甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
甲状腺(のどぼとけの下にある臓器)から出るホルモンが過剰に分泌される病気です。このホルモンは体の新陳代謝を調整する働きがあるため、過剰になると体の働きが全体的に速くなりすぎます。
重要な事実
- 甲状腺ホルモンが多すぎると、心臓がドキドキしたり、汗をかいたり、体重が減ったりします。
- 放置すると、心臓や骨などに影響を及ぼすことがありますが、きちんと治療すれば多くの方はよくなります。
- 治療は長く続くことがありますが、薬や手術などいくつかの選択肢があります。
甲状腺機能亢進症は、それほど珍しい病気ではありません。日本では約1000人に数人がかかるとされています。
どの年代でも起こりますが、特に20代から40代の女性に多い病気です。男性より女性のほうが約4~5倍多いといわれています。
症状
- 激しい胸痛や息苦しさ
- 意識がもうろうとする
- 高熱(38度以上)
- 激しい動悸で立っていられない
- 何も食べられない・飲めないほどの吐き気や嘔吐
- ⚠普段よりずっと強い動悸を感じる
- ⚠39度近い熱があるのに汗を大量にかく
- ⚠嘔吐や下痢がひどく水分がとれない
- ⚠目の痛みや視力の低下を感じる
一般的な症状
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 手のふるえ
- 汗をかきやすい・暑がりになる
- 体重が減るのに食欲はある
- 疲れやすいのに眠れない
- イライラする・気持ちが落ち着かない
子供の症状
- 反抗的になったり落ち着きがなくなったりする
- 成績が下がったり集中力が続かない
- 背が伸びるスピードが急に変わることがある
高齢者の症状
- 元気がなくなり動作がゆっくりになる
- 体重が減る、食欲がない
- 脈が速くなったり不規則になったりする(心房細動)
- 典型的な症状が少なく、見逃されやすい
原因
主な原因
- バセドウ病(甲状腺を刺激する物質が自分の中で作られてしまう病気)が最も多い原因です。
- 甲状腺にしこり(結節)があって、そこからホルモンが過剰に作られることがあります。
- 甲状腺に炎症が起こり、中に溜まっていたホルモンが一時的に血液中にあふれ出ることがあります。
- まれに、妊娠や出産をきっかけに起こることもあります。
リスク要因
- 女性であること
- 家族に甲状腺の病気の人がいること
- 喫煙(特にバセドウ病のリスクを上げます)
- ストレスや過労
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 動悸や息切れが強くて日常生活に支障が出ている
- 急に体重が減ってきた(2~3か月で数キロ以上)
- 高熱や強い嘔吐、意識がおかしい状態が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 手のふるえや発汗、イライラなど、気になる症状が数週間以上続く
- 首の前が腫れているように感じる
- 健康診断で甲状腺の数値に異常を指摘された
診断
問診で症状や体の状態を確認し、血液検査を行って甲状腺ホルモンの量を調べます。必要に応じて、甲状腺の超音波(エコー)検査なども行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:TSH、FT3、FT4という甲状腺関連ホルモンを測定します。
- 甲状腺エコー(超音波)検査:甲状腺の大きさやしこりの有無を確認します。
- 放射性ヨウ素摂取率テスト:甲状腺がどれだけヨウ素を取り込むかを調べる検査です(施設によっては行わないこともあります)。
診察で予想されること
まずは内科や内分泌代謝科を受診します。血液検査の結果が出るまでに数日かかることが多いです。診断がついたら、治療法について医師から丁寧に説明があるでしょう。
治療
治療の目的は、甲状腺ホルモンの量を正常に戻し、症状を和らげることです。主な治療法には、薬物療法、放射性ヨウ素療法、手術の3つがあります。それぞれのメリットとデメリットを医師と相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示どおりに通院・服薬を続ける
- 十分な休息と睡眠をとる
- カフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンク)を控えめにする
- ストレスをためない工夫をする
- 禁煙する(特にバセドウ病の場合、喫煙は治療経過に悪影響を与えます)
医療治療
まず多くの場合、抗甲状腺薬という薬を使ってホルモンの分泌をおさえます。症状が強いときは、一時的に心拍数を調整する薬が使われることもあります。効果がない場合や再発する場合は、放射性ヨウ素療法(のどからカプセルを飲んで、のどぼとけの下に集まった組織を弱らせる治療)や、甲状腺を手術で切り取る治療が検討されます。
手術が検討される場合
薬が効きにくい、甲状腺が非常に大きくて圧迫感がある、また悪性(がん)が疑われる場合には手術が選択されることがあります。
この病気と共に生きる
治療を続けながら、定期的に血液検査を受けて経過を見ます。薬を飲み忘れないことと、体調の変化をこまめに医師に伝えることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠時間を十分にとる
- 規則正しい生活を心がける
- 仕事や家事の量を調整し、無理をしすぎない
- 喫煙や過度の飲酒は控える
- 熱中症になりやすいので、暑い場所では水分補給をしっかりする
食事と運動
バランスのよい食事をとりましょう。特に制限はいりませんが、ヨウ素を多く含む食品(昆布、わかめなど)を過剰にとりすぎないように心がけるとよいです。運動は、動悸や疲れがあるうちは激しい運動を避け、軽い散歩などから始めます。よくなったら医師と相談しながら徐々に量を増やしていきましょう。
精神的健康と心の健康
甲状腺ホルモンが多すぎると、不安やイライラ、気分の落ち込みといった精神的な症状が出ることがあります。「これは自分の性格の問題だ」と責めず、治療で数値が落ち着けば症状もよくなることがほとんどです。
予防
甲状腺機能亢進症を完全に予防する方法はまだわかっていません。ただし、禁煙やストレスをためない生活、定期的な健康診断を受けることで、発症や悪化を防ぐ手助けになります。
合併症
治療しない場合
- 心房細動という不整脈を起こし、心不全や脳梗塞のリスクが高まることがあります。
- 骨密度が下がり、骨粗鬆症や骨折を起こしやすくなります。
- 妊娠中に統制が悪いと、流産や早産のリスクが高くなります。
- まれに「甲状腺クリーゼ」という急激に症状が悪化する重い状態になることがあり、命に関わります。
長期的な見通し
適切な治療を受ければ、多くの方は甲状腺の働きを正常に戻し、普段どおりの生活を送ることができます。治療には数か月から数年かかることがありますが、あきらめずに続けることが大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。