精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
精索静脈瘤は、陰のう(たまごを包む袋)の中にある、精巣から血液を運ぶ静脈が、まるで足の静脈瘤のように太くふくれ上がる病気です。血流が滞ることで、痛みや重だるさを感じることがあります。多くは左側にでき、まれに不妊の原因になることもありますが、治療しなくても問題ない場合がほとんどです。
重要な事実
- 精索静脈瘤は、男性によくみられる病気で、特に思春期から30代に多く見つかります。
- 多くの場合、症状がなく、健康診断や別の検査で偶然見つかります。
- 治療が必要かどうかは、痛みや不妊の有無、精巣の発育具合によって決まります。
よくある病気です。思春期の男性の10~15人に1人ほどに見られ、成人男性全体では約15%にみられます。日本でも一般的な病気で、泌尿器科ではよく相談されるテーマです。
思春期から成人男性に多く見られます。特に左側にできることが多いと言われています。家族に静脈瘤(静脈のふくらみ)がある人では、やや起こりやすくなります。
症状
- 突然、陰のうに激しい痛みが起こった場合(精巣捻転の可能性があります)。
- 陰のうが急に大きく腫れ、赤く熱を持ち、触れると強い痛みがある場合。
- 吐き気やおう吐を伴うような激しい痛みがある場合。
- ⚠痛みがひどく、夜も眠れないほどの場合。
- ⚠陰のうに急にしこりを感じる場合。
- ⚠陰のうの腫れや痛みとともに発熱がある場合。
一般的な症状
- 無症状の場合が多く、気がつかないこともあります。
- 陰のうが重だるく感じる、ひきつれるような違和感がある。
- 立ちっぱなしや運動の後に痛みや不快感が強くなり、横になると和らぐ。
- 陰のうに「ミミズの巣」のようなふわふわしたふくらみを触れることがある。
子供の症状
- 思春期の男子では、陰のうの左右の大きさが違うことに親が気づくことがあります。
- 痛みがないことも多いですが、違和感を訴える場合は受診すると良いでしょう。
高齢者の症状
- 加齢とともに静脈の弁の働きが弱まり、症状を感じやすくなることがあります。
- 前立腺の病気など他の病気と症状が似ていることがあるため、専門医の診察が大切です。
原因
主な原因
- 静脈の中にある「弁」がうまく働かないために、血液が逆流して静脈がふくらみます。
- 左側の精巣の静脈は右側よりも長く、角度も急なため、血液がたまりやすいと言われています。
- 長時間立ちっぱなしの姿勢や、おなかに力を入れることで、静脈への圧力が高まり症状が悪化することがあります。
リスク要因
- 思春期から30代の年齢(成長期に発見されやすい)。
- 長時間の立ち仕事(美容師、調理師、教員など)。
- 便秘や激しい運動など、おなかに負担をかける習慣。
- 家族に足の静脈瘤や精索静脈瘤の人がいる(遺伝的な傾向)。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい痛みや腫れがある場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
- 痛みで立ち上がれないほどの場合は、緊急に受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 陰のうに重だるさや違和感を感じるとき。
- 陰のうの左右の大きさや形が気になるとき。
- 不妊について相談したいとき(精索静脈瘤は男性不妊の原因の一つです)。
- 健康診断で「精索静脈瘤の疑い」を指摘されたとき。
診断
泌尿器科の医師が、問診のあと、立った状態で陰のうを視診・触診します。次に、おなかに力を入れて息を止める「バルサルバ法」という動作をしていただき、静脈のふくらみや血液の逆流を確認します。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診:立った状態で陰のうを観察し、静脈のふくらみを確認します。
- 超音波(エコー)検査:陰のうの中を画像で見て、静脈の太さや血流の逆流を詳しく調べます。
- 精液検査:不妊を心配される場合に、精子の数や運動性を調べることがあります。
診察で予想されること
特別な準備は必要なく、検査の痛みもほとんどありません。所要時間は30分程度です。結果に基づいて、治療が必要かどうかを医師と一緒に考えます。
治療
治療は、必ず行うというものではありません。痛みの程度、不妊の有無、精巣の発育状態などによって、経過観察にするか治療にするかを選びます。治療をしなくても、すぐに危険になることはまずありません。
自宅でのセルフケア
- 長時間の立ちっぱなしや、おなかに力を入れる動作を避け、こまめに休憩を取る。
- 陰のうを下着やサポーターでやさしく支える。
- ゆったりとした下着を選び、圧迫を避ける。
- 長風呂やサウナなどで温めすぎないようにする。
医療治療
治療が必要な場合は、一般的に手術(顕微鏡下での静脈結紮術)や、カテーテルを使って血管をふさぐ「血管塞栓術」などが行われます。いずれも血液の逆流を止めて、静脈のふくらみを改善する方法です。年齢や症状、不妊の有無などにより、泌尿器科の医師が最も適した方法を提案します。痛みに対しては、医師や薬剤師の指導のもと、市販の鎮痛薬を使うことはありますが、必ず用法・用量を守ってください。
手術が検討される場合
手術は主に次のような場合に検討されます。①痛みや不快感が強く、日常生活に支障がある場合。②思春期で精巣の発育が左右で大きく異なる場合。③不妊症の原因となっている可能性が高く、子どもを希望している場合。
この病気と共に生きる
治療を受けても受けなくても、日常生活では無理をせず、自分の体の調子に耳を傾けることが大切です。陰のうの様子に変化を感じたら、我慢せずに医師に伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 立ち仕事が続くときは、少し歩く、座る、足を動かすなどして、血液の流れを促しましょう。
- 適度な運動は血行を良くし、ストレスを減らす効果もあります。
- 便秘はおなかに圧力をかけるため、水分や食物繊維を十分に取り、予防しましょう。
食事と運動
特別な食事制限はありません。バランスの良い食事で、便秘を防ぎ、肥満を避けることが役立ちます。運動はウォーキングや水泳など、無理のないもので大丈夫です。ウエイトトレーニングなど、おなかに強い力をかける運動は一時的に避けたほうが良い場合もあるので、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
不妊や性に関わる悩みは、とてもデリケートで、不安になる気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、パートナーや家族、信頼できる専門家に話しましょう。必要に応じて、カウンセリングなどの心理的サポートも選択肢の一つです。
予防
精索静脈瘤を完全に予防する方法はまだ分かっていません。ただし、規則正しい生活と適度な運動で血行を整え、長時間の立ちっぱなしやおなかに力を入れることを避けることで、症状の悪化を防ぐことができると考えられています。
合併症
治療しない場合
- 思春期の精索静脈瘤では、精巣の発育が妨げられ、左右の大きさが異なることがあります。
- 精巣の温度が上がることで精子の数や運動性が低下し、男性不妊の原因となることがあります。
- 痛みや重だるさが長く続く場合、日常生活の質に影響することがあります。
長期的な見通し
精索静脈瘤は命に関わる病気ではなく、多くの場合は経過観察で十分です。治療が必要な場合も、手術やカテーテル治療によって痛みの改善や精液所見の向上が期待できます。不妊や痛みで悩んでいる方は、早めに泌尿器科を受診することで安心につながります。希望を持って、まずは一歩を踏み出しましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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