MRSA感染症とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、傷口や鼻の中などにいるブドウ球菌の一種が、多くの抗生物質(こうせいぶっしつ)に効かなくなったものです。もともと健康な人には感染しにくいですが、手術後や免疫力が落ちている人に皮膚や血液などの感染症を起こすことがあります。
重要な事実
- 多くの人は、MRSAを体に持っていても感染症を起こさないことがあります(これを『保菌』といいます)。
- MRSAの多くは、手や物を介して人から人へうつります。ていねいな手洗いが予防に大切です。
- 抗生物質が効きにくいだけで、特別に強い細菌というわけではありません。治療方法はあります。
MRSAは、日本では病院や高齢者施設などで比較的よく見られる細菌です。健康な人がMRSAに感染することは多くありません。
入院している人、手術を受けた人、高齢者、免疫力が低下している人、カテーテルなどを使用している人は感染しやすくなります。
症状
- 急な高熱(38℃以上)が続く
- 息が苦しい、呼吸が速い
- ぼんやりして意識がはっきりしない
- 傷口から赤い線が広がる、痛みがどんどん強くなる
- 胸の痛みや強い寒気がする
- ⚠皮膚の腫れや膿が広がっている
- ⚠発熱や悪寒がある
- ⚠糖尿病や免疫低下など、もともとの病気によって重症化が心配される場合
- ⚠乳児や高齢者で元気がない、食欲がない
一般的な症状
- 皮膚の赤み、腫れ、痛み、膿(うみ)が出る
- おできや皮膚の炎症
- ただし、体にいるときは症状がないこともあります
子供の症状
- 皮膚に赤く腫れたできものができる
- 水ぶくれのような症状(とびひ)
- 熱や不機嫌、ぐったりする
高齢者の症状
- 皮膚の感染に加えて、肺炎や、傷口の感染が起こりやすい
- 熱が高い、意識がもうろうとする、食欲がない
- 糖尿病や心臓病など別の病気があると重症化しやすい
原因
主な原因
- 傷や皮膚の弱い部分から細菌が入る
- MRSAを持っている人や物に触れた手を介して感染する
- 汚染された医療機器や、病院の環境を介して感染する
リスク要因
- 入院や手術を受けた
- カテーテルや人工呼吸器など医療機器を使用している
- 高齢である
- 免疫力が低下している(糖尿病、がん治療中など)
- 皮膚の傷、やけどの傷がある
- 老人ホームなど人が集まって暮らす場所にいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 傷が赤く腫れて痛みが増している
- 38℃以上の熱が出ている
- 膿が溜まってきている、または体の不調がある
- 免疫が弱っている人や妊娠中の方は、早めに相談を
定期受診を予約すべき場合:
- 小さな皮膚のブツブツが数日たってもよくならない
- 医療機関でMRSAの感染や保菌を指摘されたことがある方で、質問したいことがある
- 皮膚や傷の手当てについて正しい方法を知りたい
診断
医師が、症状やいきさつを確認し、必要に応じて検査を行います。鼻のあなや皮膚の傷、分泌物、血液などから細菌を調べる検査(培養検査)で、MRSAかどうかを確認します。
行われる可能性のある検査
- 鼻や傷口の綿棒でこすって取る検査
- 傷口の分泌物や膿の検査
- 血液や尿の検査
診察で予想されること
検査の結果は、通常数日かかります。結果が出るまでは、感染の広がりを防ぐための注意(手洗いや傷を覆うことなど)をしながら待ちます。医師が結果をもとに、感染しているのか、ただ持っているだけなのかを説明します。
治療
治療は、MRSAによる感染症(病気)があるかどうかで変わります。皮膚の感染が軽い場合は、抗菌薬を服用し、傷の手当てを行います。重症な場合は、入院して抗菌薬を点滴で使用することがあります。抗菌薬は、細菌の検査結果に合わせて医師が選びます。自己判断で抗菌薬をやめたり、余っている薬を使ったりしないでください。
自宅でのセルフケア
- 傷を清潔に保ち、防水シートやガーゼで覆う
- 1日何回も石けんと流水で手を洗う
- タオルや衣類、カミソリなどを他人と共有しない
- 膿やおできを自分で押して出さない
- 体温と傷の状態を毎日確認する
医療治療
感染症を起こしている場合は、医師が処方する抗菌薬(抗生物質)を指示どおりに飲みます。重症の場合は、入院して抗菌薬の点滴や、傷をきれいにする処置が行われます。MRSAに効く薬は、耐性のパターンによって専門医が慎重に選びます。医療機関では感染対策として、手袋やガウンを着用して処置を行うことがあります。
手術が検討される場合
おできや膿が溜まっている場合、『切開排膿(せっかいはいのう)』という小さな処置を行い、膿を出すことがあります。これはメスのような器具で切開して膿を取り除く治療で、状態に応じて行われます。
この病気と共に生きる
MRSAの感染症の治療中は、指示された抗菌薬を服用し、傷のケアを続けてください。症状が良くなっても、医師の指示があるまでは薬をやめないことが大切です。定期受診を続け、体の変化を観察しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手を洗うタイミング(外出後、トイレ後、食事の前)を習慣にする
- 傷は必ず清潔に保ち、日常の触れる水や汚れから守る
- ベッドシーツやタオルは頻繁に洗濯する
- 家族にうつさないため、自分のタオルは分けて使う
食事と運動
バランスの良い食事や十分な休養で免疫力を保つことが大切です。感染症で熱があるときは、激しい運動は避けて休んでください。熱がなく体調が良ければ、普通の運動をして構いませんが、体に異常を感じたら無理をしないでください。
精神的健康と心の健康
「人にうつすのでは」「治らないのでは」という不安を感じることがあります。MRSAは適切な対処で十分に管理できる細菌です。気持ちが落ち込んだり、眠れないほど不安が続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や自治体のこころの健康相談窓口に相談してください。
予防
はい、MRSAは予防できることが多いです。最も効果的なのは、石けんと流水による手洗いです。また、傷を清潔にし、パーソナル用品を共有しないこと、医療施設での手指衛生ルールを守ることが予防につながります。
ワクチン
現在、MRSAに対するワクチンはありません。
検診プログラム
入院前や感染が広がるのを防ぐために、MRSAの保菌検査が行われることがあります。特に高齢者施設や病院では、流行を防ぐためにスクリーニング(検査)が行われることがあります。検査を勧められたら、医師に目的を説明してもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 皮膚の感染が深くなり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)や膿瘍(のうよう)という病気になることがある
- 細菌が血液に入り、敗血症(はいけつしょう)を起こすことがある
- 肺炎や、心臓の内側の感染症(心内膜炎)、骨や関節の感染を起こすことがある
長期的な見通し
MRSAを恐れすぎる必要はありません。早期に発見して適切な治療を受ければ、ほとんどの人は回復します。保菌(ただ持っているだけ)の状態は、通常は無害で、多くの場合いずれ自然に消失します。薬が効かない種類でも、医師が代替の治療を組み合わせて対応します。新型の抗菌薬や予防策も研究されています。希望をもって、医療チームと一緒に治療に取り組みましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。