脊髄損傷(せきずいそんしょう)— 基本情報と生活への向き合い方
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脊髄損傷とは、背中を縦にはしる「脊髄」という神経の束が、事故や転倒などで傷つき、動きや感覚などに障害が出る状態です。損傷の位置や程度によって、症状は大きく異なります。
重要な事実
- 脊髄損傷は「完全麻痺(まひ・完全に動かせない)」と「不完全麻痺(一部機能が残る)」に分けられます。
- 発症後の早い段階からのリハビリテーションが、回復に大きく影響します。
- 損傷によって起こる生活のしづらさは、支援や工夫である程度補うことができます。
日本では毎年それほど多いけがではなく、有病率は人口10万人あたり約40人前後とされています。交通事故や転倒・転落などにより、どなたでも起こり得るけがです。
若い成年層(特に20~30代)の男性に交通事故などによる外傷が多く見られますが、高齢者の転倒や尻もちによる損傷も増えています。基礎疾患や体の状態によっては、子どもや高齢者にも起こり得ます。
症状
- 事故や転倒のあとに首や背中が激しく痛む
- 手足や体の半分の力が入らない、動かない
- しびれや感覚が急速に広がる
- 息が苦しい、胸が圧迫される
- 尿や便の感覚が急に分からなくなった
- ⚠背中の痛みとともに発熱がある
- ⚠数日にわたって手足のしびれや脱力が続く
- ⚠排尿や排便の調子が急に変わった
- ⚠原因がはっきりしない背中の痛みが続いている
一般的な症状
- 手足や体の一部を動かせない
- 感覚が鈍い、しびれ、またはまったく感じない
- 痛みや異常な刺激(チクチクする)が続く
- 排尿や排便がしにくい、または自分でコントロールできない
- 呼吸が難しい(首の近くに損傷がある場合)
子供の症状
- 子どもでは症状をうまく伝えられないことがあるため、「いつもと活動性が違う」「機嫌が悪い」「歩こうとしない」「胸や腹を触られるのを嫌がる」などのサインに注意が必要です。
高齢者の症状
- 高齢者では骨がもろくなっていると軽い転倒でも損傷する可能性があります。首や背中の痛み、脚の脱力、手足のしびれのほか、もともとの慢性疾患の悪化として現れることもあります。
原因
主な原因
- 交通事故(特に高速走行中の追突や横転)
- 転倒・転落(高所からの落下や浴室内の滑りなど)
- スポーツ事故(ラグビー、柔道、水泳の飛び込みなど)
- 鋭利な物による刺傷
リスク要因
- 若年男性(特に20〜30代)
- 高齢での転倒や骨粗鬆症(こつそしょう症:骨が脆くなる状態)
- シートベルトやヘルメットの未着用
- 飲酒を伴う車の運転・行動
- 激しいスポーツでの無理な体勢
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い衝撃のあとに頭痛・めまい・手足のしびれ・脱力がある
- 背中の痛みとともに脚の感覚や力が弱まる
- 尿が急に出なくなった(尿閉)
定期受診を予約すべき場合:
- 尻もちや転倒後に慢性的な腰痛が続く
- 足や腕のしびれが徐々に悪化する
- 歩くとすぐ疲れる、バランスを崩しやすい
診断
医師は、けがの状況や症状を詳しく聞き、神経の働きを調べる診察を行います。そのうえで、背骨や脊髄の状態をイメージで確認するため、画像検査を行います。
行われる可能性のある検査
- X線検査:背骨の骨折やずれを確認します
- CT検査:骨の損傷をより詳しく調べます
- MRI検査:脊髄そのものの損傷や出血、むくみを確認します
- 神経伝導検査や筋電図(必要に応じて):神経と筋肉のつながりを評価します
診察で予想されること
救急外来では、呼吸や循環の安定を最優先で行い、できるだけ早く画像検査を行います。痛みが強い場合でも、体を動かさないようにしながら診察を進めます。診断の結果は、症状の程度や今後の治療方針とともに医師から説明されます。
治療
脊髄損傷の治療は、まず背骨を安定させてそれ以上の損傷を防ぎ、次に手術や薬、リハビリテーションを組み合わせて、残っている機能を最大限に活かすことを目指します。治療のゴールは人それぞれです。
自宅でのセルフケア
- 褥瘡(じょくそう:床ずれ)を防ぐために、寝ている姿勢を定期的に変える
- 膀胱(ぼうこう)と腸の管理法を学び、合併症を予防する
- 感染症のサイン(発熱、発赤、痛み)に早めに気づくようにする
- 転倒を防ぐため、自宅の手すりや環境を整える
医療治療
損傷直後は、炎症を抑えるための薬や、痛み・けいれん(スパズム)を和らげる薬が使われることがあります。いずれも医師の処方のうえで、症状に合わせて調整されます。このほか、電気刺激や運動療法などのリハビリテーションも治療の一環です。
手術が検討される場合
背骨が不安定な場合は、手術で骨を固定する必要があります。また、血腫(内部の血のかたまり)による圧迫がある場合も、減圧手術などの調整が検討されます。
この病気と共に生きる
損傷の程度によって生活の工夫や介助の方法は異なります。車いすや装具、バリアフリー設備を利用しながら、自分に合った生活リズムをつくることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(喫煙は血流を悪化させるため)
- スキンケアを徹底して皮膚のトラブルを防ぐ
- 定期的に血圧や尿の状態をチェックする
- 無理のない範囲で、趣味や外出を続ける
食事と運動
栄養バランスのよい食事は、皮膚や筋肉を健康に保つために重要です。特にたんぱく質と水分を十分に摂ることがすすめられます。運動は理学療法士の指導のもとで、残っている筋肉を鍛えることを中心に行います。
精神的健康と心の健康
体の動きや感覚が変わることは、心にも大きな影響を与えます。落ち込みや不安、自尊心の低下を感じることは自然なことです。感情を抑え込まず、家族や専門家に気持ちを話すことが大切です。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、交通事故や転倒による損傷のリスクを減らすことはできます。シートベルトやヘルメットを着用し、家の中の段差や滑りやすい場所を改良するだけでもリスクは低下します。
合併症
治療しない場合
- 褥瘡(床ずれ)や皮膚感染
- 尿路感染、膀胱結石
- 深部静脈血栓症(血管に血のかたまりができる)
- 呼吸器感染(せきや痰が出せず肺炎になることも)
- 関節の動きが固くなる(拘縮)
長期的な見通し
脊髄損傷は重症になると一生の機能障害が残ることもありますが、多くの人が残っている機能を活かして自分らしい生活を築いています。リハビリテーションを継続し、医療や介護、支援制度をうまく使いながら、前を向いて生活することは十分可能です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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