起立性頻脈症候群(POTS)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
起立性頻脈症候群(POTS)は、立ち上がったり体を起こしたりしたときに、心拍数(心臓の拍動の数)が異常に増えてしまう病気です。その結果、めまいや立ちくらみ、動悸、強いだるさなどが現れます。自律神経(体を自動的に調整する神経)の乱れが関係していると考えられています。
重要な事実
- 立ち上がると心拍数が急に増え、症状が出るのが特徴です。
- 主に10代から30代の女性に多く見られます。
- 頭痛や疲れやすさ、集中力の低下なども伴うことがあります。
- 適切な生活習慣の工夫と治療で、症状は改善できることが多いです。
正確な患者数は分かっていませんが、海外では100人に1人から3人程度という報告があります。日本でも決して珍しい病気ではなく、近年は医師の間でも知られるようになってきました。
思春期や若い成人、特に女性に多く見られます。また、ウイルス感染症、けが、手術、強いストレスなどをきっかけに発症することもあります。
症状
- 意識を失い、呼びかけに反応しない
- 激しい胸の痛みがある
- 息ができないほど苦しい
- けいれんが続く
- 片方の手足が動かない、言葉が話しにくい
- ⚠立っているときに何度も倒れる、けがをする
- ⚠水分をほとんど取れず、尿が極端に少ない
- ⚠強い頭痛やおう吐が続く
- ⚠日常生活が送れないほど症状が悪化した
- ⚠自分で車の運転ができるか分からないほどの強いめまいがある
一般的な症状
- 立ち上がったときにめまいや立ちくらみがする
- 動悸(心臓がドキドキする)がする
- 体がだるく、疲れやすい
- 頭がぼんやりする(ブレインフォグ)
- 頭痛がする
- 吐き気や胃の不調がある
- 立ち続けると気分が悪くなる
- 手足が冷たい
- 眠りが浅い
子供の症状
- 朝起きられず、学校に遅れたり行けなくなったりする
- 体育の時間や朝礼で立っていると気分が悪くなる
- 腹痛や吐き気を訴える
- 集中力が続かず、授業中にぼんやりする
- イライラしやすくなる
- めまいで立ちくらみがよくある
高齢者の症状
- 立ったり歩いたりするとふらつく
- めまいで転びやすくなる
- 活動量が減り、体力が落ちる
- 心臓の病気と間違われるような動悸や息切れを感じる
- 疲労感が続く
- 水分不足になりやすい
原因
主な原因
- 自律神経(心拍や血圧を自動的に調節する神経)の働きが乱れることで、立ち上がったときに血管が十分に収縮せず、血液が下半身にたまりやすくなる
- ウイルス感染症やけが、手術など体への強い負担をきっかけに発症することがある
- 遺伝的な体質が関係する可能性があるが、まだはっきりしていない
リスク要因
- 女性であること
- 10代から30代の年齢
- 家族に同じような症状の人がいる
- 緊張やストレスを抱えている
- 感染症の後に十分に休まないまま無理をした
- パソコンやスマートフォンの使いすぎなどで運動不足になっている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識を失ったことがある
- けがをしてしまうほど転倒した
- 症状が急に悪化して、食事や水分を取ることも難しい
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみや動悸が頻繁にあり、日常生活に支障をきたしている
- 学校や仕事を休んだり、早退したりすることが増えた
- 症状について心配になり、一度きちんと調べたい
診断
医師があなたの症状や経過について詳しく聞き、心拍数と血圧を、寝た状態と立った状態の両方で測ります。診断には時間がかかることがあり、他の病気を除外するための検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 起立試験(寝た状態と立った状態で心拍数と血圧を測定する)
- 心電図(心臓の電気的な動きを調べる)
- 血液検査(貧血や甲状腺の病気などがないかを調べる)
- 自律神経機能検査(自律神経の反応を詳しく調べる検査)
- ホルター心電図(24時間、心拍を記録する検査)
診察で予想されること
診断のために複数回通院する場合もあります。医師はあなたの症状をよく聞き、必要に応じて専門医(循環器内科や小児科、脳神経内科など)を紹介することもあります。
治療
POTSの治療は、症状を和らげるための生活習慣の改善が中心です。薬による治療は、症状や体の状態に合わせて医師が計画的に行います。自分だけで判断せず、必ず医師の指示を守ってください。
自宅でのセルフケア
- 水分を十分に取る(特に朝や入浴の前後にこまめに飲む)
- 塩分の取り方について医師と相談する(自己判断で増やさない)
- 急に立ち上がらず、ゆっくり動作する
- 立ち続ける時間を短くし、座って休む
- 締め付けの強い下着やストッキングを使う場合は医師に相談する
- 睡眠をしっかり取り、疲れをためない
- 医師と相談した上で、無理のない範囲で運動を続ける
医療治療
医師は、心拍数を調整する薬や、血管を収縮させて血液の戻りを助ける薬などを、症状に合わせて選ぶことがあります。薬の種類や量は人によって違うため、医師との対話を大切にしながら進めます。市販の薬やサプリメントを自己判断で使わないでください。
手術が検討される場合
POTSに対して手術が必要になることは通常ありません。
この病気と共に生きる
症状が出やすい時間帯や場面を把握し、そのときはゆっくり動いたり、座ったりするなど、自分のペースを作ることが大切です。学校や職場では、症状について伝え、理解を得ながら休憩を取り入れる工夫をしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 朝は布団の上でゆっくり体を起こしてから立ち上がる
- こまめに水分を取る習慣をつける
- 長時間の立ちっぱなしや入浴を避ける
- 暑い場所や混雑した場所では無理をしない
- 寝る前にスマートフォンを見すぎない
- ストレスをため込まないように、リラックスする時間を作る
食事と運動
食事は1日3回、栄養のバランスが取れたものを規則正しく食べましょう。塩分は医師の指示がある場合にだけ調整します。運動は、寝たままできる軽い筋トレや、座って行う運動から始め、医師や理学療法士と相談しながら少しずつ続けると、症状の改善に役立つことがあります。
精神的健康と心の健康
症状が続くと、「また具合が悪くなるのでは」という不安や、周りの人に理解してもらえない寂しさを感じることがあります。気分の落ち込みが強い場合や、不安で眠れない場合は、一人で抱え込まずに医師や看護師、学校・職場の相談窓口に話しましょう。心のサポートは治療の一部です。
予防
POTSを完全に予防する方法はまだ分かっていません。しかし、普段からバランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスをためないことで、症状の発現を抑えられる可能性があります。また、感染症にかかった後は、無理をせず十分に休養することも大切です。
合併症
治療しない場合
- 日常生活の活動量が減り、体力や筋力が低下する
- 学校や仕事を休みがちになり、社会生活に支障が出る
- 転倒による打撲や骨折のリスクが高まる
- うつ状態や不安障害を併発することがある
長期的な見通し
POTSは、多くの人が適切な生活習慣の改善と治療によって症状の改善を実感しています。特に、思春期に発症した場合は、成長とともに自然に良くなることも少なくありません。完全に治る人もいれば、症状が続く人もいますが、うまく付き合う方法を見つけながら前向きに生活することができます。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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