胸膜中皮腫(のうまくちゅうひしゅ)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
胸膜中皮腫は、肺の外側を覆う「胸膜」という薄い膜にできる、まれながんです。胸膜は肺を包む袋のような役割をしていて、呼吸のときに肺がスムーズに動くのを助けています。この胸膜の細胞ががん化して、周りの組織に広がっていく病気です。
重要な事実
- 胸膜中皮腫のほとんどは、アスベスト(石綿)を吸い込んだことが原因で起こります。
- アスベストを吸ってから、症状が出るまでに20年から50年という長い年月がかかることがあります。
- 胸膜中皮腫は進行すると、胸に水がたまって呼吸が苦しくなることがあります。
- 早期に発見できれば、手術などで治療ができる可能性があります。
胸膜中皮腫はまれながんです。日本では年間に約1,000人から1,500人程度の人が診断されると言われています。男性に多く、約8割が男性です。
主に、以前アスベストを扱う仕事をしていた方や、その工場の近くに住んでいた方など、アスベストにさらされた経験がある人に発症します。特に60歳以上の方に多く見られますが、若い方でもアスベストを吸い込んでいれば発症の可能性があります。
症状
- 突然、激しい胸の痛みが起こったとき
- 息ができなくなるほど苦しいとき
- 血を吐いたとき
- ⚠安静にしていても息苦しさが続くとき
- ⚠胸の痛みがだんだん強くなるとき
- ⚠咳が長く続き、血が混じった痰が出るとき
一般的な症状
- 息切れ(特に運動したときや階段を上るとき)
- 胸の痛み(長く続く鈍い痛み)
- 咳(から咳が続く)
- 疲れやすい、だるさ
- 体重が減ってしまう
- 胸に水がたまる(胸水)
原因
主な原因
- アスベスト(石綿)を吸い込むことが主な原因です。アスベストは、昔は建材や断熱材、耐火材などに広く使われていました。
- アスベストに長期間または大量にさらされた人に、発症リスクが高くなります。
- ごくまれに、アスベストにさらされたことがない人でも発症することがありますが、原因ははっきりしていません。
リスク要因
- 建設業、造船業、アスベスト工場などで働いていた方
- アスベストを扱う作業場の近くに住んでいた方
- アスベストを扱う家族の作業着を洗濯していた方
- 喫煙(アスベスト曝露と重なるとリスクが高まります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが急に悪化したとき
- 胸の痛みが我慢できないほど強いとき
- 咳に血が混じったとき
定期受診を予約すべき場合:
- 数週間以上、咳が続いている
- 胸の痛みや息苦しさを感じる
- 食欲がなくなり体重が減ってきた
- アスベストにさらされた仕事をしていたことがあり、健康診断や相談をしたい
診断
胸膜中皮腫の診断は、問診(アスベストにさらされた経験の確認)、画像検査、そして組織を取って調べる検査を組み合わせて行います。医師は胸の音を聴いたり、血液検査を行ったりします。
行われる可能性のある検査
- 胸部X線(レントゲン)検査
- CT検査(コンピューター断層撮影)
- MRI検査(磁気共鳴画像)
- PET検査(陽電子放出断層撮影)
- 胸水検査(たまった胸水を調べる)
- 胸腔鏡下生検(胸に小さなカメラを入れて組織の一部を取る検査)
診察で予想されること
最初にかかりつけ医の診察を受け、必要に応じて呼吸器内科や呼吸器外科などの専門医を紹介されます。診断が確定するまでに、複数の検査を受けることもあります。すべての検査には理由があり、結果を待つ間は不安かもしれませんが、しっかりと医師に説明を求め、納得しながら進めましょう。
治療
胸膜中皮腫の治療は、がんの進行具合や体の状態によって異なります。主な治療法は、手術、放射線治療、薬物療法(抗がん剤など)を組み合わせて行う集学的治療です。治療の目的は、がんを取り除くこと、症状を和らげること、そして生活の質を保つことにあります。
自宅でのセルフケア
- 症状に合わせて、十分な休息と睡眠をとる
- 息苦しさがあるときは、無理をせず、ゆっくり動く
- 禁煙する(タバコを吸っている方は、禁煙が治療の助けになります)
- 栄養をしっかり摂って、体力を維持する
医療治療
