テイ・サックス病について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
テイ・サックス病は、神経細胞に脂質(脂肪)がたまり、脳や神経の働きが少しずつ失われていく進行性の遺伝性の病気です。生まれつき特定の酵素が不足しているために起こります。
重要な事実
- 両親から受け継いだ遺伝子の変異によって起こる病気です
- 神経の働きが進行性に失われ、運動や視力、精神機能に影響が出ます
- 現在のところ根治する治療法はありませんが、症状をやわらげるためのケアが主な治療になります
非常にまれな病気です。日本ではほとんど見られないほど頻度が低いですが、特定の民族集団(アシュケナージ系ユダヤ人など)では少し多く見られます。
主に乳幼児期に発症する「乳児型」が最も多いとされます。そのほか幼児型や成人型もあり、発症する年齢によって症状や進行の速さが異なります。
症状
- 意識がなくなる、呼びかけに反応しない
- けいれんが止まらない(5分以上続く、または続けて起こる)
- 突然、息苦しそうになり呼吸が止まりそうなとき
- のどに食べ物や分泌物が詰まり、窒息しそうなとき
- ⚠けいれん発作が初めて起きた、または数値が増えている
- ⚠発熱や下痢などで水分が十分とれない
- ⚠むせがひどくなり、食べられない・飲み込めない
- ⚠せき、たん、呼吸の音がおかしいなど、肺炎を疑う症状がある
一般的な症状
- 発育の遅れや、それまでできていた運動の後戻り
- 手足の力が入りにくくなる
- 視力が落ちて、目で物を追わなくなる
- 突然の大きな音に過敏に反応する
- けいれん発作が現れることがある
子供の症状
- 生後6か月くらいまでは一見正常に見えるが、その後運動発達が止まる、または後戻りする
- 頭を支える、寝返りをする、座るといった能力が失われていく
- 目が見えなくなり、反応が薄くなる
- 飲み込みにくくなり、よだれやむせが増える
- けいれんや、体が弓なりに反るような発作が現れる
- 目の網膜に「チェリー・レッド・スポット」という特有のサインが出ることがある(医師の診察で見つかります)
高齢者の症状
- 言葉がうまく話せない(ろれつが回らない)
- 手足がふるえる、バランスをとりにくい(運動失調)
- 筋力が低下し、歩行や手の細かい動作が難しくなる
- 気分の落ち込みや性格の変化、幻覚などの精神症状が現れることがある
- 物忘れや判断力の低下など、認知症に似た症状が出ることがある
原因
主な原因
- HEXA遺伝子の変異が原因です
- この遺伝子変異によって、ヘキソサミニダーゼAという酵素が十分に作られず、神経細胞に脂質が蓄積します
- この病気は常染色体潜性遺伝という形式で受け継がれます。つまり、両親がそれぞれ変異遺伝子をひとつずつ持ち、子どもが両方を受け継いだときに発症します
リスク要因
- 家族にテイ・サックス病の患者や保因者がいる
- 両親が血縁関係にある(近親婚)
- アシュケナージ系ユダヤ人など、特定の民族集団で遺伝子変異が多い地域にルーツがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれんが止まらない、または繰り返す
- 意識がもうろうとしている
- 呼吸が苦しそう、または顔色が悪い
- 食物をのどにつまらせて窒息しそうなとき
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもの運動発達が後戻りしたり、視力や聴力に異常を感じたりした場合
- 成人で、原因不明の筋力低下、よろつき、話しにくさ、感情や行動の変化が続く場合
- 家族にテイ・サックス病の患者がいる場合に、遺伝について相談したいとき
診断
医師はまず詳しい話を聞き、神経の状態を診察します。その上で、血液を使って酵素の働きを調べる検査や遺伝子検査を行います。必要に応じて、目の検査や脳の画像検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液中のヘキソサミニダーゼAの活性を調べる検査
- HEXA遺伝子の変異を調べる遺伝子検査
