心臓がんについて知っておきたいこと
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心臓がんとは、心臓の組織から発生するがんのことです。心臓にできる腫瘍(しこり)自体はまれで、その多くはがんではなく良性の腫瘍です。心臓そのものから発生するがんは「原発性心臓がん」と呼ばれ、極めてまれな病気です。一方、ほかの臓器(肺や乳房など)のがんが血流やリンパの流れに乗って心臓に広がることもあり、これは「転移性心臓腫瘍」と呼ばれます。心臓がんの症状は、狭心症や心不全など、よくある心臓病の症状ととても似ているため、区別が難しいことがあります。
重要な事実
- 心臓にできる腫瘍はまれで、その多く(約75%)は良性(がんではない)です。
- 心臓そのものから発生するがん(原発性心臓がん)は、すべてのがんの中でも極めてまれな部類です。
- 心臓に腫瘍がみつかる場合、ほかのがんからの転移であることのほうが多くなります。
- 治療は手術、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせて行われ、がんの種類や進行度によって方針が異なります。
心臓がんは非常にまれながんです。心臓にできる腫瘍はまれで、そのうち四分の三は良性(がんではない)と報告されています。原発性の心臓がんは、がん全体の中でも特にまれな病気で、年間に診断される人はごくわずかです。
心臓がんはどの年齢でも発症しうる病気ですが、特に40歳から60歳代にやや多くみられます。がんの種類によって男女比は異なります。まれな病気のため、特定の生活習慣や職種との明確な関連はまだ十分にわかっていません。
症状
- 突然の激しい胸の痛みや圧迫感が続く場合
- 急に息ができなくなるほどの呼吸困難が起きた場合
- 突然、意識を失って倒れた場合(失神)
- 反応がない、呼吸がないなど心臓が止まった可能性がある場合——すぐに119番へ連絡してください
- ⚠数日以上続く、または悪化する胸の痛みや圧迫感
- ⚠安静にしていても続く動悸(ドキドキ)
- ⚠階段を上がるなど少し動いただけで強く息切れする場合
- ⚠原因がわからない強い疲労感やめまいが続く場合
一般的な症状
- 胸の痛みや圧迫感
- 息切れや呼吸のしづらさ
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
- 足や足首のむくみ
- 疲れやすさ・全身のだるさ
- めまいやふらつき
子供の症状
- 心臓にできる腫瘍は子どもにもまれにみられますが、多くは良性です。
- 呼吸が速い、授乳の力が弱い、体重が増えにくいなどの症状がみられることがあります。
- 顔色が悪い、唇が青っぽく見えるなどの変化に気づくこともあります。
高齢者の症状
- 高齢者では、心臓そのものから発生するがんよりも、ほかのがん(肺がんや乳がんなど)が心臓へ転移して腫瘍がみつかることが多くなります。
- 息切れやだるさなどが、加齢による変化や心不全と見分けにくいことがあります。
- 足のむくみや胸の圧迫感など、心不全に似た症状がゆっくり現れることがあります。
原因
主な原因
- 心臓がんの正確な原因はまだわかっていません。
- 原発性心臓がんは、心臓の筋肉や血管の内側を覆う細胞が何らかのきっかけでがん化することで発生すると考えられています。
- ほかのがん(肺がん、乳がん、腎臓がんなど)が血流やリンパの流れに乗って心臓に広がることがあります。
リスク要因
- 心臓がんに特化した明確な危険因子は、現在のところ確認されていません。
- 喫煙や過度の飲酒など、一般的ながんの危険因子とされるものを避けることが推奨されます。
- ほかのがんの治療歴がある方は、心臓を含めた転移の可能性を考える必要があります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みや圧迫感が続く、または悪化する場合
- 安静にしていても息切れがする場合
- 失神した、または意識を失いかけた場合(この場合はすぐに119番を呼んでください)
- 足や足首のむくみが急に悪化した場合
定期受診を予約すべき場合:
- 動悸や不整脈を繰り返す場合
- 原因がわからない疲労感が長く続く場合
- 健康診断の心電図や胸部X線で異常を指摘された場合
- 体重が急に増えたり減ったりした場合
診断
心臓がんの診断には、まず医師による問診と身体診察が行われます。その後、心臓の画像検査で腫瘍の有無や性質を詳しく調べます。確定診断には、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる検査(生検)が必要になることもあります。心臓の専門医とがんの専門医が連携して診断を進めます。
行われる可能性のある検査
- 心エコー検査:超音波を使って心臓の形や動き、腫瘍の位置を詳しく調べる検査です。
- 心電図検査:心臓の電気的な活動を記録し、不整脈や心筋への負担を調べる検査です。
- 胸部CT検査:X線を使って体の断面を撮影し、腫瘍の大きさや広がりを確認する検査です。
- 心臓MRI検査:磁気を使って心臓の筋肉や腫瘍の詳細な画像を得る検査です。
- 組織生検:細い針などで腫瘍の一部を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無や種類を調べる検査です。
診察で予想されること
