妊娠悪阻:妊娠中の重度の吐き気と嘔吐
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠悪阻(にんしんあくそ)は、妊娠中に起こる強い吐き気と嘔吐が続き、食事や水分を十分にとれなくなる状態です。一般的な「つわり」と似ていますが、症状が重く、体の水分が不足して体重が減るなどの問題が出るため、医学的な治療が必要になることが多い点が異なります。
重要な事実
- 妊娠初期に起こりやすいですが、重症な場合は妊娠中ずっと続くこともあります。
- 水分や栄養が不足すると、脱水や体重減少などの合併症を起こすことがあります。
- 適切な治療を受けることで、多くの場合は症状が軽くなり、母子ともに健康を保てます。
約100人の妊婦に1~2人の割合で起こると言われています。つわりとは異なり、少数ですが、きちんと治療が必要な病気です。
妊娠中の女性、特に妊娠初期(妊娠4週から8週ごろ)に始まることが多く、妊娠12週頃までに症状のピークを迎えることが多いです。ただし、妊娠後期まで続く人もいます。
症状
- 水分がほとんどとれず、尿が12時間以上出ない
- 意識がもうろうとする、またはぼんやりしている
- 吐いたものに血が混じっている、または黒いコーヒーかすのようなものが混じる
- 激しい腹痛を伴う
- ふらふらして立っていられない
- このような症状が1つでもある場合は、ためらわずに119番(救急車)を呼んでください。
- ⚠24時間以上、水分をまったく保てない
- ⚠唇や口の中が乾き、尿が濃い黄色または少ない
- ⚠立ち上がる時にめまいがする
- ⚠体重が妊娠前から5%以上減っている
- ⚠食べ物や飲み物を全く受け付けず、ぐったりしている
一般的な症状
- 1日に何度も繰り返す強い吐き気
- 食事や水分を口にしてもすぐに吐いてしまい、体内に保てない
- 体重が急激に減る(妊娠前の体重の5%以上)
- 脱水症状:唇や口の中が乾く、尿の色が濃くなる、尿の量が減る
- 立ちくらみやめまい
- 体がだるい、疲れやすい
- 動悸(心臓がドキドキする)
原因
主な原因
- 妊娠中に増えるホルモン(hCGやエストロゲンなど)が、胃や脳の吐き気をつかさどる部分に影響することが関係していると考えられています。
- 妊娠により胃の動きがゆっくりになることも、原因の一つとされています。
- 遺伝的な体質も関係している可能性があります。
- 心理的なストレスが症状を悪化させることはありますが、原因そのものではありません。
リスク要因
- 初めての妊娠
- 過去の妊娠で妊娠悪阻になったことがある
- 双子など多胎妊娠
- 胞状奇胎(胎盤が異常に増える病気)
- 妊娠前に頭痛や乗り物酔いをしやすい体質
- 妊娠前に体重が極端に少ない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の緊急症状がある場合
- 24時間以上水分がとれない場合
- 尿がほとんど出ない場合
- 意識が遠くなるような感覚がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 吐き気や嘔吐が日常生活に支障をきたしている場合
- 体重が減り続けている場合
- 家で過ごすことが難しく、寝たきりに近い状態の場合
診断
医師が丁寧に話を聞き、身体を診察したうえで診断します。妊娠悪阻は、他の病気の可能性を除外して診断されることが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(脱水の程度やケトン体を調べる)
- 血液検査(電解質、肝機能、腎機能、甲状腺ホルモンなどを調べる)
- 超音波検査(赤ちゃんの状態や多胎、胞状奇胎を確認する)
診察で予想されること
診察では、吐き気や嘔吐の程度、どれくらい食べたり飲んだりできているか、体重の変化、尿の量などを詳しく尋ねられます。必要に応じて、入院での治療をすすめられることもあります。
治療
妊娠悪阻の治療の目標は、吐き気や嘔吐を抑えながら、失われた水分や栄養を補い、母体と赤ちゃんの健康を保つことです。軽症の場合は生活の工夫と通院で管理し、重症の場合は入院して治療します。
自宅でのセルフケア
- 少量の水や経口補水液をこまめに飲む(一度に大量に飲まず、小さじ1杯程度ずつ頻繁に)
- 食事は少量を頻回にとる(1〜2時間おきにクラッカーや小さめのおにぎりなど)
- 刺激の少ない冷たい食べ物を試す(例:冷やしうどん、果物)
- 台所の匂いなど、吐き気を誘うものはできるだけ避ける
- 夫や家族に家事を手伝ってもらい、十分に休む
- レモンやミントの香りを嗅ぐ(個人差があります)
医療治療
医師は、妊娠中にも使える安全な吐き気止めの薬を処方したり、必要に応じてビタミンやミネラルの補給を行うことがあります。薬は錠剤、坐薬(ざやく)、注射など、症状に合わせて選ばれます。点滴による水分補給や電解質補正も、脱水を防ぐために行われます。薬や治療法は必ず医師の指示に従ってください。
この病気と共に生きる
妊娠悪阻は病気であり、本人の努力で治るものではないことを理解することが大切です。具合が悪いときは無理をせず横になり、家族や周囲に助けを求めましょう。水分と塩分の補給を意識し、吐いた後は口をすすぐことで歯を守ることも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 毎日なるべく同じ時間に起床・就寝し、十分な睡眠をとる
- 吐き気が強いときは無理に動かず、安静にする
- 外出するときは吐き気のための袋や水分を携帯する
- ストレスをためず、好きな音楽や動画で気をそらす
食事と運動
食事は、脂肪分や香辛料の強いものは避け、味の薄いものを選びましょう。おかゆ、食パン、うどん、バナナなどが、多くの人に合いやすいです。水分は、冷たい水や麦茶、スポーツドリンクを少しずつ飲むとよいでしょう。運動は、吐き気が落ち着いているときに軽い散歩をする程度にし、無理は禁物です。
精神的健康と心の健康
妊娠悪阻は精神的にもとてもつらい経験です。「自分が頑張れば治るのでは」と自分を責めないでください。長引くと、不安や落ち込みが強くなることがあります。つらさを一人で抱え込まず、産婦人科医や保健師、メンタルヘルスの専門家に相談してください。
予防
妊娠悪阻を完全に防ぐ方法はまだわかっていません。ただし、妊娠前から栄養状態を整え、妊婦健診を早めに受けることで、発症した場合でも早く対応できます。また、つわりの症状が強くなったら、早めに医師に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 脱水や電解質異常(からだの塩分バランスが崩れる)
- 重度の栄養不足(ビタミン不足による意識障害など)
- 肝臓や腎臓の機能低下
- 激しい嘔吐による食道の裂傷や出血
- うつ病などメンタルヘルスの問題
長期的な見通し
多くの場合、妊娠16週から20週頃には症状がおさまります。治療を受けることで、母体の回復と赤ちゃんの健やかな発育が期待できます。辛い期間は限られています。周囲のサポートと医療の助けを借りながら、一歩ずつ前に進んでください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。