血液が固まりやすい状態(血栓性素因)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
血液には、けがをしたときに出血を止める働きがあります。この働きを「血液が固まる」といいます。しかし、体の中で必要ないのに血液が固まりやすい体質の人がいます。これを「血栓性素因(けっせんせいそいん)」または「過凝固状態(かぎょうこじょうたい)」と呼びます。血液の塊(血栓)が血管の中にできると、血流を妨げて心臓や肺、脳などに重大な問題を起こすことがあります。
重要な事実
- 血液が固まりやすくなる原因は、遺伝によるものと、後天的なものの両方があります。
- 多くの場合、実際に血栓ができるまで症状が現れないため、気づかないうちに進行することがあります。
- 治療や生活の中での工夫により、血栓ができるリスクを大きく減らせます。
血栓性素因は、まれな病気ではありませんが、すべての人に起こるわけでもありません。遺伝性のタイプは比較的少なく、がんや妊娠、長期安静などで一時的に血液が固まりやすくなる人は多くみられます。
乳幼児から高齢者まで、どの年齢でも起こり得ます。特に、深部静脈血栓症(足の深い静脈に血栓ができる病気)や肺塞栓症(肺の血管が血栓で詰まる病気)を経験した人、家族に血栓の人がいる人、がんや自己免疫疾患がある人、妊娠中の女性などが影響を受けやすいです。
症状
- 突然の激しい胸の痛み
- 急に息ができなくなる、ゼーゼーする
- 血の混じったせきが急に出る
- 意識がもうろうとする、倒れる
- 顔や手足が急に動かせない、しびれる
- ⚠片方の脚が急に腫れて痛む、熱を持っている
- ⚠ふくらはぎの強い痛みや圧痛がある
- ⚠理由のない息切れが続く
- ⚠めまいや立ちくらみが何度も起こる
一般的な症状
- 片方の足(特にふくらはぎ)が腫れる、痛む、熱っぽい
- 急に息苦しくなる、胸が痛む、心臓がドキドキする
- 原因がはっきりしない急な呼吸困難
- 血の混じったせきが出る
- めまいや失神を起こす
子供の症状
- 子どもでは血栓ができる場所が大人と少し違い、腕やあごの下などの血管に起こることがあります。
- 腕や脚が腫れぼったい、色が変わって見える、痛みを訴えることがあります。
- 乳幼児では、機嫌が悪い、元気がない、ミルクを飲まないなどのサインが見られることがあります。
高齢者の症状
- 高齢者では、足のむくみやだるさが加齢によるものと間違われやすいため、片側だけの腫れや痛みに注意が必要です。
- 急に息苦しくなった場合、心臓や肺の病気と区別がつきにくいことがあります。
- 認知症の症状に似た意識の変化(ぼんやりする、反応が遅い)が現れることもあります。
原因
主な原因
- 遺伝性の要因:プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、アンチトロンビン欠乏症、第V因子ライデン変異など
- 後天性の要因:がん、妊娠・出産、大きな手術、けが、長時間の安静・飛行機などの移動、抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫疾患
- 薬の影響:一部のホルモン薬(経口避妊薬、ホルモン補充療法など)は血栓のリスクを高めることがあります。
リスク要因
- 年齢が高い(特に60歳以上)
- 妊娠中または出産後
- がん治療中
- 長期の寝たきりや座りっぱなし
- 過去に血栓ができたことがある
- 家族に若くして血栓ができた人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片足が急に腫れて痛む場合
- 急な胸痛や呼吸困難がある場合
- 血の混じったせきが出る場合
定期受診を予約すべき場合:
- 家族に血栓性素因や原因不明の血栓の人がいる場合
- 何度も流産を繰り返している場合(抗リン脂質抗体症候群の可能性があります)
- これまで血栓ができたことがあり、再発の心配がある場合
- 手術や入院を予定していて、血栓のリスクについて確認したい場合
診断
医師があなたの症状、病歴、家族歴を詳しく聞き、必要な検査を行います。血液の固まりやすさを調べる血液検査や、血栓の有無を確認する画像検査などが行われます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査:血中の血小板や凝固に関わるたんぱく質(プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンなど)の量や働きを調べます。
- 遺伝子検査:特定の遺伝子変異を持っているかどうかを調べます。
- 超音波検査(エコー):脚や腕の静脈の血栓を探します。
- CT検査やMRI検査:肺や脳などの血管の状態を詳しく見ます。
診察で予想されること
はじめに一般的な診察と血液検査が行われ、次に必要な検査が追加される流れになります。血栓が見つかった場合は、その場で治療が始まります。血液検査の結果が出るまでに数日かかることもありますが、検査は体に負担の少ないものがほとんどです。
