腋窩・鎖骨下静脈血栓症(えきか・さこつかじょうみゃくけっせんしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
腋窩・鎖骨下静脈血栓症は、腕から心臓に血液を返す大きな静脈(鎖骨下静脈と腋窩静脈)の中に血の塊(血栓)ができる病気です。この静脈が詰まると、腕が腫れたり、痛みや重だるさを感じたりします。特に、重いものを持ち上げるなどの腕の激しい使い方がきっかけとなって起こることがあります。
重要な事実
- 腕の静脈にできる血栓は、脚にできる深部静脈血栓症よりもまれですが、治療せずに放置すると合併症を起こすことがあります。
- 若くて活動的な人に多く、特に水泳や野球、ウエイトリフティングなど腕をよく使うスポーツをする人が発症しやすいです。
- 早期に診断して治療すれば、多くの人は元の生活に戻ることができます。
脚の深部静脈血栓症と比べるとまれです。ただし、若い人に起こる血栓症としては比較的多いといわれています。
主に若い健康な人に起こります。スポーツ選手や肉体労働者など、腕を激しく使い、胸の出口(鎖骨と肋骨の間)で静脈が圧迫されやすい人が特にかかりやすいです。また、血液が固まりやすい体質の人や、腕にカテーテルを入れていた人にも起こることがあります。
症状
- 腕が突然、急性に腫れて激しい痛みがある
- 腕が真っ青になったり、冷たく感じたりする
- 突然の胸の痛み、呼吸困難、血の混じった咳がある(血栓が肺に飛んだ可能性)
- ⚠腕の腫れや痛みが続く場合
- ⚠腕を動かすと強い痛みがある
- ⚠肩や腕に原因不明のむくみが出現した場合
一般的な症状
- 腕や手の急なむくみ(腫れ)
- 腕や手の痛み、重だるさ、しびれ
- 皮膚が青紫色や赤っぽく見える
- 肩や胸の静脈が目立つ
子供の症状
- 腕の腫れや痛み(あまりはっきりしないこともあります)
- 少しの運動や動きでも腕が疲れる
- 腕を上げると痛がる
高齢者の症状
- 腕の腫れや痛みに加えて、基礎疾患や点滴用のチューブが原因になることもあります
- だるさや浮腫(むくみ)が突然現れる場合は注意が必要です
原因
主な原因
- 鎖骨と第一肋骨の間で静脈が圧迫される(胸郭出口症候群)
- 腕を繰り返し激しく動かす(投球、水泳、重量挙げなど)
- 腕や肩のけが、静脈へのカテーテル留置
- 血液が固まりやすい体質(血栓性素因)やがんなどの病気
リスク要因
- 体操、水泳、野球など、腕を頭上に挙げる競技
- 肉体労働や重いものを頻繁に持ち上げる仕事
- 脱水状態が続く
- 長期の腕の運動制限(固定後など)
- ピルなどのホルモン剤の使用や妊娠(一般的な血栓リスク上昇)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 腕が急に腫れて熱を持っている
- 痛みが強く、安静にしても改善しない
- 息切れや胸痛を伴う
定期受診を予約すべき場合:
- 腕のむくみや重だるさが数日間続く
- 運動後に症状が出やすい
- 肩や鎖骨のあたりに違和感がある
診断
医師が症状や最近の活動を詳しく聞き、身体診察を行ったうえで、画像検査で血流や血栓の有無を確かめます。必要に応じて血液検査も行われます。
行われる可能性のある検査
- 超音波(エコー)検査:腕や鎖骨の下の血流を確認する非侵襲的な検査です。
- 静脈造影検査:造影剤を血管に入れてX線で写し、血栓の位置を特定します(最近はCTやMRIで代替されることもあります)。
- 血液検査:Dダイマーや血液凝固能、遺伝性の血栓性素因を調べることもあります。
診察で予想されること
痛みの少ない検査です。エコーのときはジェルを塗って探触子を当てるだけで、15分ほどです。診察の前に、運動やケガの履歴、薬の使用状況を伝えましょう。
治療
治療の目的は、血栓を取り除くか小さくして、血流を回復させ、再発を防ぐことです。多くの場合は薬物療法から始まりますが、症状や原因に応じてカテーテルや手術が検討されることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、腕を心臓より高く上げて休む
- 激しい運動や重い物を持ち上げることを避ける
- 水分を十分に取り、脱水を防ぐ
- 圧迫されている静脈を悪化させないため、肩に負荷をかける動作を避ける
- 治療中は、指示された範囲で軽い指や手首の運動をする
医療治療
抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)による治療が基本です。症状が重い場合や血栓が多い場合は、カテーテルを使って血栓を溶かす薬を直接流し込む「カテーテル血栓溶解療法」が行われることもあります。血栓を取り除くカテーテル治療や、圧迫の原因となる肋骨・筋肉を解放する手術が選択される場合もあります。薬の種類や治療法は、医師が状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
鎖骨と肋骨の間で静脈が解剖学的に圧迫されている場合、圧迫を解くための手術(胸部出口症候群の手術)が必要になることがあります。また、血栓が再発しやすい場合も手術が検討されます。ただし、手術が必要かどうかは専門医が慎重に判断します。
この病気と共に生きる
治療後も定期的に診察を受け、腕の腫れや痛みの再発がないかチェックします。血栓が取れて血流が良くなっても、数か月は無理をせず、医師の了解を得てからスポーツや激しい作業に戻りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 腕の使いすぎを避け、十分に休憩を取る
- 水分補給をこまめにする
- 長時間同じ姿勢を続けず、適度に体を動かす
- 治療の段階に合わせて、医師や理学療法士の指導のもとでリハビリに取り組む
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、塩分を控えるとむくみが軽減されることがあります。運動は、血栓が安定した後は、血流を良くするために軽い有酸素運動から始めるのが良いでしょう。激しい負荷は医師に相談してからにしてください。
精神的健康と心の健康
突然の症状で不安になったり、再発を心配したりすることは自然なことです。深刻にとらえすぎず、治療の見通しについて医師とよく話し合い、必要な質問をしてください。
予防
すべての症例を予防できるわけではありませんが、腕を激しく使う人は準備運動をし、十分な休憩と水分補給を心がけることでリスクを下げられる可能性があります。また、原因になる体質や解剖学的な問題が見つかっている人は、医師と相談して対策を立てることができます。
合併症
治療しない場合
- 血栓がはがれて肺の血管に詰まる(肺塞栓症)と、呼吸困難など命に関わることがあります
- 慢性の腕の痛みやむくみが続く(血栓後症候群)
- 静脈の血流が良くなれず、腕の運動能力に影響が出る
長期的な見通し
早期に適切な治療を受ければ、多くの人は症状が改善し、数か月から1年ほどでスポーツなど元の活動に戻れることが多いです。再発率も低く、経過は良好ですが、個々の状況に応じて長い目でフォローアップしていくことが大切です。
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最終更新: 2026年7月31日
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