鼠径ヘルニア(そけいヘルニア)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
鼠径ヘルニアとは、おなかの内側の組織の一部が、足の付け根の弱くなった筋肉のすき間から飛び出してしまう状態です。飛び出した部分は「ヘルニア」と呼ばれ、多くの場合、せきや重い物を持ったときなどに、足の付け根やおなかの下の部分がぽっこりとふくらみます。痛みを伴うこともありますが、必ずしも強い痛みがあるとは限りません。
重要な事実
- 鼠径ヘルニアは、おなかの内側の組織が足の付け根に飛び出す病気です。
- 男性に多く、特に高齢になるとリスクが高まります。
- 飛び出した部分が痛んだり、戻らなくなったりする場合があります。
- 多くの場合、手術で治療しますが、緊急の手術が必要になることもあります。
鼠径ヘルニアは、日本では比較的よく見られる病気です。生涯にわたって発症する割合は、男性でおよそ27%、女性でおよそ3%と報告されています。
男性に多く、特に60歳以上の方に多く見られます。また、赤ちゃんや小さな子どもにも起こることがあります。早産で生まれた赤ちゃんや、鼠径ヘルニアの家族歴がある方では、発症しやすい傾向があります。
症状
- 飛び出した部分が硬くなり、押しても戻らない。
- 急に強い痛みや吐き気、嘔吐がある。
- おなかが張って、便が通らない、おならが出ない。
- 発熱を伴う。
- ⚠痛みが次第に強くなっている。
- ⚠ふくらみが以前より大きく、戻りにくくなっている。
- ⚠いつもと違う強い違和感がある。
一般的な症状
- 足の付け根やおなかの下の部分に、せきやいきみで出てくるふくらみがある。
- ふくらんだ部分が、立ったときや重い物を持ったときに大きくなり、横になると消えることがある。
- 違和感、重だるさ、鈍い痛みがある。
- 痛みは急に始まることは少なく、ゆっくりと現れることが多い。
子供の症状
- 赤ちゃんが泣いたり、せきをしたりすると、足の付け根がふくらむことがあります。
- おむつ替えのときや入浴時に、ふくらみに気づくことが多いです。
- 子ども自身は痛みをうまく伝えられないため、機嫌が悪かったり、ぐずったりすることがあります。
高齢者の症状
- ふくらみが痛みを伴わず、気づかないこともあります。
- 立ち仕事や歩行でだるさや痛みを感じることがあります。
- 便秘や前立腺の問題でいきむことが多いと、症状が悪化することがあります。
原因
主な原因
- おなかの筋肉(腹壁)に弱い部分が生まれつきあること。
- 加齢によっておなかの筋肉が弱くなること。
- 慢性的なせきや便秘、重い物を持ち上げる作業など、おなかに負担がかかる状態が続くこと。
リスク要因
- 男性であること。
- 高齢であること。
- 慢性のせき(長引くせき)がある。
- 慢性の便秘。
- 前立腺肥大などで排尿時にいきむことがある。
- 重い物を持ち上げる仕事をしている。
- 鼠径ヘルニアの家族歴がある。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 強い痛みがある。
- ふくらみが戻らなくなった。
- 吐き気や嘔吐がある。
- 発熱がある。
定期受診を予約すべき場合:
- 足の付け根のふくらみに気づいた。
- 痛みや違和感が続く。
- 立ち仕事や運動のときに違和感が強くなる。
診断
診察では、医師が立った状態やせきをした状態で、足の付け根を観察し、ふくらみを確認します。多くの場合、これだけで診断がつきます。
行われる可能性のある検査
- 視診と触診(医師が目で見て触って確認する)
- 超音波検査(エコー)
- CT検査(必要な場合)
診察で予想されること
診察では、下着を脱いで鼠径部を見せていただくことがあります。リラックスして受診してください。必要に応じて、立った状態でせきをしてもらうなど、いくつかの動作をお願いすることがあります。痛みを伴う検査ではありません。
治療
