揺さぶられ症候群(乳幼児揺さぶられ症候群)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
揺さぶられ症候群は、赤ちゃんや小さい子どもを激しく揺さぶることで、脳や目に損傷が起こる状態です。赤ちゃんの首の力は弱く、頭の重さも大きいため、強い揺れによって脳が頭の骨の内側にぶつかり、出血やむくみを引き起こします。日本語では「乳幼児揺さぶられ症候群」とも呼ばれ、子どもへの虐待の一種として扱われます。
重要な事実
- 外見に傷がなくても、脳の中や目で深刻な出血が起こることがあります。
- 揺さぶりは遊びではなく、赤ちゃんを傷つける危険な行為です。
- 赤ちゃんが泣きやまないときの対処法を知り、自分の感情を落ち着けることで多くの例が防げます。
日本の正確な患者数はわかっていませんが、子どもの虐待による頭部外傷のひとつとして、毎年数十件から百件程度が報告されています。実際には見逃されている例もあると考えられています。
主に2歳未満の赤ちゃんに起こり、特に1か月から6か月の乳児に多いと言われています。養育者の性別を問わず起こり得ますが、報告では男性の養育者による例が比較的多いとされています。
症状
- 意識がない
- 呼吸が止まりそう、または止まっている
- けいれんが止まらない
- 吐き続けてぐったりしている
- 左右の目の大きさが違う、または片方の目が見えていないように見える
- ⚠泣きやまず、いつもと顔色や呼吸が明らかに違う
- ⚠何度も吐いてしまう
- ⚠普段と比べて、体の動きや反応が鈍い
- ⚠少しでも強い力で揺さぶられた可能性がある
一般的な症状
- 激しく泣き続けてぐずる
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- ミルクや母乳の飲みが悪くなる
- ぐったりして元気がない
- 呼吸が速い、浅い
- けいれんを起こす
子供の症状
- 視線が合わない、目がキョロキョロする
- 体が硬直する、またはぐにゃぐにゃする
- 頭囲が急に大きくなる
- 意識がもうろうとする
- まぶたが重く落ちる
原因
主な原因
- 赤ちゃんの体を強くつかんで、前後に激しく揺さぶる行為
- 高く投げ上げたり、激しく揺らしたりする「遊び」
- 座いすやベビーシーソーなどで頭に強い揺れが繰り返し伝わること
リスク要因
- 赤ちゃんが泣き続けてなかなか泣きやまない
- 養育者の睡眠不足、疲労、育児ストレス
- 周りに育児を手伝う人がおらず、ひとりで抱え込んでしまう
- 養育者自身が子ども時代に暴力や虐待を経験している
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い力で揺さぶられる、頭をぶつけるなど明らかな出来事があった場合
- 意識がもうろうとしたり、嘔吐を繰り返したりする場合
- けいれんや目の異常がある場合
定期受診を予約すべき場合:
- いつもよりぐったりしている、ミルクの飲みが悪いなど、気になる状態が続く場合
- イライラして赤ちゃんを強く揺さぶりそうになった場合(揺さぶってしまった場合はすぐに助けを求めてください)
診断
医師が落ち着いた環境で問診と身体診察を行い、目の状態や体の傷、神経の様子を確認します。赤ちゃんは自分で症状をうまく伝えられないため、家族や周囲の人の話が診断の決め手になります。
行われる可能性のある検査
- 頭部CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)で脳の出血やむくみを調べる
- 眼科医による眼底検査で網膜出血(網膜の血管が破れること)がないか確認する
- 全身の骨のX線写真で、過去に起こった骨折(り骨や四肢など)がないか調べる
- 血液検査で出血しやすくなる病気や感染症の可能性を除外する
診察で予想されること
診断がつくと、小児科医や脳神経外科医、眼科医などが連携して治療方針を決めます。状況によっては児童相談所や警察に連絡されますが、これは赤ちゃんを危険から守り、家庭を支援するための大切な手続きです。決してあなたを責めるためのものではありません。
治療
揺さぶられ症候群の治療は、脳で起きている出血やむくみを抑え、けいれんや呼吸の状態を安定させることが中心です。赤ちゃんは通常、小児科や新生児科のある病院に入院し、集中治療を受けることがあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従い、赤ちゃんを静かで薄暗い部屋で休ませる
- 嘔吐の際に窒息(ちっそく)しないよう、顔を横に向けて吐物を取り除く
- 養育者自身も一人で抱え込まず、医療者や相談機関に助けを求める
医療治療
脳のむくみや出血に対しては、点滴、酸素投与、血圧の管理などが行われます。症状に応じて、けいれんを抑える薬や頭の中の圧力を下げる薬が使われることもありますが、具体的な薬の種類や量は医師が赤ちゃんの状態に合わせて決定します。
手術が検討される場合
脳を包む膜と脳の間に大量の血の塊がたまり、脳を強く圧迫している場合には、緊急手術で血の塊を取り除き、頭の中の圧力を下げる手術が行われることがあります。
この病気と共に生きる
退院後は、脳や目の状態、運動や言葉の発達の様子を定期的に確認していきます。赤ちゃんが少しずつできることを増やしていけるよう、専門家と一緒に安心できるペースで生活しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 発達の様子を日記や写真に残して、診察のときに医師や療法士に伝える
- 飲み込みの力が弱っている場合には、医師や栄養士の指示に従い、形態(ペースト状など)を工夫する
- 自宅では転落やぶつけ頭などの事故にも注意し、安全な環境を整える
食事と運動
原則として特別な食事制限はありませんが、脳の損傷による飲み込みの問題がある場合には、医師や管理栄養士が安全な食べ方を提案します。運動や遊びは、理学療法士や作業療法士のアドバイスに沿って、ゆっくりと発達に合わせて行います。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんも家族も、大きな後悔や悲しみ、不安や怒りを抱えるかもしれません。これらの感情は自然なものです。家族全体でケアしていくことが大切で、必要に応じて精神科医や臨床心理士、専門の相談機関のサポートを受けてください。
予防
揺さぶられ症候群は、知識と行動で予防できる病気です。赤ちゃんが泣きやまないときは、決して揺さぶらず、以下の方法を試してみてください。まず赤ちゃんを安全な場所(ベッドなど)に置き、その場を離れて深呼吸する。数分間自分を落ち着かせてから、もう一度あやし直す。それでも泣きやまないときは、家族や地域の相談機関に電話で助けを求めましょう。
ワクチン
この病気を予防するための予防接種はありません。日常の行動で揺さぶらない、ということが最も大切な予防方法です。
検診プログラム
特別なスクリーニング検査はありません。病院の健診や保健師の訪問のときに、育児のストレスについて話すことで、早期の支援につなげることができます。
合併症
治療しない場合
- 脳の出血が続いて頭の中の圧力が上がり、命にかかわることがある
- 目の網膜出血が視力に影響を残すことがある
- 脳の損傷により運動機能や言葉の発達などに長期的な影響が出ることがある
- てんかん(繰り返すけいれん)や学習障害、行動面の問題が現れることがある
長期的な見通し
揺さぶられ症候群の経過は、損傷の程度や発見・治療の早さによって大きく異なります。多くの子どもは適切な治療とリハビリテーション、家庭での愛情ある支援によって改善が期待できます。たとえ後遺症が残っても、早期からの療育(発達に合わせた支援)や家族の支えで、できることは確実に増えていきます。希望を持って医療チームと一緒に進んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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