お子さんの閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)— 知っておきたい基礎知識
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)とは、眠っている間にのどの空気の通り道がふさがって、呼吸が一時的に止まってしまう病気です。呼吸が10秒以上止まることを「無呼吸」といい、その後「ハッ」というあえぎとともに呼吸が再開します。お子さんの場合、のどちんこの近くにあるアデノイドや扁桃(へんとう)が大きいことが主な原因になります。眠りの質が下がるため、日中の集中力や行動にも影響が出ることがあります。
重要な事実
- 小児では100人に1〜5人ほどの割合でみられます
- 大きな原因は扁桃やアデノイドの肥大、肥満、アレルギー性鼻炎などです
- 大きないびきやおねしょの続き、日中のぼんやりは代表的なサインです
- 原因がわかれば、多くのお子さんで治療により改善が期待できます
小児の約1〜5%にみられるといわれています。いびきをかくお子さんは10%ほどいて、その一部が閉塞性睡眠時無呼吸症と診断されます。
特に3〜8歳の子どもに多くみられます。この時期はアデノイドや扁桃が大きくなりやすいためです。思春期には、体重増加(肥満)がきっかけとなることもあります。
症状
- 睡眠中に呼吸が止まったまま、なかなか始まらない場合は、すぐに119番に電話してください
- 顔色や唇が青紫色(チアノーゼ)になっている
- 呼びかけても反応がなく、意識がない
- ⚠睡眠中に呼吸が止まる場面を家族が何度も確認している
- ⚠激しいあえぎやうめきがあり、顔色が悪くなる
- ⚠日中に急に眠ってしまう、ぼんやりすることが増えた
一般的な症状
- 毎晩続く大きないびき
- 睡眠中に呼吸が止まる時間がある
- 「プハッ」と息を吹き返すようなあえぎ
- 寝返りが多く、落ち着かない睡眠
- 寝ているときに口呼吸になっている
子供の症状
- おねしょ(夜尿症)がなかなか治らない
- 日中ボーッとする、集中力が続かない
- じっとしていられず、落ち着きがないように見える
- 朝起きるのがつらく、機嫌が悪い
- 成長や発達がゆっくりに感じる
原因
主な原因
- アデノイド肥大(のどの奥のリンパ組織が大きくなる)
- 扁桃肥大(口蓋扁桃が大きくなる)
- 肥満(脂肪が気道に負担をかける)
- 顔やあごの骨格の特徴(小さなあごなど)
- 神経や筋肉の病気によるのどの筋緊張の低下
リスク要因
- 肥満がある
- アレルギー性鼻炎や鼻づまりが続いている
- 家族に閉塞性睡眠時無呼吸症の人がいる
- 受動喫煙(家族のタバコの煙を吸う環境がある)
- ダウン症などの染色体疾患や神経筋疾患がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 睡眠中に呼吸が長時間止まる場面がある
- 顔色が悪い、唇が青い様子がみられる
- 翌朝までぼんやりして意識の回復が悪い
定期受診を予約すべき場合:
- 大きないびきが毎晩、または週に数回以上続く
- おねしょが増えた、日中の眠気や集中力低下が気になる
- いびきに加えて、落ち着きがない、成績が下がった、成長が気になる
診断
問診(おうちでの様子を聞き取り)や、のど・鼻の診察、必要に応じて睡眠検査を行います。お子さんが眠っている様子を動画で撮影して医師に見せることは、診断の役に立ちます。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察(扁桃の大きさ、鼻づまりの有無を確認)
- 夜間の睡眠の様子を記録する自宅でできる簡易検査
- パルスオキシメーター(指先で血液の酸素濃度を測る)を使った検査
- 終夜睡眠ポリソムノグラフィー(病院で1泊し、複数の項目を夜通し記録する検査)
診察で予想されること
睡眠ポリソムノグラフィーでは、脳波、眼球運動、心拍、呼吸、酸素濃度、いびきなどを夜通し同時に記録します。小児用の設備がある病院で行われ、検査後は数週間以内に結果の説明があります。お子さんの状態によっては、自宅の簡易検査や昼間の眠気の評価を組み合わせて進めることもあります。
