前十字靭帯(ACL)損傷・断裂
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)は、膝の中にあって太ももの骨とすねの骨をつなぎ、膝が前後にずれないように支える役割をしています。この靭帯が強く引っ張られて切れたり、部分的に傷ついたりすることをACL損傷・断裂といいます。
重要な事実
- 膝の安定に重要な靭帯で、スポーツ中の急な方向転換や着地で傷つきやすい
- 完全に切れても、必ず手術が必要とは限らない
- リハビリ(理学療法)が回復に大きく関わる
- 治療は年齢やスポーツへの復帰希望などを考慮して決める
スポーツをする人ではよく見られるけがのひとつです。日本でもサッカーやバスケットボール、スキーなどで多く発生しています。
10代から30代のスポーツ愛好家に多く、特に女性は男性より発生しやすいとされています。ただし、年齢や運動の状況を問わず、誰でも起こり得ます。
症状
- 膝が明らかに変形している
- 足の指が動かせない、感覚がなくなった
- 足の色が青白い、または冷たい
- 転落や交通事故など大きな外傷のあとに膝が痛み、歩けない
- ⚠膝が腫れて激しい痛みがあり、どうしても体重をかけられない
- ⚠膝がロックしたように動かず、曲げ伸ばしができない
- ⚠何度も膝が崩れて転んでしまう
- ⚠膝を傷めてから時間がたっても、腫れや痛みがひどくなる一方である
一般的な症状
- 怪我をした瞬間に「ポン」と音がしたり、膝の中で何かが切れる感じがする
- 膝の強い痛みと、数時間以内に腫れが出る
- 膝に力が入らず、がくっとしてしまう不安定感がある
- 体重をかけると痛くて歩けない、または歩きにくい
- 膝を曲げ伸ばしすると痛みが増す
子供の症状
- 子どもは症状をうまく言葉にできないことがあるため、膝をかばって歩く、いつもより動かないなどの変化に注意する
- 成長期の骨(成長軟骨)にも影響があることがあるため、小児の膝の怪我は必ず医師の診察を受けることが大切
高齢者の症状
- 腫れや痛みが若い人より強く出ないことがある
- 膝に水がたまる、動かすときに違和感がある、階段の上り下りで不安定になるなどの症状が目立つことがある
- もともと変形性膝関節症などがある場合は、症状が複雑に重なることがある
原因
主な原因
- 走っているときに急に止まる、または急に方向を変える
- ジャンプの着地で膝がねじれる、または膝が伸びすぎる
- スポーツ中の接触によって膝に直接強い力が加わる
- 無理な姿勢で膝をひねる
リスク要因
- サッカー、バスケットボール、スキー、テニスなどひねりや切り返しの多いスポーツ
- 女性(性別により筋肉の付き方やホルモンの影響があるとされる)
- 過去に膝の怪我をしたことがある
- 太ももやお尻の筋力が弱い、バランス能力が低い
- 準備運動(ウォームアップ)を十分に行わない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 膝が腫れて痛みが強く、歩けない
- 膝がロックして曲げ伸ばしできない
- 足のしびれや冷感、色の変化がある
- 大きな外傷のあとに膝が不安定で立てない
定期受診を予約すべき場合:
- 痛みや腫れはあるが我慢できる範囲で、日常生活には何とか支障がない
- 膝の不安定感や違和感が続く
- スポーツに復帰したいが、膝に問題を抱えている
- ケガのあとしばらくたっても症状が改善しない
診断
医師が問診で受傷の状況を確認し、膝の動きやぐらつきを診察します。必要に応じて画像検査を組み合わせて、靭帯の損傷の程度や、ほかの部位(半月板や軟骨など)の損傷がないかを調べます。
行われる可能性のある検査
- 身体診察(引き出しテストやラックマンテストなど、膝の安定性を確かめる検査)
- レントゲン検査(骨折の有無を確認)
- MRI検査(靭帯や半月板、軟骨の状態を詳しく確認)
- 場合によっては超音波(エコー)検査
診察で予想されること
診察では、痛みのある膝を動かしたり、力をかけたりすることがありますが、無理のない範囲で行われます。MRIは痛みを伴わず、横向きになって数分間撮影する検査です。
治療
治療は、靭帯の損傷程度、年齢、普段の活動やスポーツレベルによって異なります。完全に断裂していても、リハビリを中心とした保存的治療で安定を取り戻せる場合があります。
自宅でのセルフケア
- 安静とアイシング: 急性期は炎症を抑えるために患部を冷やし、動かしすぎない
- 圧迫と挙上: 弾性包帯などで腫れを抑え、足を心臓より高く上げて休む
- 松葉杖や装具の使用: 体重をかけず、膝を保護する
- 痛みの範囲で膝や足首を軽く動かし、関節が固くなるのを防ぐ
- 医師や理学療法士の指示に従ったリハビリを継続する
医療治療
痛みや腫れを抑えるために、炎症を抑える飲み薬や外用薬が処方されることがあります。また、関節の腫れをとるための注射や、装具を用いた治療も検討されます。リハビリテーションでは、太ももやお尻の筋力強化、バランス訓練、膝の可動域を広げる運動などを行い、膝の機能回復を目指します。
手術が検討される場合
靭帯が完全に切れて強い不安定感が残る場合、若いアスリートでスポーツ復帰を強く望む場合などには、靭帯再建術という手術が検討されます。手術をするかどうかは、年齢や日常生活の内容をふまえ、医師と十分に話し合って決めることが重要です。
この病気と共に生きる
痛みや腫れが落ち着けば、階段や歩行など日常生活の動作は少しずつ行えますが、急なひねりやジャンプなどの負担のかかる動きは医師の許可が出るまで控えましょう。膝に負担をかけない動き方を意識することが回復に役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 膝に負担がかかるくしゃみやしゃがみ込みをするときは、物につかまる
- 家の中や外の段差をなくし、つまずきを防ぐ
- 安定した靴を選び、滑りにくい床を心がける
- 無理をせず、痛みがあるときは休息を優先する
食事と運動
バランスのよい食事と適正体重を保つことで、膝への負担を減らせます。運動は、水泳や自転車など膝にやさしいものから始め、医師や理学療法士の指導を受けながら、筋力や可動域に合わせて負荷を上げていくことが安全です。
精神的健康と心の健康
けがでスポーツを休まなければならない期間や、なかなか治らない痛みは、気分の落ち込みやストレスの原因になることがあります。無理をせず、焦らずに回復を目指すことが大切です。気分がつらいときは、家族や友人、医療者に相談して支えを求めましょう。
予防
すべてのACL断裂を予防することはできませんが、リスクを減らすことは可能です。特に、太ももやお尻の筋力トレーニング、バランス能力の強化、ジャンプの着地姿勢の改善などが有効とされています。スポーツ前のウォームアップとスポーツ後のクールダウンも習慣にしましょう。
ワクチン
ACL断裂を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
ACL断裂のための特定の定期検診はありませんが、スポーツ前のメディカルチェックや体力測定などで、けがの危険性を早期に評価することができます。
合併症
治療しない場合
- 膝の不安定感が続き、日常生活やスポーツに支障が出る
- 半月板や軟骨を傷める二次的なけがを起こしやすくなる
- 将来、変形性膝関節症になるリスクが高まることがある
長期的な見通し
適切な治療とリハビリを続ければ、多くの人がスポーツを含む元の活動レベルに戻ることができます。回復期間は個人差がありますが、焦らず、医師や理学療法士と一緒に自分のペースで頑張っていくことが大切です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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