便失禁(排便失禁)について知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
便失禁(排便失禁)とは、自分の意思とは関係なく、便やおならが漏れてしまう状態のことです。下痢のときに少し漏れる程度から、固い便が漏れる場合まで、その程度は人によって違います。恥ずかしさから誰にも相談できないこともありますが、多くの場合、原因を探り適切な対処をすることで症状は改善できます。
重要な事実
- 便失禁は決して珍しいものではありません。我慢や努力で治るものではなく、医療の助けが必要な症状です。
- 出産や加齢による筋肉のゆるみ、慢性的な下痢や便秘、神経の障害など、さまざまな原因があります。
- 治療の第一歩は、恥ずかしがらずに医療機関で相談することです。多くの人が改善を実感しています。
はい、まれなことではありません。報告されている件数は少ないですが、実際には多くの方が便失禁を経験しています。また、恥ずかしさから受診しない人が多いため、実数はさらに多いと考えられています。
高齢者に多い印象がありますが、出産後の女性や、腸の病気を持つ人、糖尿病や神経の病気がある人など、あらゆる年代の人に起こりえます。特に、骨盤底筋が弱くなっている人や、慢性的な便秘や下痢がある人はリスクが高くなります。
症状
- 突然の激しい腹痛を伴う便失禁
- 便に大量の鮮血が混じる
- 意識がもうろうとする、片方の手足が動かしにくいなど、脳卒中を思わせる症状を伴う
- ⚠便失禁とともに、発熱や下痢、嘔吐が続く
- ⚠数日間便が出ない後に、水のような便が漏れる(便秘のサイン)
- ⚠便失禁が突然始まった、または急に悪くなった
一般的な症状
- 便意を感じる前に便が漏れてしまう
- ガスや下痢のときに、便が少し漏れる
- トイレまで間に合わない
- 便が漏れていても気づかない
- 肛門の周りがかぶれたり、かゆくなったりする
原因
主な原因
- 出産による骨盤底筋や肛門の括約筋の損傷
- 加齢による筋肉の衰えや直腸の感覚の低下
- 慢性的な下痢や便秘(特に便秘による便もれ)
- 糖尿病や脊髄の病気などによる神経の障害
- 直腸の手術や放射線治療の影響
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便失禁に伴って、強い腹痛やしびれ、排尿の異常がある
- 突然、下半身の力が入らない、感覚がおかしい
- 大量の出血がある、または意識障害がある
定期受診を予約すべき場合:
- 便失禁が2週間以上続く、または繰り返す
- 日常生活や外出に支障をきたしている
- 便漏れを気にして人と会うのを避けている
- 出産後で気になる、便秘や下痢が続いている
診断
診断では、まずあなたの症状を詳しく伺います。いつから、どのようなときに漏れるのか、便の状態や出産・手術の経験、現在の薬、食事や水分の摂り方などについて質問されます。その後、腹部や肛門の診察を行い、直腸診(肛門から指を入れて筋肉の状態を調べる)を行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 肛門内圧検査:肛門を締めたときの力を測定する
- 直腸感覚検査:便が直腸に来たときの感覚を調べる
- 経直腸エコー:肛門周囲の筋肉に傷がないか画像で確認する
- 排便造影検査:排便時の直腸や骨盤の動きをエックス線で観察する
- 大腸内視鏡検査:大腸や直腸に病気がないか調べる
診察で予想されること
必要な検査は症状に応じて選ばれます。すべての人がすべての検査を行うわけではありません。検査の説明を聞き、不安なことは遠慮なく担当医に質問してください。診察や検査は、あなたの状態を正しく理解するために行われるものです。
治療
治療は、原因や症状の程度、生活への影響を考慮して計画します。まずは、生活習慣の改善やお尻の筋肉のトレーニング(骨盤底筋体操)などの保存的な方法から始めるのが一般的です。それでも改善が不十分な場合は、薬物療法やその他の専門的な治療を検討します。無理のない目標を立て、医師と一緒に進めていきましょう。
自宅でのセルフケア
- 排便日記をつけ、漏れやすい時間帯や状況を把握する
- 便を軟らかく保つために、水分をこまめに摂る
- 刺激物や脂肪分の多い食事を控え、バランスの良い食事を心がける
- 食後にトイレに行く時間を確保し、無理なく排便する
- 骨盤底筋体操を毎日続ける
- 漏れが心配なときは、吸収性パッドや着替えを用意して出かける
医療治療
