ミトコンドリア病(エネルギーを作るしくみの障害)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ミトコンドリア病は、体の中の細胞でエネルギーを作る「ミトコンドリア」がうまく働かず、筋肉や脳、心臓、目、耳など様々な場所に症状が現れる病気です。エネルギーの不足により、体の機能が少しずつ低下することがあります。
重要な事実
- ミトコンドリアは細胞内の小さな器官で、食べ物から得た栄養をエネルギーに変える重要な役割をしています。
- ミトコンドリア病は遺伝子の変化によって起こる、まれな病気です。
- 症状は人によって大きく異なり、軽いものから重いものまで様々です。
ミトコンドリア病はまれな病気で、日本では難病(指定難病)に指定されています。正確な患者数ははっきりしていませんが、数千人に1人程度と考えられています。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、子どもに現れることが多く、特に乳幼児期に重症化することがあります。大人になってから初めて症状が現れることもあります。
症状
- 急に意識を失って反応がない、または呼びかけに応じない
- けいれんが止まらない、または連続しておこる
- 呼吸が苦しそう、息が止まる
- 片側の手足が動かない、言葉が出ないなど脳卒中のような症状
- ⚠激しい頭痛や吐き気、嘔吐が続く
- ⚠急に視力がぼやける、見えにくい
- ⚠全身の力が抜けて動けない
- ⚠強い腹痛や下痢、脱水の兆候
一般的な症状
- 疲れやすさ、力が入りにくい(筋肉の弱さ)
- 運動時の動悸や息切れ
- けいれん、意識を失うような発作
- 難聴や視力の低下
- 言葉や運動の発達の遅れ
- 吐き気や嘔吐、食欲不振
- 糖尿病などの内分泌の異常
子供の症状
- 発育や発達の遅れ(首がすわるのが遅い、歩くのが遅いなど)
- 繰り返す嘔吐や吐き戻し
- けいれん発作
- 筋肉がふにゃふにゃしている(筋緊張低下)
- 体重が増えない、成長が止まる
高齢者の症状
- 徐々に進行する筋力低下や疲労感
- まぶたが下がる(眼瞼下垂)
- 難聴や視力障害
- 心臓や腎臓などの臓器の障害が現れることもある
- 糖尿病や消化器の症状
原因
主な原因
- 遺伝子の変化(遺伝子変異)によってミトコンドリアの働きが十分でなくなることが主な原因です。
- ミトコンドリアのDNA(母から子どもに伝わるDNA)の変化による場合と、核のDNAの変化による場合があります。
- 両親から遺伝するケースもありますが、本人にだけ突然起こるケースもあります。
リスク要因
- 家族にミトコンドリア病の人がいる場合、遺伝の可能性があります。
- 母親がミトコンドリアDNAの変異を持っている場合、子どもに伝わりやすくなります。
- 原因が明確でない場合も多く、発症を予測するのは難しいです。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識の変化、激しいけいれん、呼吸困難など緊急の症状がある場合は、ためらわずに119番で救急車を呼んでください。
- 急に視力や筋力の低下がある場合も、すぐに医療機関を受診してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 慢性的な疲れやすさや筋力低下が続く場合
- 子どもが発育や運動の発達の遅れを見せている場合
- すでに診断を受けている人は、定期的に主治医のフォローアップを受けてください。
- 気になる症状があれば、まずはかかりつけ医(一般診療)に相談しましょう。
診断
ミトコンドリア病の診断は、症状や家族歴を詳しく聞き、血液・尿検査、画像検査、遺伝子検査などを組み合わせて総合的に行われます。診断には専門的な知識が必要なため、多くは専門医療機関で進められます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(乳酸やピルビン酸の値、血液ガスなど)
- 心電図、脳波、筋電図などの検査
- 脳のMRI検査
- 遺伝子検査(血液や唾液などからDNAを調べます)
- 筋肉の組織を採取して調べる筋肉生検(筋肉の一部を取って顕微鏡で調べる検査)
診察で予想されること
