甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺機能低下症は、首の前側にある甲状腺という器官が、体に必要な甲状腺ホルモンを十分に作れなくなることで起こる病気です。甲状腺ホルモンは体の代謝(エネルギー消費)を調整する働きがあり、これが不足すると体全体の機能がゆっくりになります。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンは、からだの代謝・体温・心拍などを調整しています。
- 治療を続けることで、多くの人が健康な日常生活を取り戻せます。
- 市販のサプリメントや健康食品だけで改善するものではないため、医師の診察が必要です。
決して珍しい病気ではありません。日本では成人の約10人に1人(特に女性)が甲状腺機能低下症のリスクを持つという報告もあります。健康診断で偶然見つかることも増えています。
どの年齢の人でも起こりえますが、特に20~50歳代の女性に多く、女性は男性の約5~10倍といわれています。家族内に甲状腺の病気を持つ人がいると見られやすくなります。
症状
- 意識がもうろうとする
- 呼びかけに反応しない
- 体温が著しく低い(低体温)
- 呼吸が浅く、ゆっくりになる
- ⚠普段よりも極度に眠くなる
- ⚠心拍が遅くなり、息苦しさや胸の痛みがある
- ⚠足や顔のむくみが急に強くなる
- ⚠日常生活が続けられないほどのひどい疲れや無気力がある
一般的な症状
- 疲れやすい
- 体重が増える
- 寒がりになる
- 便秘になりやすい
- 髪や肌が乾燥する
- 記憶力や集中力が低下する
- 動作がゆっくりになる
- 月経不順や月経の量が変わる
原因
主な原因
- 橋本病(慢性甲状腺炎)という自己免疫性甲状腺炎が最も多い原因です。免疫が甲状腺を攻撃してしまうことで起こります。
- 甲状腺の手術後や放射性ヨウ素治療などで甲状腺ホルモンを作る力が低下することがあります。
- 一部の薬が原因となる場合があります(心臓病やうつ病などの薬で生じることがあります)。
- 先天性(生まれつき)の甲状腺ホルモン合成障害や、まれに甲状腺が形成されない場合もあります。
リスク要因
- 女性であること(特に妊娠・出産後)
- 家族に橋本病や甲状腺機能低下症を持つ人がいる
- 関節リウマチや1型糖尿病など、ほかの自己免疫疾患にかかっている
- 高齢になる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い疲れや眠気が続き、仕事や家事が普段どおりにできない
- 息切れ、胸の痛み、極度のむくみなどが突然現れた場合は、その日中に医療機関を受診する
- 妊娠を希望している、または妊娠中で甲状腺機能に不安がある場合は、早めに相談する
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすい、寒がり、体重増加などの症状が複数あり、2週間以上続いている
- 健康診断で甲状腺の値に異常があるといわれた(その際は再検査を)
- 家族に甲状腺の病気の人がいて、自分にも症状があり心配な場合
診断
甲状腺機能低下症の診断は、問診と血液検査で行います。血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモン(FT4)の値を調べ、バランスを確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモンなど)
- 超音波(エコー)検査:甲状腺の形やしこりの有無を確認
- 抗甲状腺自己抗体検査:橋本病の原因を調べる
診察で予想されること
診察では、最近の症状、使っている薬、家族の病気歴について質問があります。血液検査の結果は後日説明されます。甲状腺機能低下症が疑われる場合、治療を始めるかどうかについて医師が説明します。
治療
治療の中心は、不足した甲状腺ホルモンを薬で補うことです。検査結果と体調に合わせて薬の量を調整してもらうことで、症状は数週間から数か月で改善していきます。
自宅でのセルフケア
- 処方された薬がある場合、毎日同じ時刻に、かかりつけ医の指示どおりに飲む
- 通院や血液検査を日記やカレンダーに記録して、忘れずに受ける
- 体重、気分、便通などの変化をメモしておく
- 甲状腺の病気があることを、他の医療機関を受診する際に伝える
医療治療
主な治療は、甲状腺ホルモンを補充する薬です。薬の量は血液検査の結果に基づいて決められ、定期的に調節されます。自己判断で量を変えたり薬をやめたりせず、医師の指導に従ってください。妊娠中や授乳中も、医師と一緒に治療を続けることが大切です。
手術が検討される場合
通常、甲状腺機能低下症に対する手術は行いません。橋本病で甲状腺が大きく腫れて気道を圧迫する場合や、甲状腺がん・結節などが疑われる場合にのみ、手術が検討されます。
この病気と共に生きる
健康な人の生活とほぼ同じように送れます。ただし、治療を続けることで数値や症状が安定していることを、定期的な通院で確認することが大切です。体調が変わったら、無理をせず医師に相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 十分な睡眠をとる
- 疲れたときは休む
- ストレスをためないように工夫する
- 温かい服装で冷えを防ぐ
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、バランスのよい食事を心がけましょう。軽い運動(ウォーキングやストレッチ)は症状を和らげるのに役立ちます。大豆製品や食物繊維が多い食品は、甲状腺ホルモン薬の吸収に影響することがあるため、大量に摂る場合は医師に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
甲状腺機能低下症では、意欲低下や抑うつ気分、集中力の低下などが起こることがあります。これらは治療が進むと改善することが多いですが、つらいまま続く場合は、医師や家族、職場の相談機関などに話してみましょう。心のケアも治療の一部です。
予防
甲状腺機能低下症そのものを予防する方法はありません。ただし、血液検査によって早期に発見し、治療を始めれば、合併症を防ぐことができます。健康診断の機会を利用して定期的にチェックするのが重要です。
ワクチン
甲状腺機能低下症に特化したワクチンはありません。
検診プログラム
日本では、新生児を対象にした先天性甲状腺機能低下症の血液検査(マススクリーニング)が行われています。成人の場合は、健康診断の血液検査で甲状腺ホルモンの異常を指摘されることがあります。
合併症
治療しない場合
- 動脈硬化や脂質異常症(コレステロールの上昇)を起こしやすくなる
- うつ状態や記憶障害などの精神症状が現れることがある
- 妊娠中の女性では流産・早産・胎児の発育に影響する可能性がある
- 重症化すると、心不全や意識障害(粘液水腫昏睡)を起こすことがある
長期的な見通し
適切な治療を続ければ、症状のほとんどは改善し、健康な日常生活や仕事を続けることができます。治療は長く続くことが多いですが、通院と薬の管理を続けることで、合併症を防ぎ、症状のない状態を保つことが可能です。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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