治療
治療の目的は、新たな血栓ができるのを防ぎ、既にできた血栓が大きくなったり、肺に飛んだりするのを防ぐことです。主な治療は、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)を使うことです。ただし、薬の種類や服用量は人それぞれ異なるため、必ず医師の指示に従ってください。
自宅でのセルフケア
- 処方された薬は、必ず決められた時間に、決められた量だけ飲みましょう。
- 長時間同じ姿勢で座ったり、立ったりしたままにならないようにしましょう。
- 飛行機や長距離バスに乗るときは、こまめに足を動かしたり、立ち上がって歩いたりしましょう。
- 弾性ストッキング(着圧ソックス)を医師にすすめられた場合は、指示どおりに着用しましょう。
- 十分な水分をとり、体が乾燥しないようにしましょう。
医療治療
治療には、血液を固まりにくくする抗凝固薬が中心に使われます。血栓が大きいときや重症の場合は、血栓を溶かす薬や、カテーテルを使って血栓を取り除く治療が行われることもあります。また、血液が固まりやすくなっている原因(がん、炎症、ホルモンの影響など)がある場合は、その原因への治療を並行して行います。どの治療を選ぶかは、あなたの状態や血栓の場所、重症度によって医師が決めます。
手術が検討される場合
手術や検査の予定がある場合は、必ず担当医に血栓性素因があることを伝えてください。手術中や手術後の血栓リスクを減らすため、一時的に抗凝固薬を使ったり、歩行を早めに始めたりするなどの対策が取られます。
この病気と共に生きる
日頃から、足の腫れや痛み、息苦しさなど、いつもと違うサインに注意しましょう。定期的に医師の診察を受け、血液を固まりやすくする薬を飲んでいる場合は、飲み忘れがないように工夫することが大切です。旅行や入院などで状況が変わるときは、事前に医師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙をしましょう。喫煙は血栓の大きなリスクになります。
- 体重を適正に保つよう心がけましょう。
- 適度な運動を続けましょう。ウォーキングなど、無理のない範囲で始めてみてください。
- 長く動かない状態を避け、2時間ごとに軽く体を動かす習慣をつけましょう。
- 医師に相談せずに、市販の薬(かぜ薬、鎮痛薬など)やサプリメントを自己判断で飲まないようにしましょう。
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、野菜や果物、良質なたんぱく質を十分にとりましょう。抗凝固薬を飲んでいる場合は、ビタミンKを多く含む食品(納豆、クロレラ、青汁など)を大量に食べるのを避けるよう医師から言われることがあります。具体的な注意点は医師や管理栄養士に確認してください。運動は、ウォーキングや水中歩行などの軽い有酸素運動を、痛みや息苦しさのない範囲で行うのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
いつ血栓ができるかという不安や、長期間の治療への負担を感じることがあるかもしれません。そうした気持ちは自然なものです。信頼できる家族や友人に話したり、医師や看護師に不安を伝えたりすることで、気持ちが楽になることがあります。
予防
血栓性素因そのものを完全に予防することはできませんが、血栓ができるリスクを減らすことはできます。早期に診断して、薬を正しく使うこと、生活習慣を整えること、リスクの高い場面(手術後、長距離移動など)で対策をとることが重要です。
検診プログラム
遺伝性の血栓性素因が見つかった場合、血縁者の方(親、兄弟姉妹、子ども)が同じ要因を持っている可能性があります。家族に原因不明の血栓や若い年齢での血栓が複数人いる場合は、医師に相談して検査を受けるかどうか検討してみてください。
合併症
治療しない場合
- 深部静脈血栓症が悪化して肺塞栓症を起こし、命にかかわることがあります。
- 血栓の後遺症として、脚の慢性的な腫れや痛み(血栓後症候群)が残ることがあります。
- 再発性の血栓が繰り返し起こり、血管を傷つけることがあります。
- 脳や心臓、腸などの血管に血栓ができて、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な病気を引き起こすことがあります。
長期的な見通し
血栓性素因と診断されても、適切な治療を続け、日常生活で注意を守れば、多くの人は合併症を防ぎ、健康な生活を送ることができます。治療は長く続くこともありますが、医師とともに自分に合った方法を続けていくことが大切です。不安なことがあるときは、必ず医療チームに相談してください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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