尿崩症(にょうほうしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
尿崩症(にょうほうしょう)は、体の中で水分のバランスを整える「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」の働きに問題があるために、大量の薄い尿が出て、強いのどの渇きを感じる病気です。糖尿病とはまったく別の病気で、血糖値は正常です。
重要な事実
- 糖尿病とは別の病気で、血糖値には関係ありません。
- のどが渇いて大量に水を飲み、尿の量も多くなります。
- 原因やタイプによって治療法が異なりますが、適切な管理で普通の生活が可能です。
まれな病気で、一般的な診療ではあまり出会いません。
どの年齢でも起こる可能性があります。中枢性尿崩症は小児や若い成人に多い傾向があり、腎性尿崩症は成人に多く見られます。性別による大きな差はありません。
症状
- 意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない(すぐに119番へ連絡)
- けいれんが起きる(すぐに119番へ連絡)
- 極度の脱水症状(唇や口の中が乾ききる、皮膚をつまんでも元に戻らない)
- ⚠発熱、嘔吐、下痢があり、水分が取れない
- ⚠急に体重が減った
- ⚠めまい、立っていられない、ぐったりする
一般的な症状
- 尿の量が異常に多くなる(1日3リットル以上、ひどいときは10リットル以上)
- 尿の色がほとんど無色に近い
- 強いのどの渇きと、水を大量に飲む
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 皮膚が乾燥しやすい
子供の症状
- おねしょが続く、または夜中に何度もトイレに起きる
- 機嫌が悪く、ぐずることが多い
- 食欲がなく、体重が増えない
- 原因不明の発熱や嘔吐
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくいため、脱水に気づきにくい
- 尿量が多いのに水分を取らないと、深刻な脱水を起こすことがある
- めまいや立ちくらみ、意識の混乱などの症状にも注意が必要
原因
主な原因
- 中枢性尿崩症:脳の視床下部や下垂体に障害があり、抗利尿ホルモンが十分に分泌されません。原因には、頭部外傷、脳腫瘍、脳の手術、感染症、遺伝子の異常などがあります。
- 腎性尿崩症:腎臓は正常に作られているのに、抗利尿ホルモンに反応しません。原因には、遺伝的なもの、リチウムなどの薬の副作用、慢性腎臓病、高カルシウム血症などがあります。
- 妊娠性尿崩症:妊娠中に胎盤から出る酵素がホルモンを分解してしまうために起こります。出産後に改善することがほとんどです。
リスク要因
- 脳の手術や頭部外傷の既往がある
- 脳腫瘍や、脳への放射線治療を受けたことがある
- 特定の精神疾患の治療薬(リチウム)を使っている
- 慢性腎臓病や電解質異常を抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい頭痛や視力の異常がある
- 吐き気や嘔吐が続く
- 意識がおかしい、またはけいれんが起きた
定期受診を予約すべき場合:
- のどの渇きと尿の量の多さが続く
- 夜中に何度もトイレに起きて眠れない
- 子どもがおねしょを続ける、または発達に心配がある
診断
まず問診と身体診察を行い、血液検査と尿検査で尿の濃さや電解質の状態を調べます。原因を特定するために、水分制限試験や頭部MRI検査を行うこともあります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(尿の量、濃度、成分)
- 血液検査(電解質、腎機能、ホルモンの値)
- 水分制限試験(一定時間水分を制限し、尿の濃縮ができるか調べる検査)
- ホルモン補充試験(不足するホルモンを補充し、尿量が減るか確認する検査)
- 頭部MRI(脳の状態を確認する検査)
診察で予想されること
診断までに数週間かかることがあります。検査は安全で、多くの場合外来で行われます。結果をもとに、あなたに合った治療方針が決まります。
治療
治療の目的は、脱水を防ぎ、症状を和らげて、生活の質を保つことです。原因が治療できる病気(脳腫瘍など)の場合には、その治療が先に行われます。
自宅でのセルフケア
- のどが渇いたら、すぐに水分を補給する(医療機関の指示に従う)
- 外出時には水やスポーツドリンクを持ち歩く
- 体温が上がる環境を避け、脱水になりやすい場面に注意する
- 体重や尿量の変化を記録し、医療機関に報告する
医療治療
薬による治療では、中枢性尿崩症には不足している抗利尿ホルモンの働きを補う薬、腎性尿崩症には尿の量を減らす薬などが使われます。いずれも医師があなたの状態に合わせて処方します。薬の種類や量は自己判断で変えずに、医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
原因が脳腫瘍など外科的な治療が必要な病気の場合には、手術が検討されます。ただし、手術が必要かどうかは、専門医が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
尿崩症は、多くの場合、日常生活の中で水分補給と薬をきちんと続けることで安定します。自分の体の変化に気づきやすいように、尿量と飲水量を把握しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 水筒やペットボトルを持ち歩き、いつでも水分を取れるようにする
- 長い移動や旅行では、トイレの場所と緊急時の連絡先を確認しておく
- 激しい運動や炎天下での作業は、こまめに休憩をとる
- 寝る前に飲みすぎると夜間頻尿が増えるため、調整が必要な場合があります(医師に相談しながら)
食事と運動
特別な食事制限はありませんが、塩分の取りすぎは腎性尿崩症で尿量を増やすことがあるため、できるだけ控えめにしましょう。運動中は水分補給をこまめに行い、スポーツドリンクの飲み過ぎには注意してください。
精神的健康と心の健康
頻尿やのどの渇きは、仕事や睡眠の妨げになったり、外出が不安になったりすることがあります。そのような場合は、遠慮なく医師や看護師、家族に相談してください。気分の落ち込みを感じるなら、それも伝えましょう。
予防
多くは予防できません。しかし、頭部外傷を防ぐ、リチウムなどを使う際は定期的に腎機能をチェックする、高血圧や糖尿病などの基礎疾患をきちんと治療することで、一部の尿崩症は予防またはリスクを減らせる可能性があります。厚生労働省も、日常生活での適切な水分補給を推奨しています。
合併症
治療しない場合
- 脱水症状(口の渇き、尿量減少、倦怠感)
- 高ナトリウム血症(血液中の塩分が高くなりすぎる)による神経症状(意識障害など)
- 長期にわたる多尿による腎機能の低下
長期的な見通し
尿崩症は、原因が明確なものでは、その治療によって改善する可能性があります。また、治療を続ければ、多くの人が学校や仕事を続けながら、普通に近い生活を送ることができます。完治までいかなくても、症状をうまくコントロールできることが目標です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。