子どもの全身性エリテマトーデス(SLE)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
全身性エリテマトーデス(SLE)は、体の免疫(病気から体を守る仕組み)が自分自身の体を攻撃してしまう病気です。これにより、皮膚や関節、腎臓、心臓、肺、脳など、体のさまざまな部分に炎症(赤く腫れたり痛んだりすること)が起こります。この病気は慢性の病気で、よくなったり悪くなったりをくり返しながら長く付き合っていくことが多いです。
重要な事実
- SLEは自分自身の免疫が体を攻撃する「自己免疫疾患」のひとつです。
- 子どもに発症することはまれですが、思春期の女の子に多く見られます。
- 適切な治療を受ければ多くの子どもが普通に近い生活を送ることができます。
SLEはまれな病気です。子どもの場合、10万人に数人程度と言われています。
子どもでは、10歳から思春期にかけて発症することが多く、特に女の子に多いです。男の子にも起こることがありますが、割合は女の子のほうが高いです。
症状
- 呼吸が苦しい
- けいれんが起きる
- 意識がもうろうとする
- 突然の激しい頭痛や腹痛
- 血尿が出る、または尿の量が急に減る
- ⚠39度以上の熱が続く
- ⚠関節の痛みや腫れが急に強くなる
- ⚠顔や足のむくみがひどくなる
- ⚠胸の痛みがある
- ⚠皮膚に広がる赤い発疹が出た
一般的な症状
- 疲れやすくなる
- 熱が続く
- 顔に蝶(ちょう)のような形の赤い発疹(紅斑)が出る
- 関節が痛む・腫れる
- 日光にあたると皮膚がかぶれたように赤くなる
- 手や足の指が白や紫色に変わる(レイノー現象)
子供の症状
- 大人に比べて、腎臓の炎症(ループス腎炎)を起こしやすい
- 発熱や疲労感が強く出ることがある
- 成長や思春期の発達に影響することがある
- 頭痛、めまい、気分の変化、集中力の低下などが現れることもある
高齢者の症状
- 高齢者でSLEを新しく発症することはほとんどありませんが、起こった場合には、関節痛や皮膚症状が中心になることが多いです。
原因
主な原因
- 正確な原因はわかっていませんが、免疫の働きに異常が生じて、自分自身の細胞を攻撃してしまうことが原因と考えられています。
- 遺伝的な体質に、ウイルス感染や紫外線、ホルモンの変化などが関係して発症する可能性があります。
- 親から子へ直接遺伝するわけではありませんが、家族に他の自己免疫疾患を持つ人がいるとかかりやすい傾向があります。
リスク要因
- 10代の女の子であること
- 家族に膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患の人がいること
- 紫外線(日光)を強く浴びること
- ストレスや感染症をきっかけに症状が現れたり悪くなったりすることがあります
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 高熱が続く
- 息苦しさがある
- けいれんや意識の異常がある
- 急に尿が出なくなった
- 激しい腹痛がある
定期受診を予約すべき場合:
- 原因不明の熱や疲れが続く
- 顔に赤い発疹が出た
- 関節が痛む・腫れる
- むくみがある
- 学校の先生や家族から「顔色が悪い」と言われる
診断
SLEの診断は、ひとつの検査だけで決まるものではありません。症状や経過を聞き、血液検査や尿検査などの結果をあわせて、全体的に判断します。診断には専門的な知識が必要なため、小児科や膠原病内科の医師が行うことが多いです。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(自己抗体、炎症の程度、血液細胞の数など)
- 尿検査(たんぱく尿や血尿がないか)
- 腎臓の検査(エコーや腎生検など)
- 心電図、心臓エコー(心臓や肺の状態を調べる)
- 胸部X線検査
診察で予想されること
診断がつくまでに時間がかかることがあります。何度か通院して検査をくり返すこともあります。子ども本人も家族も不安が大きい時期ですが、担当の医師にわからないことは何でも質問し、納得しながら進めていきましょう。
治療
SLEの治療の目的は、炎症を落ち着かせて症状を和らげ、病気の進行や再発を防ぐことです。症状の強さやどの臓器に炎症があるかによって、治療の内容は変わります。治療は長く続くことが多いですが、多くの子どもは治療により症状がコントロールでき、学校生活や日常生活を送れています。
自宅でのセルフケア
- 紫外線を避ける(日焼け止め、帽子、長袖)
- 十分な睡眠と休息をとる
- ストレスをためない工夫をする
- 感染症にかからないように手洗い・うがいを心がける
- 勝手に薬をやめない
医療治療
治療には、炎症を抑えるお薬、免疫の働きを調整するお薬、症状に応じたお薬などを使います。重症の場合には、入院して点滴による治療を行うこともあります。具体的なお薬の種類や量は、子どもの年齢や症状に合わせて医師が決めます。必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
SLEそのものに対する手術は通常ありません。ただし、腎臓の状態が悪化した場合などに、合併症に対する治療や検査が必要になることがあります。
この病気と共に生きる
症状のよい時期と悪い時期があります。体調がよい日は普通に過ごし、つらい日は無理をせず休むことが大切です。学校との連携をとりながら、無理のない範囲で勉強や友人との時間を楽しめるようにしていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムをつくる
- 紫外線対策を毎日行う
- 感染症を予防する
- 定期的に通院し、検査を受ける
- 学校の先生や養護教諭に病気のことを伝え、協力してもらう
食事と運動
特別に制限が必要な食べ物はありませんが、塩分や脂肪のとりすぎに注意し、バランスのよい食事を心がけましょう。腎臓の状態によっては食事の調整が必要なこともあります。運動は、体調がよいときには軽い運動から始め、熱や関節の痛みがあるときは休むようにしましょう。
精神的健康と心の健康
SLEは見た目にわかりにくい症状が多く、回りの人に理解してもらいにくいこともあります。また、慢性の病気と付き合っていくことによる不安やストレスを感じることがあります。子どもが自分の気持ちを話せる場をつくり、必要に応じてカウンセラーや心の支援の専門家につなぐことも大切です。
予防
SLEそのものを予防する方法は今のところありません。ただし、紫外線を避けることや感染症に注意することで、きっかけとなる要因を減らすことはできます。また、症状の悪化を防ぐためには、治療を続け、定期検査を受けることが大切です。
ワクチン
ワクチン接種については、病気の状態や治療内容によって受けられる時期や種類が決められています。必ず主治医に確認してから受けるようにしてください。
検診プログラム
SLEの一般的な検診はありません。ただし、SLEと診断された場合は、腎臓や心臓などの合併症がないか定期的に検査を受けることが重要です。
合併症
治療しない場合
- 腎臓の炎症が進み、腎機能が低下する
- 心臓や肺の炎症、血管の炎症
- 血液の異常(貧血や白血球の減少など)
- 脳や神経の症状(けいれん、意識障害など)
- 感染症にかかりやすくなる
長期的な見通し
SLEは重い病気になることもありますが、治療法の進歩により、多くの子どもが成人して社会で活躍しています。早期に診断し、きちんと治療を続ければ、予後は大きく改善します。希望を持って、医療者と一緒に長い目で病気と向き合っていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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