治療
治療は、原因や重症度によって決まります。軽度の場合は、生活習慣の改善と経過観察から始めることが多いです。中等度以上の場合は、CPAP(呼吸補助装置)や手術などの専門的な治療が検討されます。お子さんの年齢や成長に合った方法を、医師と家族で話し合って決めていきましょう。
自宅でのセルフケア
- 横向きで眠る(仰向けよりも気道がふさがりにくい)
- 体重が増えすぎないように、食事と運動のバランスを整える
- 家庭内での禁煙・分煙で受動喫煙をなくす
- 就寝前に食事や甘い飲み物をとりすぎない
- 寝室の空気を清潔に保ち、鼻づまりをやわらげる
医療治療
中等度以上の場合は、CPAP(シーパップ)と呼ばれる、睡眠中に鼻マスクから空気圧を送って気道を支える呼吸補助装置を使った治療があります。小児でも安全に用いられる治療法です。歯科で作成するマウスピース(口腔内装置)が検討されることもあります。鼻づまりのケアも、医師の指導のもとで行います。どの治療を選ぶかは、検査結果をもとに医師がわかりやすく説明します。
手術が検討される場合
扁桃やアデノイドがとても大きく、それが原因の場合は、扁桃摘出術(アデノイド切除術)という手術が検討されます。小児では、この手術によって症状が大きく改善することが多いです。手術の適応は、検査結果・年齢・全身の状態をふまえて耳鼻咽喉科の専門医が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
治療中も、毎日の睡眠リズムを整え、夜ぐっすり眠れる環境をつくることが大切です。お子さんには「眠ることを怖がらなくていいよ」と伝え、検査や治療について、年齢に合わせてやさしく説明しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に布団に入り、同じ時間に起こす
- 寝る前の1時間はスマホやゲーム、テレビを控える
- 昼間は外で体を動かす機会をつくる
- 寝室は暗く静かにし、温度と湿度を快適に保つ
食事と運動
野菜や果物、乳製品、たんぱく質をバランスよく食べ、糖分や脂質のとりすぎに注意します。毎日30分程度、遊びながら楽しめる運動を取り入れましょう。適正体重になることで、いびきや呼吸停止が改善することがあります。
精神的健康と心の健康
眠れていないお子さんは、イライラしたり、朝機嫌が悪かったり、授業中ぼんやりしたりすることがあります。これは「努力が足りない」のではなく、睡眠の質が影響しています。お子さんの心のサインに気づいたら、まずは睡眠を整えることを優先し、医師や学校の養護教諭に相談しましょう。
予防
すべてのお子さんで完全に予防することはできませんが、適正体重を保つこと、受動喫煙を避けること、アレルギー性鼻炎を適切にケアすることで、リスクを減らす手助けになります。
検診プログラム
日本では、学校健診で睡眠時無呼吸症のスクリーニングはまだ一般的ではありません。いびきや日中の眠気など気になることがあれば、早めに医療機関で相談し、必要に応じて専門的な睡眠検査を受けることがおすすめです。
合併症
治療しない場合
- 睡眠不足による日中の集中力・記憶力の低下
- 成長ホルモンの分泌リズムの乱れによる、身長の伸びなど発達への影響
- おねしょ、朝の頭痛、朝起き不良などの症状の悪化
- 重症の場合、心臓や肺に負担がかかることがある(まれですが、放置するとリスクがあります)
長期的な見通し
適切な診断と治療を受ければ、多くのお子さんで睡眠の質は大きく改善します。原因が扁桃やアデノイドの大きさであれば、手術で治ることも多く、CPAPや生活習慣の改善でうまくコントロールできるお子さんもたくさんいます。お子さんの成長に合わせて、医師と一緒に無理なく続けられる治療を選びましょう。希望をもって向き合っていくことができる病気です。
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最終更新: 2026年7月31日
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