毛巣洞病(パイロニダル病)とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
毛巣洞病(もうそうどうびょう)は、おしりの割れ目の上の方にある皮膚の下に、小さな穴やトンネル(洞)ができる病気です。この中に「毛」や「皮脂」などのゴミがたまって、細菌が感染すると、腫れや痛み、膿(うみ)が出ることがあります。
重要な事実
- 毛巣洞病は、毛深い人や長時間座って仕事をする人に多く見られます。
- 感染すると膿がたまり、強い痛みを起こすことがあります。
- 軽症の場合は、清潔に保つだけで落ち着くこともあります。
- 放置すると繰り返し感染することがあるため、早めの対処が大切です。
毛巣洞病はそれほど珍しい病気ではありません。特に若い男性に多く、外来を受診する患者さんも少なくありません。
10代後半から30代の男性に最も多く見られます。また、長時間座りっぱなしの仕事をしている人、体毛が濃い人、体重が多めの人などにも起こりやすいと言われています。
症状
- 突然の高熱(38度以上)
- 赤みが一気に広がる
- 激しい痛みで動けない
- 意識がぼんやりする、または頻脈が続く
- ⚠痛みや腫れがどんどん強くなる
- ⚠膿や血液が大量に出る
- ⚠悪臭を伴う分泌物
- ⚠発熱がある(37.5度以上)
- ⚠自宅でケアしても3日以上よくならない
一般的な症状
- おしりの割れ目の上の方の痛みや圧迫感
- 赤く腫れる
- 膿(うみ)や血の混じった液体が出る
- 触ると熱感がある
- 小さなしこりや穴が触れる
- 歩くときや座るときに痛みが強くなる
子供の症状
- 子どもではまれですが、思春期以降に見られることがあります。
- おしりを痛がったり、座るときに嫌がったりします。
- おしりの割れ目が赤く腫れているのが見えることがあります。
高齢者の症状
- 高齢者では典型的な症状が出にくいことがあります。
- 痛みがぼんやりしていて、疲れやすい、だるいといった全身の症状だけが出ることもあります。
- 強い腫れや発熱がないのに、徐々に痛みが強くなる場合もあります。
原因
主な原因
- おしりの割れ目に力や摩擦が加わり、皮膚に細い穴ができること
- 抜け落ちた毛が小さな穴から皮膚の中に入り込むこと
- 穴の中に毛や皮脂がたまり、細菌が感染すること
リスク要因
- 長時間の座位(特に運転手やデスクワーク)
- 体毛が濃い
- 肥満気味
- 男性であること(15歳〜30歳に特に多い)
- 家族に同じ病気の人がいる
- 下着や衣服が擦れやすい
- 衛生状態が悪い環境
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 痛みや腫れが急に強くなった
- 膿や血が止まらない
- 発熱を伴う
- 赤みが周りに広がっている
- 便・尿のときに強い痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- おしりの割れ目に小さな穴やしこりを触れる
- 以前も同じような症状があった
- 痛みはないが気になって仕方ない
- 慢性の痛みがあり生活に支障が出ている
診断
毛巣洞病は、医師がおしりの割れ目を視診し、触って確認することで診断がつくことがほとんどです。特別な検査が必要になるのは、感染を繰り返したり、穴が深い場合などです。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診(おしりの割れ目をよく観察し、穴や腫れ、痛みを確認します)
- 血液検査(感染による炎症の度合いを調べる場合があります)
- 超音波(エコー)検査(皮下のトンネルの広がりを見る場合があります)
- MRI(まれに、深い場所にまで広がった感染を詳しく調べる場合があります)
診察で予想されること
診察では、おしりの割れ目を見せることになり、恥ずかしさや緊張があるかもしれません。しかし、医師は普段からこのような症状を数多く診ています。痛みや気持ちを正直に伝えてください。診察自体は短時間で終わることがほとんどです。
治療
