直腸脱(ちょくちょうだつ)について知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
直腸脱とは、腸のいちばん終わりの部分(直腸)が、肛門の外に飛び出してしまう状態のことです。初めは排便のときにだけ出ることもありますが、進行すると歩くだけでも出るようになります。痛みや出血、便のもれなどの症状をともなうことがあります。
重要な事実
- 直腸脱は、直腸の一部が肛門の外にでる病気です。
- 子どもから高齢者まで、幅広い年代で起こる可能性があります。
- 便秘やいきみ、出産などがきっかけになることがあります。
- 治療せずに放置すると、症状が悪化したり、飛び出た部分が戻らなくなったりすることがあります。
- 医療機関で相談し、適切な対処をすることで改善が期待できます。
直腸脱はそれほど多くない病気ですが、とくに高齢の女性や、慢性的な便秘のある人で見られることがあります。
直腸脱は、赤ちゃんや幼い子どもにも起こることがありますが、とくに60歳以上の女性に多く見られます。また、出産を経験した方や、以前に骨盤の手術を受けた方にも起こりやすい傾向があります。
症状
- 飛び出た直腸が黒っぽく変色している
- 強い痛みがあり、動けない
- 大量の出血がある
- 飛び出た直腸を指で押してもまったく戻らない
- ⚠飛び出た直腸を戻そうとしても戻らないが、痛みはまだ我慢できる
- ⚠発熱があり、肛門の周りが腫れている
- ⚠便やガスがまったく出ない
- ⚠排便のたびに出血が続く
一般的な症状
- 排便のときに肛門の外にピンク色や赤い組織(直腸)が飛び出る
- 肛門のあたりにしこりや違和感を感じる
- 便やガスがもれやすい
- 排便がしにくい、すっきりしない感じが続く
- 肛門から粘液や血液が出ることがある
- 肛門の痛みやかゆみ
子供の症状
- 排便のときに肛門の外に直腸が出てくる
- 泣いたり、トイレでいきんだりすると出やすくなる
- 出た部分が自然に戻ったり、指で押すと戻ったりする
- 便に血が混じることがある
- 痛みをあまり訴えないこともある
高齢者の症状
- 歩いたり、軽くいきんだりしただけで直腸が飛び出る
- 肛門の締まりが弱くなり、便やガスがもれやすくなる
- 飛び出た直腸を自分で戻さなければならないことがある
- 肛門の周囲の痛みや不快感が続く
- 直腸が飛び出たまま戻らなくなることもある
原因
主な原因
- 慢性的な便秘や下痢による強い「いきみ」
- 出産による骨盤の筋肉や靭帯のゆるみ
- 加齢による骨盤底(骨盤の底の筋肉や組織)の弱まり
- 神経の病気や脊髄の損傷によって肛門の筋肉がうまく働かないこと
- 脊髄や骨盤の手術のあとに起こること
リスク要因
- 高齢であること(とくに60歳以上)
- 女性であること
- 複数回の出産歴があること
- 慢性的な便秘があること
- 重い物を頻繁に持ち上げる作業をしていること
- 長くいきむ習慣があること
- 子宮摘出などの骨盤の手術を受けたことがあること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 飛び出た直腸が自分で戻せない、または戻してもすぐ出てくる
- 肛門からの出血が続く
- 強い痛みや発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 排便のときに肛門から何か出ることに気づいた
- 便やガスがもれやすくなった
- 肛門の違和感や痛みが続く
- トイレのあとに直腸を指で戻す習慣がある
診断
直腸脱の診断は、医師の問診と診察によって行われます。いきんだ状態で診察することで、直腸がどれくらい出るかを確認します。場合によっては、ほかの病気との区別のために検査が必要になることもあります。
行われる可能性のある検査
- 診察(いきんでもらって直腸の飛び出し具合を確認する)
- 直腸指診(指を肛門に入れて、筋肉の状態やしこりの有無を調べる)
- 肛門内圧検査(肛門を締める力がどれくらいあるかを調べる)
- 大腸内視鏡検査(腸の中にカメラを入れて、ほかの病気がないか調べる)
- 排便造影(バリウムを使い、排便時の腸の動きをレントゲンで調べる)
診察で予想されること