薬物療法では、便の状態を整える薬や、腸の動きを調整する薬が使われることがあります。薬の種類や量は、あなたの症状や原因に合わせて医師が決定します。自己判断で市販薬に頼らず、必ず医師や薬剤師に相談してください。また、専門的な治療として、肛門の筋肉に電気刺激を与える方法や、コンピューター画面を見ながら肛門の筋肉のトレーニングを行うバイオフィードバック療法などがあります。
手術が検討される場合
保存的な治療や薬物療法で十分な効果が得られない場合、手術が選択肢となることがあります。手術には、肛門の筋肉を縫い縮める方法や、人工肛門(ストーマ)を造る方法などがあります。手術が適しているかどうかは、原因や全身の状態、生活スタイルなどを総合的に判断して決まります。専門の医師としっかり話し合い、メリットとデメリットを理解した上で決めることが大切です。
この病気と共に生きる
便失禁があっても、工夫次第で仕事や家事、外出などを続けることが可能です。例えば、外出先のトイレの場所を事前に確認しておく、予備の下着やパッドをバッグに入れておく、タイミングをみてトイレに行くなどの対策が役立ちます。また、便漏れがあっても自分を責めないことが大切です。症状はあなたの意思によるものではなく、医療的に対処できるものだという認識を持ちましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間に起きて、規則正しい生活を送る
- ストレスをため込まず、趣味やリラックス法を見つける
- 喫煙や過度な飲酒は控える
- 強い便意を我慢せず、トイレに行きたいときに行く
- 排便のときに強くいきみすぎない
- パッドや下着はこまめに交換し、清潔を保つ
食事と運動
食事は、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を心がけましょう。便通を整えるために食物繊維を適度に摂り、水分を十分に取ることが大切です。ただし、食物繊維を急に増やすとおならが増えたり、下痢になったりすることがありますので、少しずつ増やしてください。運動は、ウォーキングなどの有酸素運動と、骨盤底筋体操を組み合わせて行うと効果的です。無理のない範囲で継続することがポイントです。
精神的健康と心の健康
便失禁は、恥ずかしさや不安、孤独感を引き起こすことがあります。外出を避けたり、人との交流を絶ったりすると、抑うつ気分や社会的な孤立につながる可能性もあります。このような感情を持つことは不自然ではなく、あなたのせいではありません。つらい気持ちを一人で抱え込まず、医療者や信頼できる人に話してください。カウンセリングなどの心のケアも選択肢の一つです。
予防
すべての便失禁を予防することはできませんが、リスクを減らすことは可能です。特に、出産後の骨盤底筋のケア、便秘や下痢を放置しないこと、規則正しい排便習慣を身につけること、適度な運動と食生活を続けることが予防につながります。また、排便のコントロールに悩んだら、早い段階で医療機関に相談することで、悪化を防ぐことができます。
ワクチン
便失禁を直接予防するワクチンはありません。ただし、原因となる感染性の下痢(腸炎など)を予防するためには、手洗いや食品の衛生管理などが大切です。
検診プログラム
便失禁に対する特別な検診はありませんが、健康診断や人間ドックの問診で便通について相談することができます。また、検診で便潜血検査などを受ける際に、気になる症状をあわせて伝えるとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 肛門周囲の皮膚が炎症を起こしたり、かぶれたり、ただれたりすることがある
- 外出や人との交流を避ける生活になり、生活の質が低下することがある
- うつ症状や孤独感、不眠などの心の症状を引き起こすことがある
- 高齢者では、介護の負担が増え、寝たきりや褥瘡(床ずれ)のリスクが高まることがある
長期的な見通し
便失禁は決して「治らない病気」ではありません。原因によっては、生活習慣の工夫や骨盤底筋体操などで症状が大きく改善することがあります。たとえ完全に治らなかったとしても、適切なケアや治療により、日常の不便さを大きく減らすことができます。希望を持って、まずは一歩踏み出してください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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