総動脈幹症(そうどうみゃくかんしょう)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
総動脈幹症は、心臓から出る大きな血管(大血管)が、ふつうは「大動脈」と「肺動脈」の2本に分かれるところ、赤ちゃんの心臓では1本の太い血管(総動脈幹)のままになっている先天性の心臓の病気です。心臓の中の左右の部屋を隔てる壁にも穴(心室中隔欠損)があることが多く、酸素の多い血液と少ない血液が混ざって全身に送られてしまいます。
重要な事実
- 生まれつきの心臓の形の異常で、胎児の心臓ができる過程で起こります。
- 完全に治療するには、生後早期の手術が一般的です。
- 手術後も生涯にわたって心臓専門医の定期的なフォローアップが必要です。
まれな病気です。先天性心疾患全体の約1〜3%を占めるとされています。
主に赤ちゃんにみられる病気で、出生直後や乳児期に診断されることがほとんどです。治療を受けて成人した方も、長期的な健康管理が必要です。
症状
- 唇や顔色が青紫色になってぐったりしている
- 呼吸が非常に速い、または呼吸が止まる
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- けいれんを起こす
- ⚠ミルクや食事がまったく飲めない
- ⚠普段に比べて機嫌が悪く、ぐったりしている
- ⚠息切れや動悸が急に悪くなった
一般的な症状
- 呼吸が速い、息苦しそう
- 母乳やミルクを飲むときに疲れてしまい、量が増えない
- 体重が増えにくい、発育の遅れ
- 唇や爪、皮膚が青っぽく見える(チアノーゼ)
- 汗をよくかく
子供の症状
- 成長や運動能力の遅れ
- 走ったり遊んだりすると息切れする
- 風邪や肺炎などの感染症にかかりやすい
高齢者の症状
- 息切れ、動悸(どうき)
- 疲れやすさ、運動能力の低下
- 不整脈(脈が乱れる)
- 高血圧や心不全のサイン
原因
主な原因
- 胎児の心臓が形成される時期(妊娠初期)に、大血管の分かれ方に異常が生じることが原因です。
- 遺伝子の変化が関わる場合もありますが、多くの場合はっきりとした原因はわかっていません。
リスク要因
- 家族に先天性心疾患の人がいる
- 母親の糖尿病(特にコントロールが不十分な場合)
- 妊娠中の風疹などの感染症
- 妊娠中の特定の薬剤やアルコールの摂取
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 赤ちゃんの唇や皮膚が青っぽい
- 息を吸うときに胸がペコペコへこむ、呼吸が速い
- ミルクを飲めない、体重が増えない
- ぐったりして反応が弱い
定期受診を予約すべき場合:
- 総動脈幹症と診断されたら、小児心臓専門医による定期的な診察・検査
- 思春期以降も、成人先天性心疾患の専門外来でのフォローアップ
診断
多くの場合、妊娠中の超音波検査(胎児心エコー)や、出生後の診察で心雑音やチアノーゼなどから疑われ、心エコー(心臓の超音波検査)によって確定診断されます。
行われる可能性のある検査
- 心エコー(心臓の超音波検査)
- 胸部X線検査
- 心臓カテーテル検査(必要に応じて)
診察で予想されること
診断後は、小児心臓専門医、心臓外科医、看護師などのチームが家族に詳しい説明をします。赤ちゃんの状態を安定させるための治療が始まり、手術の時期や方法についても一緒に話し合います。
治療
総動脈幹症の治療は、心臓の構造を正常に近づける手術が中心です。手術までは、薬で心臓の負担を減らし、全身の状態を整えます。
自宅でのセルフケア
- 手術後は、心内膜炎(心臓の内側の感染症)を防ぐため、歯科治療や手術の前に抗生物質が必要な場合があります。医師の指示に従いましょう。
- 感染症から心臓を守るために、定められた予防接種を受けましょう。
- 心臓の状態に合わせた運動や生活の制限については、担当医の指示を守りましょう。
医療治療
手術前には、心臓のポンプ機能を助ける薬、肺に血液が流れすぎるのを防ぐ薬、利尿薬(尿を出して体の水分を調整する薬)などが使われることがあります。ただし、具体的な薬の種類や量は、赤ちゃんの状態に合わせて医師が決定します。
手術が検討される場合
通常、新生児期または乳児期(生後数週間〜数か月)に、手術が行われます。手術では、総動脈幹を大動脈と肺動脈に分け、心室中隔欠損をふさぎ、肺動脈と心臓の右心室をつなぐ導管(パイプ)を設置します。
この病気と共に生きる
治療後は、心臓の状態を確認するために、定期的な受診と検査が必要です。元気に遊んだり学んだりできますが、運動の制限が必要な場合もあるので、医師のアドバイスを守りながら無理のない生活を送りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 感染症予防のため、手洗い・うがいを習慣にしましょう
- 定期予防接種をきちんと受けましょう
- 抗生物質が必要な場面(歯科治療など)を忘れず、医療者に総動脈幹症だと伝えましょう
- ストレスをためず、睡眠をしっかりとりましょう
食事と運動
心臓の状態に応じて、塩分や水分の調整が必要になることがあります。運動は、医師が許可した範囲で、散歩や軽い体操など無理のないものから始めるのがおすすめです。具体的な食事や運動の計画は担当医や管理栄養士に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
自分の体や将来のことを考えて不安になることもあるでしょう。無理をせず、その気持ちを家族や医療者、カウンセラーに話しましょう。患者さん同士で気持ちを分かち合うことも助けになります。
予防
総動脈幹症そのものを予防する方法はまだありません。妊娠前・妊娠中の母親の健康管理(風疹の予防接種を受けておく、糖尿病の治療、服薬中の薬について医師に相談する、禁酒など)は、先天性心疾患のリスクを下げるのに役立ちます。
ワクチン
定期予防接種をスケジュールどおりに受けることが大切です。心臓の状態によっては、感染症を防ぐために、医師から追加のワクチンがすすめられることもあります。
検診プログラム
胎児超音波検査や新生児の心疾患スクリーニング(パルスオキシメーターなど)で見つかることがあります。妊娠中に心疾患が疑われた場合は、小児心臓専門医がいる病院での出産を計画することができます。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプ機能が弱くなる)
- 肺高血圧症(肺の血管に高い圧力がかかる)
- 心内膜炎などの感染症
- 発育不良・呼吸障害
長期的な見通し
早期に診断され、適切な手術とその後のケアを受けられれば、多くのお子さんは元気に成長し、成人して社会で活躍されています。生涯にわたって心臓専門医のフォローアップは必要ですが、現代の治療の進歩により、可能性は大きく広がっています。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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