MALS(正中弓状靱帯症候群)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
MALS(正中弓状靱帯症候群)は、おなかの上のほうにある「正中弓状靱帯(せいちゅうきゅうじょうじんたい)」というじん帯が、背中側にある「腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)」という大切な血管を圧迫することで起こる病気です。圧迫されることで血流が悪くなり、食後のおなかの痛みや体重減少などの症状があらわれることがあります。
重要な事実
- MALSはまれな病気ですが、適切な検査と治療によって症状が改善する可能性があります。
- 症状は食後や体勢によって変化することがあり、診断までに時間がかかることがあります。
- 治療には、生活習慣の工夫や薬、場合によっては手術が検討されることがあります。
MALSはまれな病気で、すべての人がかかるわけではありません。報告によって頻度は異なりますが、血管の圧迫自体は健康な人にも見られることがあり、症状が出るかどうかには個人差があります。
MALSはどの年代でも起こる可能性がありますが、比較的やせた若い女性に多く見られます。子どもやお年寄りにも起こることがありますが、症状のあらわれ方はそれぞれ異なります。
症状
- 急に激しいおなかの痛みが起きて、動けないほどつらい
- おなかが腫れて、触れるだけで痛む
- 吐血(血を吐く)や、便に血が混じる
- 意識がもうろうとする
- ⚠激しい痛みが続き、市販の痛み止めなどでも治まらない
- ⚠吐き気や下痢が続いて水分が取れない(脱水の心配)
- ⚠食事をまったく取れない状態が続く
一般的な症状
- 食後や空腹時におなかの上のほうが痛む(みぞおちの痛み)
- 吐き気や嘔吐(おうと)
- 体重が減る
- おなかが張る感じ
- 食べるのがつらくなる(食欲不振)
子供の症状
- ミルクや食事を上手に飲み込めない
- 食後にぐずる、泣く
- 体重が増えにくい(発育の遅れ)
高齢者の症状
- 食後の腹痛が続く
- 体重が減って体力が落ちる
- 食欲低下、ときに吐き気
原因
主な原因
- 正中弓状靱帯(腹部のじん帯)が腹腔動脈という血管を圧迫すること
- 圧迫によって血管の血流が悪くなるだけでなく、周囲の神経が刺激されることで痛みが起こる
- なぜこの圧迫が症状を引き起こすのかは、まだ完全には解明されていません
リスク要因
- やせ型である
- 比較的若い年齢(特に女性)
- 解剖学的に靱帯と血管の位置が近い
- 深く息を吸ったときに圧迫が強まる可能性がある(呼吸による影響)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 激しい腹痛があり、日常生活が送れない
- 吐血や血便がある
- 食事がまったく取れず、体重が急速に減っている
定期受診を予約すべき場合:
- 食後の腹痛や体重減少が数週間以上続く
- 慢性的に吐き気や腹部の違和感がある
- 症状が気になって日常の食事や生活に支障が出ている
診断
診断は、おなかの痛みのほかの原因(胃潰瘍や胆のうの病気など)を除外したうえで、血管の圧迫の状態を画像検査で確認して行われます。
行われる可能性のある検査
- 腹部超音波(エコー)検査:血流の速さや圧迫の様子を調べます
- CT検査:血管の構造をくわしく見られます
- MRI検査:血管や周囲の組織を詳細に確認できます
- 血管造影:造影剤を使った検査で、圧迫の程度を評価します
診察で予想されること
病院では、まず問診で症状のきっかけや経過を詳しく聞かれます。その後、医師の判断にしたがって検査が行われます。検査には数時間から数日かかることがありますが、痛みをともなう検査もあります。検査の目的や注意点は、医師や看護師が説明してくれます。不明な点は遠慮なく質問しましょう。
治療
MALSの治療は、症状の程度や年齢、全身の状態によって異なります。まずは内服薬や生活習慣の工夫で症状を和らげ、十分に効果がない場合に手術が検討されることがあります。
自宅でのセルフケア
- 食後すぐに横にならず、少し安静にして過ごす
- 一度にたくさん食べるのを避け、食事を少しずつに分ける
- 脂っこい料理や刺激の強い飲み物(アルコールなど)を控える
- 腹部を締め付ける服装や姿勢を避ける
医療治療
薬による治療では、症状に合わせて痛みを和らげる薬や消化管の動きを整える薬などが処方されることがあります。どの薬が適しているかは個人差が大きいため、必ず医師の処方に従ってください。
手術が検討される場合
薬や生活改善で症状が改善せず、体重減少や日常生活への影響が強い場合、外科的な治療(靱帯を切って血管の圧迫を解放する手術など)が考慮されることがあります。手術の適応や方法は専門の医師が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
MALSと診断された場合、症状と上手につきあいながら生活することが大切です。痛みの波に合わせて無理をせず、自分のペースで日々を過ごしましょう。定期的に医療機関でフォローしてもらい、症状の変化を伝えるようにしてください。
生活習慣のアドバイス
- 十分な休息と睡眠をとる
- ストレスをためない工夫をする(趣味、軽い運動、深呼吸など)
- 食事の記録をつけて、症状が出やすい食べ物や時間帯を見つける
- 体を冷やさないようにする
食事と運動
食事は、消化のよいものを温かい状態で、ゆっくり食べるようにしましょう。運動は、激しいものよりウォーキングなどの軽い運動がおすすめです。息を止めるような負荷のかかる運動は症状を悪化させる可能性があるため、医師に相談してください。
精神的健康と心の健康
慢性的な痛みや食事のつらさは、気分の落ち込みや不安につながることがあります。一人で悩まず、家族や友人、医療者に気持ちを話しましょう。心理的なサポートが必要な場合、医師に相談すれば適切な支援につなげてもらえます。
予防
MALSは先天性的な要因や体質が関係しており、確立された予防方法はありません。しかし、日ごろからバランスのよい食事や適切な体重を維持し、体調に変化があれば早めに医療機関を受診することで、重症化を防ぐことはできます。
合併症
治療しない場合
- 食べられないことによる体重減少や栄養不良
- 慢性的な痛みによる日常生活の質の低下
- まれに、血管の圧迫が長く続くと血流の障害が悪化する可能性
- 適切な診断が遅れて、他の病気と間違われることがある
長期的な見通し
MALSはまれな病気ですが、適切な評価と治療により、多くの人で症状が改善します。治療法は一人ひとりの状況に合わせて選ばれるため、あきらめずに医師と相談しながら進めていくことが大切です。つらい症状が続いていても、適切なサポートによって日常生活を取り戻すことができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。