治療は、症状の具合と炎症の程度によって決まります。軽症では清潔を保つなどの自宅ケアで済むこともありますが、膿がたまっている場合は医療機関で処置が必要です。
自宅でのセルフケア
- 毎日シャワーで患部をやさしく洗い、清潔に保つ
- 入浴後は清潔なタオルでおしりの割れ目をよく乾かす
- 温かいタオルで軽く温める(炎症が強いときは避ける)
- 長時間座るときは、1時間に一度は立ち上がって体を動かす
- 通気性のよい下着やゆったりした衣服を着る
- 刺激を避けるため、ひどいこすりや爪でかくのはやめる
- 体毛を整える(自己処理が難しければ医療機関で相談)
医療治療
医療機関では、感染を抑えるために抗生物質(抗微生物薬)が処方されたり、膿を切開して出す「切開排膿(せっかいはいのう)」という処置が行われることがあります。具体的な薬の名前や使用法は、医師や薬剤師に必ずご確認ください。症状が重い場合は、麻酔をしてしっかりと膿を取り除くことがあります。
手術が検討される場合
感染を繰り返す、穴が深くなっている、保存的な治療で改善しない場合は、毛巣洞を切り取る手術が行われます。手術は、全身麻酔や局所麻酔で行われ、多くの場合、入院または日帰り手術で対応できます。手術後も術後のケアがしっかりしていれば、再発はかなり防げます。
この病気と共に生きる
生活の中での工夫がとても大切です。おしりの割れ目を清潔に保ち、長い間座りっぱなしにしないように心がけると、症状を落ち着かせることができます。自己処理で傷つけないように注意しながら、定期的に体毛のお手入れをしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 作業の合間に立ち上がってストレッチをする
- 座るときにドーナツ型クッションを使う(圧迫を減らす)
- 汗をかいたら拭き取り、清潔な下着に替える
- 喫煙は血流を悪くするので、できるだけ控える
- 体重コントロールに努める(適切な体重を医師と相談)
食事と運動
バランスのよい食事と適度な運動は、炎症を抑え、体の状態を整えるのに役立ちます。特に、野菜や果物、十分な水分をとることを意識しましょう。激しい運動はかえって摩擦を起こすこともあるため、ウォーキングなど軽い運動で継続するのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
おしりの病気ということで、恥ずかしい思いや、周りに言えない悩みを抱える方が多いのも事実です。また、痛みや再発への不安で気分が落ち込むこともあるかもしれません。そうした気持ちは自然なことです。一人で抱え込まず、医療者に話すだけでも気持ちが楽になります。必要に応じて、カウンセリングなどの支援を受けることもできます。
予防
完全に予防することは難しいですが、おしりの割れ目を清潔に保ち、長時間座りっぱなしにせず、毛の処理を行うことでリスクを減らせます。すでに穴がある人は、とくに摩擦を避け、入浴後の乾燥を徹底しましょう。
ワクチン
毛巣洞病に対するワクチンはありません。
検診プログラム
自覚症状がない状態で積極的に行う検診はありませんが、おしりの割れ目に小さな穴やしこりに気づいたら、早めに医療機関で相談することが結果的に早期対応につながります。
合併症
治療しない場合
- 膿がたまり、痛みが強くなる
- 膿が広がり、周囲の皮膚や皮下組織に炎症が広がる(蜂窩織炎)
- 皮膚に別の穴ができ、トンネルが複雑になる(瘻孔形成)
- 感染を繰り返すと、慢性の洞が残ることがある
- (まれに)長年治らない慢性炎症から皮膚がんが発生することがある
長期的な見通し
毛巣洞病は、適切な治療とセルフケアでほとんどが改善する病気です。たとえ再発しても、医師とよく相談した治療を続ければ、症状を抑えながら日常生活を送ることができます。恥ずかしがらずに早めに相談することが、悪化を防ぐ第一歩です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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