羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
羊水塞栓症は、お産の前後で、赤ちゃんを包んでいた羊水(ようすい)やその内容物がお母さんの血液の中に入り込み、体が激しいアレルギー反応のような状態を起こすとてもまれな緊急疾患です。それにより、呼吸や血行が突然乱れ、命に関わることがあります。お産を扱う医療機関では、そうした緊急事態に備えた体制が整っています。
重要な事実
- 非常にまれですが、短時間で重症化することがあります。
- 主に陣痛中や分娩直後に起こり、原因は完全には解明されていません。
- 妊婦の命を救うためには、医療スタッフの迅速な対応が必要です。
いいえ、とてもまれです。統計によりますが、およそ数万件の出産に1件程度とされる非常にまれな病気です。
妊娠中でも、特に陣痛が始まった後、分娩中、または産後(帝王切開の後を含む)に発症することがあります。初産・経産を問わず起こりえます。
症状
- 急な息苦しさや胸の痛みが現れた
- 顔色が悪くなり、意識がもうろうとする
- 痙攣(けいれん)が起きる
- 産後に異常に多い出血がある
- これらが起きたら、すぐに119番へ救急車を要請してください。病院の中にいる場合は、直ちに助産師・医師へ知らせてください。
- ⚠産後に出血が通常より多い
- ⚠お産後、息苦しさや動悸が続く
- ⚠強い不安感があり「何かおかしい」と感じる
一般的な症状
- 急な息苦しさ(呼吸困難)
- 胸の痛み
- めまいや失神
- 体の冷や汗
- 脈が速くなる
- 血圧が急に下がる
- 意識がもうろうとする
- 痙攣(けいれん)
- 止まらない異常な出血
子供の症状
- この病気はお母さんに起こるもので、子どもには見られません。
高齢者の症状
- 高齢者には起こりません。妊娠・出産する世代の女性に特有の病気です。
原因
主な原因
- 正確な原因はまだ十分に分かっていません。何らかの理由で羊水が子宮内の血管からお母さんの血液に入り、体が過剰な免疫反応(アレルギー様反応)を起こすと考えられています。その結果、肺や心臓などの機能が一瞬で乱れます。
リスク要因
- 次のような場合に起こりやすいという報告がありますが、明確な危険因子はなく、誰にでも起こりうるものです。
- 多胎妊娠(双子や三つ子など)
- 胎盤の位置や形に異常がある
- 妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)
- 高齢での出産
- 陣痛を誘発するなどの医療処置
- 帝王切開などの手術
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の息苦しさ、胸の痛み、意識の低下
- 発作性の痙攣(けいれん)
- 止まらない出血
- お産中なら、すぐに医療チームへ知らせてください。
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠中は定期的な健診を受け、お産を予定している医療機関で自分の体調の変化を話しておきましょう。
診断
羊水塞栓症は、症状や経過から医師が診断します。特別な検査はなく、他の病気を除外しながら判断されることが一般的です。
行われる可能性のある検査
- 血液検査
- 動脈血ガス分析(血液中の酸素量を調べる検査)
- 胸部X線(レントゲン)
- 心臓エコー(超音波で心臓の動きを見る検査)
- 血液凝固系の検査(血小板数や血が固まる働きを調べる検査)
診察で予想されること
発症時は緊急です。医師や看護師は、話しかけながら素早く診断と対応を行います。あなたが意識を失っている場合や、集中治療室に移動する場合もあります。
治療
治療の中心は、命の危険を取り除きながら、体の機能を維持する集中治療です。病院の救急医療チーム(産科、麻酔科、循環器科、救急科など)が総力を挙げて対応します。
自宅でのセルフケア
- 回復後は、医師や助産師の指導のもとで無理をしないで体力の回復を待ちます。
- 処方された薬は指示どおりに使用し、自己判断でやめないようにしましょう。
- 気になる症状(息切れ、むくみ、出血など)があればすぐに医療者へ伝えましょう。
医療治療
一般的な集中治療として、酸素投与や人工呼吸器(呼吸を助ける機械)による呼吸管理、血圧を維持するための輸液や薬剤、輸血などが行われます。また、血液凝固障害(血が固まりにくくなる状態)に対しては、血小板や凝固因子の補充が検討されます。状況に応じて、体外式膜型人工肺(ECMO)などの高度な補助循環を用いることもあります。
手術が検討される場合
妊娠継続中に発症した場合は、お母さんの状態を安定させるために、速やかな帝王切開が必要になることがあります。また、産後の大量出血が続く場合には、子宮の動脈を塞栓する処置や、止血を目的とした手術が行われることがあります。
この病気と共に生きる
発症後の回復は個人差が大きく、数週間から数か月かかることがあります。集中治療室から一般病棟へ移り、その後は外来で経過を見る流れになります。体に残った影響(肺や神経の障害など)については、リハビリテーションが行われることもあります。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な外来受診を続ける
- 感染症を防ぐため、手洗いやうがいを心がける
- 必要な休息をとり、体力の回復に合わせて活動量を増やす
食事と運動
医師や管理栄養士の指導に従い、バランスの取れた食事をとりましょう。運動は、体力に合わせて医師に相談しながら少しずつ再開するのが安全です。
精神的健康と心の健康
急性期の体験は心に大きな影響を残すことがあります。不安、抑うつ、フラッシュバック(突然、辛い記憶がよみがえる)などの心的外傷後ストレス障害(PTSD)が生じる可能性があります。
予防
羊水塞栓症を予防する確実な方法はありません。普段は健康であっても起こりうるため、お産を扱う医療機関では、緊急事態にすぐ対応できる体制を整えています。
合併症
治療しない場合
- 死亡につながることもあります
- 意識の回復が遅れる(脳に十分な酸素が行かないため)
- 全身の臓器が障害を受ける(呼吸不全、心不全、腎不全など)
- 重度の出血性疾患(DIC)による産後の止血困難
長期的な見通し
この病気はとても重い状態ですが、医療の進歩により救命できる確率は高くなっています。発症を経験した方も、適切な治療とリハビリを受けることで社会復帰されています。退院後の経過は医師と一緒に見守っていきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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