腹部癒着(ふくぶゆちゃく)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
腹部癒着(ふくぶゆちゃく)とは、おなかの中の臓器と臓器が、傷あとのかたまり(瘢痕組織:はんこんそしき)でくっついてしまう状態のことです。この傷あとは「癒着(ゆちゃく)」と呼ばれ、臓器が本来の動きをしにくくなることがあります。
重要な事実
- 多くの人は腹部癒着があっても症状を感じません。
- 腹部や骨盤の手術後に起こることが最も多いです。
- まれに、癒着が腸の通り道をふさぎ、腸閉塞(ちょうへいそく)を引き起こすことがあります。
- 癒着は画像検査だけでははっきり確認できないこともあり、診断は症状や経過から総合的に行われます。
はい、腹部や骨盤の手術を受けた方の約半分で癒着が起こると言われています。ただし、そのすべてに症状が出るわけではありません。
おなかや骨盤の手術を受けた方に多く見られます。特に開腹手術(おなかを切って行う手術)を受けた方に起こりやすいですが、腹腔鏡手術(ふくくうきょうしゅじゅつ)の後でも起こることがあります。性別や年齢を問わず、手術歴や炎症の有無によって影響を受けます。
症状
- 激しい腹痛が突然現れた
- 何度も吐いて、便やおならが出ない
- おなかがこれまでにないほど張って硬い
- 血が出る、または意識がぼんやりする
- ⚠高熱を伴う腹痛
- ⚠繰り返す吐き気、または吐き続けて水分が取れない
- ⚠膨らんだお腹が痛い、または触ると強く痛む
- ⚠排便が全くない状態が続く
一般的な症状
- 症状がないこと(無症状)が最も多い
- 腹痛(特に食事後や動いたとき)
- 腹部の張り
- 吐き気や食欲低下
- 便通の変化(便秘または下痢)
子供の症状
- 機嫌が悪い、ぐずる
- 母乳やミルクを飲む量が減る
- おなかが張って触ると嫌がる
- 便が出ない、または吐く(腸閉塞の前ぶれ)
高齢者の症状
- 腹痛や腹部の不快感
- 便秘の悪化
- 食欲不振と体重減少
- 吐き気や嘔吐(特に高齢の方は注意)
原因
主な原因
- 腹部や骨盤の手術(開腹手術、腹腔鏡手術など)
- 腹膜炎(ふくまくえん)などおなかの中の強い炎症
- 感染症や炎症性の病気(虫垂炎、胆のう炎、子宮内膜症など)
- けがや外傷による腹部の損傷
リスク要因
- 過去に腹部や骨盤の手術を受けたことがある
- おなかの中に炎症や感染歴がある
- 透析(とうせき)が原因で腹膜炎を起こしたことがある
- 腹部の手術を何度も受けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 便やおならが止まり、激しい腹痛や呕吐が続く(腸閉塞の可能性があります)
- 腹痛に高熱や寒気、血便を伴う
- 痛みがだんだん強くなり、立っていられないほどつらい
定期受診を予約すべき場合:
- 腹痛やおなかの張りが数週間以上続く
- 食事や運動でいつも症状が出る
- 便秘や下痢を繰り返す
診断
腹部癒着は症状や病歴(特に手術の経験)から診断されることが多いです。おなかを診察し、必要に応じて画像検査を行います。癒着そのものを映し出すことは難しいため、ほかの病気を除外しながら診断を進めます。
行われる可能性のある検査
- 腹部CT検査(おなかを輪切りに撮影するような検査)
- 腹部超音波(エコー)検査
- 消化管造影検査(バリウムを飲んでレントゲンを撮る)
- 血液検査(炎症や脱水などを確認)
診察で予想されること
医師から、過去の手術歴、腹痛の場所や性質、食事との関係などを詳しく聞かれます。次におなかを押したり聴診器を当てたりする診察を受けます。必要に応じ、CTや超音波の検査が行われることもあります。結果がすぐに出る場合も、後日になる場合もあります。
治療
腹部癒着の治療は、症状の有無や重さによって千差万別(せんさばんべつ)です。症状のない癒着は治療の必要がなく、経過を見るだけのことがほとんどです。症状がある場合も、食生活の工夫や鎮痛薬で対処して、まずは様子をみることが一般的です。
自宅でのセルフケア
- おなかに負担をかけない運動(歩く、ストレッチなど)を無理のない範囲で続ける
- 痛みの強いときは安静にして、湯たんぽや温かいタオルでおなかを温める
- 便秘にならないように水分をしっかりとる
- 食事はゆっくりよく噛んで、一度に食べすぎない
- 腹痛のときは脂っこい食品や刺激物を避ける
医療治療
症状がつらい場合は、医師から痛みを和らげる薬やおなかの張りを改善する薬が処方されることがあります。薬の種類や用法は、あなたの症状や体の状態に合わせて医師が決めます。自己判断での薬の使用はせず、医師や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
癒着が原因で腸閉塞(ちょうへいそく)を何度も起こす、または痛みが強く日常生活に支障があるような場合には、手術で癒着を切離する治療が検討されることがあります。緊急の場合を除き、医師と充分に話し合ったうえで決めることが大切です。
この病気と共に生きる
腹部癒着とともに生きるには、自分の体の傾向や症状のサインをよく知ることが大切です。急な痛みや吐き気に押しつぶされないよう、無理をせず休息をとり、気分転換も心がけましょう。
生活習慣のアドバイス
- たばこなどの刺激物は避け、胃腸に優しい生活を心がける
- おなかに力を入れないように、重いものを持ち上げるときは注意する
- こまめに運動をして血流と腸の動きを促す
- 痛みが続くときは、早めに医師へ相談する
食事と運動
食物繊維(野菜、果物、豆類)を適度に取り、便秘を防ぎましょう。ただし、食べ過ぎや油っこい食事は症状を悪化させることがあります。運動は、ウォーキングや水中歩行など、おなかを圧迫しにくい軽めのものを毎日少しずつ続けるのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
慢性的な腹痛や吐き気は、気分を重くしたり、不安を引き起こしたりすることがあります。痛みやつらさを一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に気持ちを伝えることが大切です。もし強い不安や落ち込む気持ちが続くなら、心の健康の専門家に相談するという方法もあります。
予防
腹部癒着を完全に予防することは難しいのが現状です。しかし、医師は手術中に臓器や組織を優しく扱い、癒着を減らすための工夫(特殊な資材の使用や腹腔鏡手術の選択など)を進めることがあります。大きな手術を受ける際は、事前に医師から説明を受けることができます。
合併症
治療しない場合
- 腸閉塞(ちょうへいそく):癒着が腸を押しふさぎ、食べ物や便が通れなくなる
- 腸の血行障害:まれに、押さえられた腸の血流が悪くなって組織が傷む
- 慢性の腹痛や腹部の不快感が続く
長期的な見通し
腹部癒着は、多くの方にとって一生症状が出ず、健康に問題のないものです。仮に症状が出ても、多くの場合は手術なしでコントロールできます。万が一、腸閉塞を起こした場合も速やかに医療を受ければ、適切な治療で回復できる可能性は高いです。恐れすぎず、普段から体の変化に注意を払い、必要なときに相談することが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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