受診の際は、いつから症状があるのか、排便の状態はどうかなどについて聞かれます。診察では、恥ずかしいかもしれませんが、いきんで直腸の飛び出しを確認することがあります。検査は痛みをともなわないように配慮されます。安心して症状を伝えてください。
治療
直腸脱の治療は、症状の程度や年齢、全身の状態によって異なります。乳幼児や軽症の場合は自然に治ることもありますが、重症の場合や大人の場合は手術が必要になることがあります。まずは生活習慣の改善や保存的な治療(手術をしない治療)を試みることが多いです。
自宅でのセルフケア
- 便秘を防ぐために水分をしっかりとる
- 食物繊維が豊富な野菜や果物を積極的に食べる
- 排便時に強くいきまないようにする
- トイレに長く座りすぎない
- 飛び出た直腸は、清潔な手でやさしく押して戻す(戻し方がわからない場合は医師に相談)
- 重い物を持ち上げる際は、腰を落としてゆっくりと行う
医療治療
保存的治療としては、便をやわらかくするための食事療法や、排便習慣の改善、骨盤底筋体操(骨盤の底の筋肉を鍛える体操)などが行われます。これらの方法で症状が改善しない場合や、直腸が戻らなくなった場合には、手術が検討されます。手術には、おなかの外から直腸を固定する方法や、肛門からアプローチする方法などがありますが、どの方法が適しているかは、年齢や全身の状態、重症度によって医師が判断します。
手術が検討される場合
保存的治療で効果が得られない場合や、直腸が常に飛び出たままになっている場合、強い痛みや出血、便のもれがある場合は、手術が検討されます。手術が必要かどうかは、専門医との相談のうえで決めましょう。
この病気と共に生きる
直腸脱とともに生活するうえでは、症状を悪化させないことが大切です。毎日の排便で強くいきまないようにし、便の状態を整えることを心がけてください。飛び出るときのために、清潔なガーゼや手袋を準備しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- こまめに水分補給をする
- 適度な運動(ウォーキングなど)を習慣にする
- 腹圧がかかりすぎる姿勢や動作を避ける
- 喫煙を控える(せきやいきみの原因になるため)
- 規則正しい生活リズムで排便を促す
- 体重を適正に保つ
食事と運動
便をやわらかくするために、野菜、果物、海藻、豆類などの食物繊維を十分にとりましょう。また、オリーブオイルや魚などの良質な脂質も便通に役立ちます。運動は、ウォーキングや水中ウォーキングなど、腹圧がかかりすぎないものを選びましょう。骨盤底筋体操(骨盤の底の筋肉を意識して締めたりゆるめたりする運動)は、医師や理学療法士の指導のもとで行うと効果的です。
精神的健康と心の健康
直腸脱の症状は、日常生活の不便さや恥ずかしさから、気分が落ち込んだり、人と会うのがおっくうになったりすることがあります。こうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、医療者や家族・友人に相談し、必要に応じて心理的なサポートを受けることも考えましょう。
予防
直腸脱を完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことはできます。便秘を予防し、排便時に強くいきまないこと、重いものを持ち上げるときに注意すること、骨盤底筋を鍛えることなどが大切です。出産後や加齢による骨盤底のゆるみが気になる場合は、早めに医師に相談しましょう。
ワクチン
直腸脱そのものを予防するワクチンはありません。
合併症
治療しない場合
- 直腸が飛び出たまま戻らなくなる(嵌頓:かんとん)
- 飛び出た直腸の血流が悪くなり、潰瘍や壊死(組織が死ぬこと)が起こることがある
- 便やガスがもれ続け、皮膚のかぶれや感染を起こすことがある
- 腸の一部が締め付けられて、強い痛みや腸閉塞を起こすことがある
長期的な見通し
直腸脱は、適切な治療を受けることで多くの場合、症状が改善します。軽症であれば生活習慣の改善や体操だけで良くなることもあります。重症でも、手術によって症状が大きく改善し、生活の質が取り戻せる方が多くいます。怖がらずに、まずは医療機関に相談してください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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