薬物依存症(物質使用障害)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
薬物依存症(物質使用障害)は、薬物の使用を自分では止められなくなり、体や心、仕事、人間関係に問題が起きても使ってしまう状態です。これは「意志が弱いから」ではなく、脳の働きが変化して起こる病気です。適切な治療と支援で回復が可能です。
重要な事実
- 薬物依存症は、脳の報酬系(快感ややる気をつかさどる仕組み)が変化することで起こる病気です。
- 自分を責めずに、早めに医療や相談機関の助けを求めることが回復への第一歩です。
- 日本では、厚生労働省が依存症の予防・治療・家族支援のための対策をすすめています。
薬物依存症は、日本を含め世界中で多くの人がかかる可能性のある健康問題です。特別な人だけの病気ではなく、誰にでも起こりうる身近な問題です。
年齢や性別、職業、社会的立場に関係なく、10代から高齢者まで、幅広い人が影響を受ける可能性があります。家族や友人など周囲の人にも影響がおよびます。
症状
- 呼吸が浅い・遅い、または止まっている
- 呼びかけに反応せず、意識がない
- 激しいけいれんが続いている
- 胸の強い痛みや激しい動悸がある
- 体温がとても高い、または低い
- 「死にたい」と言うなど、自傷の危険が切迫している場合
- ⚠強い不安やパニック、幻覚(見えないものが見える・聞こえない声が聞こえる)がある
- ⚠激しい吐き気やおう吐、腹痛が続いている
- ⚠薬物を使いたい気持ちが強く、自分では止められそうにない
- ⚠家族が「いつもと違う」と強く心配している
一般的な症状
- 薬物を使いたいという強い欲求(渇望)がわき、それを抑えられない
- 使う量や回数が次第に増えていく
- 仕事や学業、家事など日常生活の役割を果たせなくなる
- 薬物を使っていないときに、いらいら、不安、不眠、吐き気などの離脱症状が出る
- 薬物を得ることに多くの時間・お金・エネルギーを費やす
- 実際に健康や人間関係に問題が出ているのに、薬物をやめられない
子供の症状
- 子どもや10代の場合は、急な成績の低下、交友関係の変化、身だしなみの乱れ、家のものやお金を持ち出すなどのサインが見られることがあります。
- 子どもの依存症は早めの気づきが大切です。まずは叱らずに話を聞き、医療機関や相談機関に連れて行くことがすすめられます。
高齢者の症状
- 高齢者は持病や服薬が重なると薬物の影響が出やすく、物忘れや混乱、判断力の低下など認知症に似た症状が見られることがあります。
- また、活動量が減り、家にこもりがちになるなど、うつ病と似た状態がみられることもあります。
原因
主な原因
- 脳の報酬系(快感ややる気を感じる仕組み)が薬物によって過剰に刺激され、変化すること
- 生まれつきの体質や遺伝的な要因
- 強いストレス、心的外傷(トラウマ)、虐待などのつらい体験
- 周囲に薬物をすすめられやすい環境や人間関係
- うつ病や不安症などの精神疾患があること
リスク要因
- 10代から20代などの若い時期に使用を始めること
- 家族や親しい人が薬物を使用していること
- 自分の問題を相談できる人や医療機関が近くにないこと
- 長時間労働や失業など、持続的なストレスを抱えていること
- 過去に依存症や精神疾患があること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 薬物を多量に使って倒れた場合(すぐに119番へ)
- 意識がもうろうとする、けいれんするなど命に関わる症状がある場合
- 自殺への危険が考えられる場合(一人にせず、119番または医療機関へ)
定期受診を予約すべき場合:
- 薬物の使用量を減らしたい、やめたいと思っているが自分では難しい
- 家族や友人の薬物使用が気になり、どうすればよいか相談したい
- 健康診断や学校・職場で薬物関連の指摘を受けた
- アルコールや市販薬・処方薬など、他の依存でも悩んでいる
診断
診断は、医師(精神科、心療内科、かかりつけ医など)による面談で行われます。薬物使用の種類・量・頻度、生活への影響、体とこころの状態を丁寧に聞き取ります。必要に応じて尿検査や血液検査を行い、診断の手がかりとします。大切なのは、あなたを責めることではなく、必要な支援を計画することです。
行われる可能性のある検査
- 医師との面談(あなたの状況を詳しく話すこと)
- スクリーニング質問票(あてはまる項目をチェックする用紙)
- 尿検査・血液検査(薬物の有無や体の状態の確認)
