脊髄性筋萎縮症(SMA)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、体を動かすための指令を伝える神経細胞(運動ニューロン)が減っていく遺伝性の病気です。その結果、筋肉がやせて力が入らなくなり、体を動かすことが難しくなります。生まれつきもっている遺伝子に変化があることが原因です。
重要な事実
- 筋肉の命令をつかさどる神経が減ることで、全身の筋肉が弱っていく病気です。
- 遺伝子の変化が原因で、多くは両親からそれぞれ異常を受け継ぐことで発症します。
- 早期に診断し、適切な治療やリハビリを行うことで、症状の進行を遅らせたり改善できる可能性があります。
非常にまれな病気で、日本では生まれてくる赤ちゃんのおよそ1万人に1人程度と考えられています。正確な患者数ははっきりしていません。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、赤ちゃんのころから症状が出るタイプが最も多いです。症状の始まる時期や重さによって、大きく4つのタイプに分けられます。
症状
- 呼吸が止まりそうな状態、息をしていない
- 顔色が青白く、唇や爪の色が悪い
- 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない
- 苦しそうに呼吸をしていて、胸や鎖骨の上が深くへこむ(陥没呼吸)
- ⚠咳をする力が弱く、たんが上がらない
- ⚠飲み込みが悪くなり、むせやすくなった
- ⚠発熱や咳・鼻水など呼吸器の感染症のサインがある
- ⚠全身の疲れや眠気が強い
一般的な症状
- 手足や体の筋肉の力が弱い
- 筋肉がやせる(筋肉が細くなる)
- 運動の発達の遅れ(首すわり・おすわり・歩くなど)
- えん下(飲み込み)や呼吸に力が入りにくい
- 疲れやすい
子供の症状
- 乳児期:体がぐにゃぐにゃする(筋緊張が低い)、首がすわらない、おすわりやつかまり立ちができない
- 幼児期:歩くのが遅れる、転びやすい、階段を上るのが難しい
- 小学生以降:手や足の力が弱い、細かい動きがしにくい
高齢者の症状
- 成人になってから始まるタイプでは、歩行しにくい、立ち上がりにくいなどの症状がゆっくりと進行します
- 手に力が入らない、ふるえ(振戦)や筋肉のピクピクした動きが見られることがあります
原因
主な原因
- SMN1遺伝子に変化があると、運動ニューロンを保つために必要なタンパク質(SMNタンパク質)が十分に作られず、神経細胞が減っていきます
- SMAは多くの場合、両親からそれぞれ変わった遺伝子を受け継ぐことで発症します(常染色体劣性遺伝)
- 両親は健康でも、保因者(かかりつけがなく、遺伝子の変化を黙って持つ人)であることがあります
リスク要因
- 家族にSMAの患者がいる場合
- 両親がともにSMAの保因者である場合(子どもに遺伝する可能性があります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 呼吸が苦しい、息がしにくい場合は、すぐに医療機関を受診してください。特に呼吸が止まりそうな場合や意識がない場合は、119番に電話してください。
- 飲み込みが難しくなり、食事や水分がとれていない場合は、当日中に受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 子どもがなかなか首をすわらない、おすわりができないなど、運動の発達に気になる点があるとき
- 大人で、普段より手足の力が弱くなった、歩きにくいと感じるとき
診断
症状やからだの診察に加えて、遺伝子検査が確定診断に使われます。必要に応じて神経の電気的検査(筋電図)や筋エコー、血液検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 遺伝子検査(血液などでSMN1遺伝子の異常を確認します)
- 筋電図(針電極で筋肉の反応を調べます)
- 血液検査(CK値など筋肉の異常を調べます)
- 新生児スクリーニングが導入されている地域では、症状が出る前に見つかることもあります
診察で予想されること
診断には小児神経科、神経内科、遺伝相談の専門家などがかかわります。結果が出るまでに数週間かかることがありますが、診断前でも呼吸や栄養の状態を評価しながら、一緒にケアの計画を立てていきます。
治療
SMAの治療は、症状の重さやタイプ、年齢によって異なります。現在、病気の進行を抑えるための新しい治療薬が登場しており、専門医が一人ひとりに合った治療を提案します。治療は、医師・薬剤師・理学療法士・栄養士など多職種が連携して行います。
自宅でのセルフケア
- 理学療法や作業療法など、体の状態に合わせた運動を行う
- 呼吸のリハビリテーションや、咳のサポートを行う
- 福祉用具や装具を活用して、日常生活での負担を減らす
- 栄養状態を保つために、食事の工夫や補助的な栄養を検討する
医療治療
遺伝子治療や、SMNタンパク質を作る量を増やす薬、神経を保護する薬など、治療の選択肢が広がっています。これらの治療はすべて処方薬として専門医の管理下で行われるため、必ず担当医の指示に従ってください。薬の名前や量は医師に確認しましょう。
手術が検討される場合
背骨のゆがみ(側弯症)や関節の変形が進んだ場合、呼吸や座る姿勢に影響する前に、整形外科での手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
筋力を維持するためのリハビリテーションを毎日続けることが大切です。疲れや呼吸の状態を見ながら、無理のない活動を心がけましょう。電動車いすや文字入力支援など、使える支援機器を生活に取り入れることで、活動の範囲が広がります。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠は十分にとる
- 体を温めて、感染症にかからないようにする
- 呼吸や姿勢の変化に注意し、体調の変化を見逃さない
- 家族や友人、専門家に助けを求める
食事と運動
食事は、飲み込みの状態に合わせて、柔らかく調理したり、とろみをつけたりするなど工夫します。運動は、理学療法士の指導のもとで、無理のない範囲で行うことが大切です。完全に動かさないと関節が固まりやすくなるため、ストレッチや体の位置を変えることも重要です。
精神的健康と心の健康
病気の診断やそれに伴う生活の変化は、つらい気持ちを引き起こすことがあります。不安や悲しみを一人で抱え込まず、家族や友人はもちろん、医師・心理士などにこまめに相談してください。心の健康も治療の一環です。
予防
SMAそのものを予防する方法はまだありません。ただし、妊娠前に遺伝カウンセリングを受けることで、病気が遺伝する可能性について知り、家族で話し合うことができます。
ワクチン
呼吸器の感染症を防ぐために、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種が勧められることがあります。接種のタイミングや費用は医師に相談してください。
検診プログラム
日本では、一部の地域で新生児を対象としたSMAのスクリーニング検査が研究・導入されています。これにより、症状が出る前に治療を始められる可能性があります。
合併症
治療しない場合
- 呼吸筋の弱まりによる呼吸不全
- 食べ物やだ液が気管に入る誤嚥(ごえん)による肺炎
- 側弯(背骨のゆがみ)や関節のこわばり
- 筋肉のやせと関節の変形の進行
長期的な見通し
SMAの治療はこの10年で大きく進歩し、早期に診断と治療を始めることができれば、運動機能の改善や長期の予後の改善が期待できるようになっています。たとえ限界があっても、医療と生活のサポートを組み合わせることで、その人らしい生活を長く続けることができます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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