大動脈解離(だいどうみゃく かいり)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
大動脈は、心臓から全身に血液を送る、体の中で最も太い血管です。大動脈解離(だいどうみゃくかいり)は、この血管の壁に傷ができて裂け、血液が壁の内側と外側の間に入り込んでしまう、とても危険な状態です。血管の壁が二重になるようなイメージで、そのままにしておくと血管が破れてしまうことがあります。
重要な事実
- 大動脈解離は、突然の激しい痛みで始まることが多い緊急の病気です。
- 放置すると血管が破れて命に関わるため、すぐに119番へ連絡が必要です。
- 高血圧や血管を弱くする遺伝性の病気が関係することがあります。
- 早期に適切な処置を受ければ、多くの人が救われる可能性があります。
大動脈解離は、日本ではそれほど多くない病気ですが、急に悪化すると重くなるため、注意が必要です。10万人あたり年間で数人が発症すると考えられています。
この病気は40〜70歳の男性に多く見られます。ただし、若い人や女性でも、家族に心臓や血管の病気がある場合や、高血圧の方は発症することがあります。
症状
- 突然の胸や背中の激しい痛み(引き裂かれるような痛み)
- 痛みとともに息ができない、呼吸が速い
- 意識を失う、または意識がもうろうとする
- 片側の手足が動かない、話しにくい(脳卒中のような症状)
- お腹の激しい痛み、腰や足の激しい痛み
- ⚠胸や背中の痛みが続く、または何度も繰り返す
- ⚠めまいやふらつきが続く、気分が悪い
- ⚠原因不明の疲労感や体調不良を感じる
一般的な症状
- 突然起こる、胸や背中の激しい痛み(「引き裂かれるような痛み」と表現されることがあります)
- 痛みが首やのど、あご、腕、腹部に移動する
- 息苦しさ
- 冷や汗、めまい、ふらつき
- 意識を失う(失神)
子供の症状
- 子どもでは大動脈解離は非常にまれですが、生まれつき血管が弱い病気がある場合は発症することがあります。
- 胸の痛みや腹痛、ぐったりする様子が見られたら、すぐに救急車を呼んでください。
高齢者の症状
- 高齢者では、胸の痛みを感じにくいことがあり、意識がぼんやりしたり、突然腰や背中が痛むだけで気づかないこともあります。
- 高血圧や動脈硬化(血管が硬くなりもろくなること)がある方は、いつもと違う強い痛みや体調変化に注意が必要です。
原因
主な原因
- 高血圧(血圧が高いと血管の壁に負担がかかり、裂けやすくなります)
- 遺伝性の病気(マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群など、血管の結合組織が弱くなる病気)
- 加齢による血管の劣化(動脈硬化)
- 交通事故などによる強い衝撃(外傷)
リスク要因
- 高血圧をコントロールできていない方
- 喫煙習慣
- 脂質異常症(悪玉コレステロールが多い)や糖尿病
- 大動脈解離を起こした家族がいる方
- 血管の炎症(大動脈炎)がある方
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の激しい胸や背中の痛みがあれば、ためらわずに119番へ連絡してください。
- 痛みとともに息苦しさや意識の低下がある場合も救急車を呼んでください。
定期受診を予約すべき場合:
- 胸や背中の痛みが続く、繰り返す場合は、速やかに内科や心臓血管科を受診してください。
- 高血圧や動脈硬化の治療で通院中の方は、定期的に医師の指示に従い、血圧を管理しましょう。
診断
病院では、医師が症状の問診と身体診察を行い、大動脈解離を疑ったらすぐに画像検査を行います。緊急の場合には、救急外来で迅速に対応されます。
行われる可能性のある検査
- CT検査(コンピューター断層撮影):体の中を詳しく画像にする検査で、血管の解離を確認する最も一般的な方法です。
- MRI検査(磁気共鳴画像):詳しい画像が得られますが、緊急時にはCTが優先されることが多いです。
- 心エコー検査:超音波で心臓や大動脈の状態を確認します。
- 血液検査:炎症や臓器の変化を調べるために行います。
診察で予想されること
診断がつくと、すぐに専門の医師による治療が始まります。状況によっては、心臓血管外科や循環器内科がある大きな病院へ転院して、集中的に治療を受けることになります。その際、家族への説明や入院の準備などが慌ただしくなることがありますが、医療スタッフがサポートしてくれます。