- 脳のMRIなどの画像検査
- 眼底検査(網膜のチェリー・レッド・スポットを確認)
診察で予想されること
診断にはやや時間がかかります。一般の診療所から、大学病院や専門の医療機関を紹介されることがあります。検査や説明は、医師や遺伝カウンセラーが丁寧に行いますので、一人で抱え込まずに相談しましょう。
治療
現時点では、この病気を根本から治す治療法はまだありません。現在の治療の目標は、症状をやわらげ、患者さんと家族の生活の質をできるだけ保つことです。医療チームが連携して、その人に合わせたケアをすすめます。
自宅でのセルフケア
- 理学療法を継続し、関節の動きや筋力を維持する
- 飲み込みの状態に合わせて食事の形態や介助方法を工夫する
- けいれんによる転倒や事故を防ぐために生活環境を整える
- 感染症を予防するため、手洗いやワクチン接種(主治医と相談)を行う
医療治療
けいれんを抑える薬や、筋肉の緊張を和らげる薬などが症状に応じて処方されることがあります。また、栄養を保つための胃ろう(胃瘻)や、呼吸を助ける処置が検討されることもあります。用いる薬や手技は、必ず医師の指示のもとで行われます。
手術が検討される場合
飲み込みが難しくなり、口から十分な栄養をとれない場合に、胃ろう(胃瘻)を作る手術が行われることがあります。手術が必要かどうかは、患者さんの状態やご家族の希望などをふまえて、専門医と十分に話し合って決めます。
この病気と共に生きる
日常生活では、医師・看護師・理学療法士・栄養士・ソーシャルワーカーなど多職種が連携して支援します。家庭では、無理をしすぎず、使える介護サービスや相談窓口を上手に活用することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 定期的に医療機関を受診し、症状の変化を伝える
- 無理のない範囲で身体を動かし、関節のこわばりを防ぐ
- 十分な睡眠と休息をとる
- 患者会や家族会などで情報交換する
- 困ったときは、ひとりで抱え込わずに医療チームや相談窓口に助けを求める
食事と運動
食事は、栄養バランスを考えつつ、飲み込みやすさに合わせて細かくする、とろみをつけるなどの工夫をします。運動は、理学療法士の指導のもとで、安全な範囲で行うとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
この病気は本人だけでなく、家族にも大きな心の負担がかかります。悲しみや不安を感じるのは自然なことです。ため込まず、カウンセラーや精神科医などの専門家に相談したり、同じ体験を持つ人たちと話したりすることで心の支えとなります。
予防
遺伝性の病気ですので、発症そのものを予防することはできません。しかし、妊娠前に遺伝子検査や遺伝カウンセリングを受けることで、子どもに遺伝するリスクを知ることができます。妊娠中の検査もありますが、どの検査を受けるかは自分の意思で決められます。
ワクチン
テイ・サックス病を予防するワクチンはありません。感染症を防ぐことで症状の悪化を避けるため、一般的なワクチン接種については主治医と相談してください。
検診プログラム
保因者検査(両親が変異遺伝子を持つかどうか)や出生前検査(羊水検査など)があります。家族歴がある場合や、妊娠を考えている場合に、専門医への相談が有用です。
合併症
治療しない場合
- 進行性の神経障害により、運動機能や認知機能が大きく低下する
- 嚥下困難による誤嚥性肺炎のリスクが高まる
- けいれん発作がコントロールしづらくなる
- 視力・聴力の喪失
- 呼吸筋の障害による呼吸不全
長期的な見通し
病気の進行に合わせた適切な医療とケアによって、痛みを和らげ、快適な生活を送ることは可能です。治す治療法はまだありませんが、研究は進んでおり、将来の治療法開発に希望が持てます。患者さんとご家族が、専門医や支援者とともに、その人らしい時間を過ごせるよう応援する医療体制が整っています。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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