気と共に生きる
治療後は、ほとんどの場合、日常生活の制限なく過ごせます。ただし、定期的な心エコーや心電図によるフォローアップは継続します。歯科治療や観血治療の前に、心臓の状態を医師に伝えることが重要です。
生活習慣のアドバイス
- 無理のない範囲で運動を行う(医師の許可が出るまでは激しいスポーツは控える)
- 禁煙・受動喫煙を避ける
- アルコールは適量を心がける(医師の指示がある場合は従う)
- 口の中を清潔に保つ(歯磨き・定期的な歯科検診)
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、塩分の摂りすぎに注意しましょう。運動は血液の循環に良い影響を与えますが、運動の種類や強度は医師に相談してください。多くの場合、ウォーキングなどの軽い有酸素運動は安全に行えます。
精神的健康と心の健康
心臓の病気があると、「今後どうなるのだろう」と不安になることがあるかもしれません。しかし、多くの患者さんが適切な治療を受けて普通に近い生活を送っています。つらい気持ちは一人で抱え込まず、家族や医療スタッフ、心臓病患者の交流の場で話すことも助けになります。
予防
心房中隔欠損症そのものは、はっきりとした予防法はありません。ただし、妊娠中の感染症やアルコール、特定の薬剤使用などのリスクを避けることで、先天性心疾患の発生率を減らせる可能性があります。
ワクチン
妊娠を計画している女性は、風疹やおたふくかぜなどの予防接種をあらかじめ済ませておくことが推奨されます。接種についてはかかりつけ医と相談してください。
検診プログラム
妊娠中の超音波検査で、胎児の心臓の異常を指摘されることがあります。また、出生後に心雑音や成長の問題があれば、心エコーなどの精査が行われます。
合併症
治療しない場合
- 肺動脈の血圧が高くなる肺高血圧症
- 心不全(心臓のポンプ機能の低下)
- 心房細動などの不整脈
- 脳卒中(血管内の血栓が脳に飛ぶこと)
- 感染性心内膜炎(心臓の内側に感染が起こる重い病気)
長期的な見通し
早期に適切な治療を受けた場合、多くの人が健康的な生活を送ることができます。小さな欠損で自然に閉じた場合や、合併症なく経過観察だけの場合は、予後はとても良好です。たとえ治療が必要でも、現在はカテーテル治療や手術の安全性が高まっており、安心して療養に取り組めます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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