治療
大動脈解離の治療は、血管の状態や解離の場所、広がり、患者さんの全身状態によって異なります。命を守るための緊急手術が必要になる場合と、薬で血圧を下げて経過を観察しながら体を安静に保つ方法があります。
自宅でのセルフケア
- 治療後は、医師の指示を守り、血圧が高くならないように日常生活を整えましょう。
- 体重を適正に保つ、塩分を控えめにする、規則正しい生活を心がけましょう。
- タバコは必ずやめましょう。禁煙は治療後の再発を防ぐ重要な一つです。
- 激しい運動や力仕事は、医師に許可されるまでは避けてください。
医療治療
薬物治療では、血圧を適切な範囲に保つことで、解離が進むのを防ぎます。このとき使用する薬は医師が患者さんの状態に合わせて選びます。急性期には、静脈から薬を投与し、厳重な血圧管理と安静を行います。慢性期には、内服薬で血圧と心拍数をコントロールします。どの薬を使うかは医師が決めることであり、自己判断で止めたり変えたりしてはいけません。
手術が検討される場合
大動脈が切れて血液が外に漏れる危険がある場合、または心臓や脳、臓器に血液が届かなくなる危険がある場合には、緊急の手術が必要です。手術では、裂けた部分を人工血管に置き換えたり、血管内からステント(細い金属の筒)を入れて血管を補強する方法があります。どちらの方法が適しているかは、医師が状態を詳しく調べて決定します。
この病気と共に生きる
大動脈解離を経験した後は、生活を見直すことが再発予防につながります。無理をせず、自分の体調をこまめにチェックしましょう。定期的な通院は必ず継続し、血圧の変化や新しい痛みがないか注意してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を徹底しましょう。
- 飲酒はする場合でもほどほどにし、医師に相談してください。
- ストレスをためない工夫をしましょう。
- 十分な睡眠と休養をとり、疲れを感じたら休むことを優先しましょう。
- 入浴は熱すぎるお湯を避け、急に温度変化がないようにしましょう。
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、野菜や果物、魚などをバランスよく取りましょう。肥満を防ぐことも大切です。運動はウォーキングなどの軽い有酸素運動から始め、医師に相談しながら少しずつ行ってください。無理な筋トレや息をこらす運動は血圧を上げるため避けましょう。
精神的健康と心の健康
生死に関わる大きな病気を経験すると、不安や恐怖、気分の落ち込みを感じることがあります。これは自然な反応です。ただし、強い不安が続く場合は、医療者や心理の専門家に相談してください。まわりの人に気持ちを話すことも、心の負担を軽くする助けになります。家族や友人に頼ることも大切です。
予防
完全に予防することは難しいですが、高血圧をしっかり管理し、喫煙をやめることや動脈硬化を防ぐ生活習慣を続けることで、発症のリスクを大きく減らすことができます。特に、家族歴がある方や高血圧の方は、定期的な健康診断を受けましょう。
ワクチン
大動脈解離そのものを予防するワクチンはありませんが、インフルエンザや肺炎などの感染症にかかると血管に負担がかかるため、例年の予防接種を検討してください。具体的には主治医と相談しましょう。
検診プログラム
健康診断での血圧測定や、胸部X線検査、心電図などがきっかけで見つかることがあります。高血圧や遺伝性の疾患がある方は、医師に大動脈の検査を相談してみてもよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 大動脈の破裂(大量出血して命を落とす危険がある)
- 心臓への血液不足による心筋梗塞(心臓の筋肉が壊死すること)
- 脳への血液不足による脳梗塞(脳の血管が詰まること)
- 腹部の臓器や腎臓への血液不足による臓器障害
- 下肢への血流障害による足のしびれや麻痺
長期的な見通し
大動脈解離は非常に危険な病気ですが、医療の進歩により、救命率は向上しています。早期に適切な治療を受けて、その後の血圧管理や生活改善を続ければ、健康な日常生活を取り戻せる方も多くいます。あきらめず、専門医とともに治療を続けていきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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