臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
臍帯脱出とは、おなかの中の赤ちゃんにつながるへその緒(臍帯)が、赤ちゃんより先に子宮の出口から腟(ちつ)の中や外へ落ちてきてしまうことです。へその緒は赤ちゃんに酸素と栄養を送る大切な命綱なので、この状態が続くと赤ちゃんが危険になることがあります。まれな状態ですが、すぐに適切な対応を行えば、多くの赤ちゃんは健康に生まれます。
重要な事実
- お産の進行中や破水した直後に起こることが多い
- 赤ちゃんの心拍が急に遅くなるのが特徴的なサイン
- 多くの場合、緊急帝王切開で赤ちゃんを出産します
- 入院中に起これば、医療者がすぐに気づいて対応します
これはまれな状態です。全お産の0.1〜0.6%ほど、つまり1000件に1〜6件の割合で起こります。
逆子(骨盤位)の場合、羊水が多すぎる場合、破水が早く起こった場合、双子などの多胎妊娠、経産婦(以前に出産したことがある方)にややリスクが高くなります。
症状
- 破水した後、腟からへその緒が出てきた(見えた)場合は、すぐに119番に電話してください
- 破水した後、腟の中に紐のようなものを感じた場合も、すぐに119番に電話してください
- 赤ちゃんの心拍が遅くなった、または胎動が急に減ったと感じたら、すぐに救急に連絡してください(入院中の場合は呼びボタンを押してください)
- ⚠破水したのに陣痛が来ない場合は、すぐに産院へ連絡して指示を受けてください
- ⚠破水後、おりものに血が混じるなどの異常がある場合も、産院へ連絡してください
一般的な症状
- 腟からへその緒(臍帯)が見えたり、触れたりする
- 破水した直後に、腟の中でヌルヌルした紐のようなものを感じる
子供の症状
- この状態は、お産のときの赤ちゃんとお母さんに関するもので、小さなお子さんには当てはまりません。
高齢者の症状
- この状態は、お産のときのお母さんと赤ちゃんに関するもので、高齢者には当てはまりません。
原因
主な原因
- 前期破水:陣痛が始まる前に卵膜が破れて、羊水が出てしまうこと
- 赤ちゃんが逆子(骨盤位)である
- 羊水の量が多すぎる(羊水過多)
- 双子などの多胎妊娠
リスク要因
- 経産婦(以前にお産を経験されている方)
- 赤ちゃんが未熟児や低出生体重児である
- 医師が人工的に羊膜を破る(人工破膜)場合
- 赤ちゃんの頭がまだ骨盤の中に入っていない時期に破水した場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 破水した後、腟からへその緒や紐のようなものが見えたり触れたりしたら、すぐに産科を受診するか、119番を呼んでください
- 破水後、胎動がいつもより少ない、または感じられないとき
- 破水後、赤ちゃんの心拍が遅くなったと感じる(お産中)
定期受診を予約すべき場合:
- 破水した場合は陣痛がなくても、すぐに産院へ連絡してください
- 妊婦健診で逆子や羊水過多を指摘されたら、お産の進め方について担当医としっかり話し合ってください
診断
医師が内診(腟に指を入れて調べること)や腟鏡(器具)を使って、へその緒が腟の中に落ちていないか確認します。同時に、胎児心拍モニターで赤ちゃんの心拍数をチェックします。
行われる可能性のある検査
- 内診:腟の中を直接さわってへその緒を確認します
- 胎児心拍モニタリング:赤ちゃんの心拍の変化を確認します
- 超音波検査:へその緒の位置や赤ちゃんの状態、羊水の量を確認します
診察で予想されること
臍帯脱出が疑われた場合、緊急対応が最優先になります。検査や処置は、お母さんの了承を得ながら、できるだけ同時にテキパキと進みます。不安かもしれませんが、医療チームはお母さんと赤ちゃんの安全を最優先に行動します。
治療
臍帯脱出の治療の目標は、へその緒が圧迫されて赤ちゃんに酸素が届かなくなるのを防ぎ、安全にお産を終えることです。多くの場合、緊急帝王切開で赤ちゃんを出産します。
自宅でのセルフケア
- 破水したら、すぐに横になり、足を高くあげた姿勢(腰を高くする姿勢)をとりましょう
- 腟からの違和感や出血があったら、隠さずに医療者へ伝えましょう
- 自宅で破水した場合、産院からの指示があるまでは絶対に立ち歩かないでください
医療治療
医師はへその緒を圧迫しないように、膀胱に細い管(カテーテル)を入れて尿をためて子宮を押し上げたり、へその緒を腟の中に戻したりするなどの処置を行います。赤ちゃんの心拍が安定しない場合は、すみやかに帝王切開を行います。お産を早める点滴などの薬が必要になることもありますが、医師がその時々の状況で適切に判断します。
手術が検討される場合
赤ちゃんの心拍に危険なサインが見られる場合は、緊急帝王切開を行います。これはお母さんの状態にもよりますが、多くの場合、赤ちゃんを安全に助けるための最も確実な方法です。
この病気と共に生きる
臍帯脱出は、お産の瞬間に起こる出来事です。お産が終われば、多くのお母さんは通常の産後の経過をたどります。赤ちゃんの状態が良ければ、そのまま一緒に過ごせます。一時的に赤ちゃんが新生児室で様子を見ることもありますが、医療者が丁寧にケアします。
生活習慣のアドバイス
- 妊娠中から、破水したらどうするかを家族と話し合っておきましょう
- お産の予定日が近づいたら、入院バッグを準備し、産院までの連絡方法を確認しておきましょう
- 逆子や羊水過多など、リスクがある場合は、医師の指示に従って安静度を保ちましょう
食事と運動
妊娠中は、医師に止められていない限り、バランスのよい食事と軽い運動を続けましょう。ただし、破水後は運動は絶対に行わず、横になって待ってください。
精神的健康と心の健康
緊急帝王切開や赤ちゃんの状態に関わる出来事は、お母さんに大きな不安やショックを残すことがあります。「自分を責めてしまう」「とても怖かった」という気持ちになるのは自然なことです。そんなときは、助産師や医師、家族に気持ちを話しましょう。
予防
臍帯脱出を完全に予防する方法はありません。しかし、破水したときに正しい行動(横になること)や、リスクがある場合に入院での管理や計画的なお産を行うことで、重症化を防ぐことができます。
検診プログラム
妊娠中の超音波健診で、赤ちゃんの位置(逆子など)や羊水の量を確認します。これにより、リスクの高いお産を事前に見つけて、より安全な場所でお産をする計画を立てられます。
合併症
治療しない場合
- へその緒が圧迫され、赤ちゃんに届く酸素が少なくなる(胎児低酸素症)
- 重症の場合は、赤ちゃんに脳障害などの後遺症が残る可能性がある
- 最悪の場合、赤ちゃんの生命が危険にさらされる可能性がある
長期的な見通し
臍帯脱出は非常に緊急な状態ですが、医療者がすぐに適切な処置を行えば、多くの赤ちゃんは健康に育ちます。お産の現場は、こうした緊急事態に備えて訓練されています。どうか希望を持って、医療者と一緒に赤ちゃんを迎える気持ちでいてください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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