治療には、がんを切除する手術、がん細胞を放射線で照射する放射線療法、全身に効く薬物療法(抗がん剤や分子標的薬など)があります。どの治療が適しているかは、がんの進行度、本人の体力、年齢などを考慮して決定されます。最近では、免疫を利用した治療法や、複数の治療を組み合わせる方法も行われています。医師と十分に話し合い、納得できる治療を選ぶことが大切です。
手術が検討される場合
胸膜中皮腫の手術は、がんが胸膜の範囲にとどまっていて、体の状態が手術に耐えられる場合に検討されます。手術の方法には、胸膜をはがす手術と、肺ごと取り除く手術があります。しかし、がんの広がりや患者さんの状態によっては手術ができないこともあり、その場合には放射線や薬物療法などで症状のコントロールを目指します。
この病気と共に生きる
胸膜中皮腫の治療中は、体力が落ちやすく、息切れや痛みなどの症状があるため、日常生活に工夫が必要になります。無理をせず、体調に合わせて休息と活動のバランスをとりましょう。必要なときには、酸素吸入や痛みを和らげる治療を受けることで、生活の質を保つことができます。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を徹底しましょう。
- ご家族や友人に支えを求め、一人で抱え込まない。
- 職場や学校のこと、経済的なことの相談は、医療ソーシャルワーカーや相談支援センターを活用する。
- ゆったりとした呼吸法やリラクゼーションで、不安を和らげる工夫をする。
食事と運動
治療中は栄養バランスの良い食事を心がけ、特にたんぱく質をしっかり摂ることが大切です。喘息や息切れがあるときは、激しい運動は避け、医師や理学療法士の指示に従って、無理のない範囲で体を動かしましょう。散歩や軽いストレッチが良いこともありますが、必ず医師に相談してから行います。
精神的健康と心の健康
がんと診断されることは、とても大きなショックで、不安や落ち込みを感じるのは自然なことです。また、治療の副作用や症状の変化によって、気分が沈むこともあります。そのようなときは、無理に自分を強くしようとせず、気持ちを言葉にして誰かに話すことが助けになります。必要であれば、精神科や心療内科の専門家、心理士によるサポートも有効です。もし自殺や死についての考えが頭から離れない場合は、ためらわずに、すぐに信頼できる人や専門家に相談してください。日本では、いのちの電話など、電話やオンラインで相談できる支援があります(例:よりそいホットライン)。
予防
胸膜中皮腫は、アスベストを吸い込まないことが最も重要な予防法です。現在、日本ではアスベストの使用はほぼ全面的に禁止されていますので、新しい曝露は年々減っています。しかし、古い建物や製品にはアスベストが残っていることがあるため、取り扱う際には十分な注意が必要です。アスベストにさらされた経験がある方は、定期的に健康診断を受け、医師にそのことを伝えるようにしましょう。
ワクチン
現在のところ、胸膜中皮腫を予防するためのワクチンはありません。
検診プログラム
胸膜中皮腫の早期発見のための、一般的な健康診断やがん検診はありません。しかし、アスベストにさらされた可能性がある方には、定期的に胸部CT検査をすることを医師に勧められることがあります。ご自身がアスベストにさらされたことがあるかどうか心配な場合は、医師に相談して定期検査の計画を立てましょう。
合併症
治療しない場合
- 胸に水がたまり、呼吸が苦しくなることがあります。
- がんが肺や胸壁、心臓を包む膜(心膜)、腹膜などに広がることがあります。
- 痛みが強くなったり、全身の状態が悪くなり、日常生活が難しくなることがあります。
- 血液が固まりにくくなり、出血しやすくなることもあります。
長期的な見通し
胸膜中皮腫は進行の速いがんの一種ですが、近年は治療法の開発が進み、良い効果が期待できるようになってきました。早期に診断できた場合や、治療によく反応する場合には、長く安定した生活を送れることもあります。たとえ進行した状態でも、症状を和らげる治療や緩和ケアによって、痛みや息苦しさを軽くし、より快適に日々を過ごすことができます。決して希望を失わず、医療チームと一緒に最良の方法を探していくことが大切です。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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