診断はすぐに確定するとは限らず、時間がかかることもあります。「疲れやすい」といった漠然とした症状から始まり、専門医の受診までに数か月以上かかることもあります。症状や検査結果をメモに残しておくと、医師との話し合いがスムーズになります。
治療
現在のところミトコンドリア病そのものを完全に治す治療法はありませんが、症状を和らげ、生活の質を保つための治療やケアを行うことができます。治療は医師の指導のもと、個々の症状に合わせて進められます。
自宅でのセルフケア
- 食事をこまめにとり、低血糖を避ける(医師や管理栄養士のアドバイスに従う)
- 十分な睡眠と休息をとる
- 無理のない範囲で運動し、過度な疲労を避ける
- 風邪や感染症にかからないよう、こまめな手洗いと予防接種を心がける
医療治療
症状に合わせて、ビタミンや補酵素(Q10など)を補うなどの栄養療法を行うことがありますが、すべての人に有効と確立されているわけではありません。てんかん発作には抗てんかん薬、糖尿病には血糖を下げる薬、心不全には心臓の働きを助ける薬などが用いられることがあります。いずれも医師の処方が必要です。急に症状が悪化した場合は、輸液や呼吸管理など入院での治療が必要になることもあります。
手術が検討される場合
手術が必要になることはまれですが、食べる機能が弱って誤嚥(ごえん)を繰り返す場合などに、胃ろう(胃に管を通して栄養を送る造設術)が検討されることがあります。必要かどうかは医師が個別に判断します。
この病気と共に生きる
疲れやすい体質に合わせて、1日の予定に休息時間を組み込み、無理をしないことが大切です。学校や職場には必要な配慮を相談することで、安心して生活しやすくなります。症状の変化に気づいたら早めに医療機関に相談しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを心がける
- 体を冷やさない、感染症を予防する
- 体温調整が難しい場合があるため、天候に合わせた服装を工夫する
- ストレスをためず、ゆったりした時間を持つ
- 飲酒や喫煙を避ける
食事と運動
食事はバランスのよいものを3食とり、空腹(低血糖)を避けることが大切です。長時間の絶食は症状を悪化させることがあります。運動は、過度な強度は避け、医師と相談しながら「軽いウォーキング」程度から始めるのが安心です。
精神的健康と心の健康
慢性的な疲れや症状による生活の制限があると、不安や抑うつ気分になることもあります。心理的なサポートやカウンセリングも重要です。つらい時は一人で抱え込まず、かかりつけ医や相談機関に話してください。もし「自分や他人を傷つけたい」という気持ちが高まったら、すぐに119番に電話するか、地域の精神科救急や相談窓口へ連絡してください。
予防
遺伝子の変化が原因のため、現在のところミトコンドリア病そのものを予防する方法はありません。家族に患者がいる場合は、遺伝カウンセリングを受けて情報を得ることができます。
ワクチン
インフルエンザなどの感染症は症状を悪化させることがあるため、かかりつけ医と相談の上で、定期予防接種や任意の予防接種を検討することが大切です。
検診プログラム
新生児マススクリーニング(生まれた赤ちゃんにたいして行われる検査)では、ミトコンドリア病の一部のタイプを早期に見つけられる場合がありますが、すべてのタイプを検出できるわけではありません。気になる場合や家族歴がある場合は、専門医に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 筋肉の弱りが進行して、歩行や呼吸、嚥下(えんげ)が困難になることがあります。
- 重度の代謝性アシドーシス(体が酸性に傾く状態)による意識障害やけいれんが起こることがあります。
- 心不全、糖尿病、腎障害など、複数の臓器に合併症を起こすことがあります。
- 乳幼児期に発症した場合は、重症化して生命にかかわることがあります。
長期的な見通し
ミトコンドリア病の経過は人によって大きく異なります。適切な治療と生活管理により、症状を安定させ、より良い状態を長く保てる方も多くいます。研究も進んでおり、新しい治療法やケアの方法が次々と開発されています。希望を持って、医療チームと一緒に進んでいきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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