- 生活状況や家族の情報(必要に応じて家族からの聞き取り)
診察で予想されること
初めての診察では、使っている薬物の種類や使うきっかけ、生活への影響について質問されます。うそをつかず、正直に話すことが診断と治療に役立ちます。診察内容は守秘義務で守られます。診断までに数回の通院が必要なこともありますが、無理なく相談できるよう進められます。
治療
治療の目標は、あなた自身が望む「薬物を使わない生活」を取り戻すことです。依存症のタイプや重症度に応じて、外来治療、入院治療、専門施設でのリハビリテーション、自助グループなどが提案されます。単独ではなく、心理社会的支援(話し合い療法・カウンセリング・社会復帰の支援)を組み合わせて長期的に行うことが一般的です。
自宅でのセルフケア
- 自分に合った医療機関・相談機関を探し、助けを求める(自己判断で急にやめると体調が悪化することがあります)
- お薬を使ってしまった日は、次につながるよう医師に正直に伝える
- 薬物を使いたい衝動が起きたときの行動リストを作る(散歩、深呼吸、友人に電話など)
- 使用を誘う場所や人との距離を取り、自分の環境を整える
- 家族や信頼できる人に「今、回復に取り組んでいる」と伝え、サポートを得る
医療治療
治療には、認知行動療法などの心理療法、カウンセリング、集団療法、自助グループへの参加が含まれます。また、医師が依存症の治療を助ける薬を処方する場合がありますが、薬は必ず医師の指示に従って飲んでください。薬物の種類や状態に応じて、外来診療、入院治療、専門病棟や回復支援施設でのプログラムなどが組み合わせて行われます。
手術が検討される場合
薬物依存症そのものに対して手術は行いません。ただし、薬物使用による合併症(感染症や内臓の病気など)で手術が必要になる場合があります。その場合も、依存症の治療を並行して行いながら進めます。
この病気と共に生きる
回復は一歩ずつの積み重ねです。うまくいかない日があっても、再発を「失敗」にするのではなく「助けを求めるサイン」ととらえましょう。規則正しい生活、信頼できる人とのつながり、自分が自分を大切にする感覚が、回復を支えます。
生活習慣のアドバイス
- 同じ目標を持つ人たちの自助グループに参加する(各地で開催されています)
- ストレスがたまったら、カフェや自宅など安心できる場所で休む時間をつくる
- 深呼吸やストレッチなど、リラックスできる方法を一つ見つける
- 再発のリスクが高まる状況(きっかけ)を知り、事前の対策を立てる
- 孤独を感じたら、医療機関や相談電話に連絡する
食事と運動
バランスのよい食事と十分な水分をとることは、脳と体の回復を助けます。適度な運動(散歩や軽いジョギングなど)は、気分を安定させ、ストレスを遠ざける効果があります。無理のない範囲で、毎日少しずつ体を動かすことをすすめます。
精神的健康と心の健康
薬物依存症は、うつ病や不安症などの他の精神疾患を合併しやすい病気です。気分の落ち込み、不安、イライラが続く場合は、そのことも医師に相談してください。精神的な危機を感じたときは、一人で抱え込まないで、精神保健福祉センターなどの相談機関を利用してください。
予防
最も効果的な予防は、薬物に手を出さないことです。すでに使用している場合も、早めに支援を求めることで、依存症への悪化を防げます。学校教育や家庭での話し合い、職場のメンタルヘルス対策も、予防と早期発見に役立ちます。
検診プログラム
日本では、学校や職場の健康診断で、薬物やアルコールの依存に関する簡単なチェックが行われることがあります。不安がある場合は、医療機関や精神保健福祉センターにてスクリーニング(チェック)を受けることもできます。
合併症
治療しない場合
- 薬物の過剰摂取による急性中毒や死亡
- 注射針の共有によるHIVや肝炎などの感染症
- 心臓病、肝機能障害、脳卒中などの体の病気
- うつ病、不安症、幻覚などの精神症状の悪化
- 失職、経済的破綻、家庭の崩壊
- 自殺のリスクの増加
長期的な見通し
薬物依存症は治療可能な病気です。多くの人が、医療とサポートを受けながら、仕事や家庭を取り戻し、健康的な生活を送っています。回復には時間がかかりますが、再発があっても、そのたびに学び、また立ち上がることで着実に進んでいけます。希望を持ちましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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