鼠径ヘルニアの根治的な治療は手術です。ヘルニアが小さい場合や痛みがない場合でも、時間とともに大きくなることが多く、放置すると緊急手術が必要になる危険性があります。そのため、多くのガイドラインでは手術を推奨しています。
自宅でのセルフケア
- 飛び出した部分が痛む場合は、無理に押し込まないでください。
- 重い物を持ち上げるときは、腰を落として脚の力で持ち上げるようにしましょう。
- 便秘を防ぎ、排便時にいきみすぎないようにしましょう。
- 長時間立ちっぱなしを避け、休憩を取るようにしましょう。
医療治療
手術には、おなかを切開する方法と、内視鏡(腹腔鏡)を使用する方法があります。どちらの方法でも、飛び出した組織を戻し、弱くなった部分を補強します。近年は、メッシュ(人工の補強材)を使うことが一般的ですが、手術の方法や使用する材料は患者さんの状態によって異なります。麻酔方法も、全身麻酔や局所麻酔など、いくつかの選択肢があります。手術のタイミングや方法については、主治医と十分に話し合って決めることが大切です。
手術が検討される場合
嵌頓(かんとん)や絞扼(こうやく)と呼ばれる状態(飛び出した部分が戻らなくなり、血流が悪くなる状態)になった場合は、早急な手術が必要です。また、日常生活に支障をきたすような痛みや違和感がある場合も、手術を検討します。
この病気と共に生きる
手術を受けるまでの間は、痛みや違和感を悪化させないように、体に負担をかけすぎないようにしましょう。気になる症状があるときは、無理をせず、かかりつけ医や専門医に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 腹筋を鍛えることは、ヘルニアの予防に役立つことがありますが、負担がかかりすぎないように、専門家の指導のもとで行いましょう。
- 喫煙は、慢性的なせきの原因になるため、禁煙を検討しましょう。
- 適正体重を維持しましょう。
- 便秘を防ぐために、水分を十分に取り、食物繊維を意識した食事を心がけましょう。
食事と運動
食事は、便秘を防ぐために、野菜や果物、全粒穀物など食物繊維の多いものをバランスよく取り入れましょう。水分を十分に飲むことも大切です。運動は、ウォーキングなどの軽いものから始め、おなかに負担がかかる激しい運動は避けてください。手術後は、医師の指示に従って運動を再開しましょう。
精神的健康と心の健康
ヘルニアと診断されると、手術が必要になる可能性や、見た目の変化に不安を感じるかもしれません。また、痛みや生活の制限によって、気分が落ち込むこともあります。こうした気持ちは自然なものです。気になる場合は、家族や友人に話したり、医療者に相談してください。
予防
すべての鼠径ヘルニアを完全に予防することはできませんが、リスクを減らすことはできます。具体的には、便秘を予防すること、慢性のせきがある場合はその原因を治療すること、重い物を安全に持ち上げる方法を実践すること、適正体重を維持することなどが役立ちます。
検診プログラム
鼠径ヘルニアは一般的な健康診断の項目には含まれていませんが、気になる症状があればいつでも医療機関で相談できます。特に、男性で高齢の方や、次のような症状がある方は、定期的な診察をおすすめします。
合併症
治療しない場合
- ヘルニアが大きくなり、痛みが強くなることがある。
- 飛び出した部分が戻らなくなる(嵌頓)。
- 飛び出した腸などの組織の血流が悪くなり、壊死(組織が死ぬこと)を起こす可能性がある(絞扼)。
- 絞扼は緊急手術が必要な状態で、命に関わることもある。
長期的な見通し
鼠径ヘルニアは、適切な治療を行えば、ほとんどの場合、予後は良好です。手術を受ければ、多くの人は日常生活に問題なく戻れます。早期に発見し、適切なタイミングで治療を受けることが、合併症を防ぐ鍵です。怖がらせることなく、前向きに治療に取り組んでください。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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