心臓がんの診断には時間がかかることがあります。症状がほかの心臓病とよく似ているため、画像検査を繰り返して慎重に評価が行われます。多くの検査は痛みを伴わず、外来で受けることができます。結果の説明までに数日から数週間かかることもありますが、担当医が順を追ってわかりやすく説明してくれるので、わからないことは遠慮せずに質問しましょう。
治療
心臓がんの治療は、がんの種類や進行度、腫瘍の場所、患者さんの年齢や全身状態を総合的に考えて決められます。心臓外科医、がん治療の専門医(腫瘍内科医)、放射線治療医などによるチームが連携し、一人ひとりに合った治療方針を話し合って決めます。
自宅でのセルフケア
- 治療中は十分な休息と睡眠をとり、体調の変化を記録しておきましょう。
- 症状の変化や気になることは、我慢せずに医師や看護師に伝えましょう。
- 無理のない範囲で体を動かし、長期の安静による筋力低下を防ぎましょう。
- 食事はバランスよく、塩分のとりすぎに注意しましょう。
医療治療
心臓がんの治療には主に、手術による腫瘍の切除、抗がん剤治療、放射線治療などがあります。近年では、がんの特徴に合わせて効果を高める分子標的治療や免疫療法が検討されることもあります。どの治療を選ぶかは、がんの種類や進行度、心臓の機能によって医師が個別に判断します。また、心臓の働きを保つための薬(心不全の治療薬など)が併用されることもあります。薬の選択や服用については必ず医師の指示に従い、自分で判断して市販薬などを使用しないでください。
手術が検討される場合
手術は、腫瘍が心臓の一部に限られていて、完全に取り切れる可能性が高いと判断された場合に検討されます。心臓は全身に血液を送る重要な臓器のため、手術のリスクを慎重に評価したうえで、心臓外科医が安全に行えるかどうかを判断します。腫瘍が広がっていたり心臓の機能が弱っていたりする場合は、手術以外の治療が優先されることもあります。
この病気と共に生きる
心臓がんの治療中や治療後は、焦らずに自分のペースで日常生活を送ることが大切です。定期的な通院と検査を欠かさず、医師の指示に従いましょう。症状が落ち着いていれば、仕事や家事、軽い運動も可能な場合があります。体調は日によって変わるため、無理をせず、休みたいときはしっかり休むことが回復への近道です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がけましょう。
- アルコールは控えめにし、できれば医師に相談しましょう。
- 塩分の多い食品や加工食品を避け、栄養バランスのよい食事をとりましょう。
- 十分な睡眠と休息を確保しましょう。
- ストレスをため込まず、趣味やリラックスできる時間を持ちましょう。
食事と運動
治療中は心臓への負担を減らすため、塩分は控えめにし、野菜や果物、魚を中心としたバランスのよい食事を心がけましょう。運動は医師と相談したうえで、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を無理のない範囲で行うのがよいとされています。激しい運動や急に負荷のかかる活動は心臓に負担をかけるため、必ず医師の許可を得てから行ってください。
精神的健康と心の健康
がんと診断されることは、とてもつらく不安な体験です。悲しみや怒り、不安など、さまざまな感情が湧いてくるのは自然なことです。心臓がんはまれな病気のため、周囲に理解者がおらず孤独を感じることもあるかもしれません。そのような感情を一人で抱え込まず、家族や友人、医療スタッフに話してみましょう。必要に応じて、心療内科や精神科の医師、心理の専門家(カウンセラー)に相談することも大切です。
予防
心臓がんは非常にまれな病気であり、現時点では確立された予防法はありません。一般的ながんの予防に有効とされる禁煙、節酒、バランスのよい食事、適度な運動を心がけることが推奨されます。また、ほかのがんの治療歴がある方は、定期的なフォローアップを受けることで、転移を早期にみつけることにつながることがあります。
ワクチン
心臓がんに特化した予防ワクチンは現在ありません。
検診プログラム
心臓がんに特化した検診はありません。ただし、健康診断で心電図の異常や胸部X線の異常を指摘された場合は、放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 心臓のポンプ機能が低下し、心不全(心臓が全身に十分な血液を送れなくなる状態)を起こすことがあります。
- 腫瘍が心臓の弁や血管を圧迫し、血流が妨げられることがあります。
- 腫瘍の一部がはがれて血流に乗り、肺や脳などの血管を詰まらせることがあります(塞栓症)。
- 不整脈や心停止など、命にかかわる心臓のトラブルを起こすことがあります。
長期的な見通し
心臓がんはまれで難しい病気ですが、医療の進歩により治療の選択肢は確実に広がっています。早期にみつかり、手術で完全に切除できた場合は、よい経過が期待できることもあります。また、新しい抗がん剤治療や分子標的治療などの開発も進んでおり、一人ひとりの状態に合わせた治療が行われています。希望を持って、医療チームと一緒に治療に取り組むことが大切です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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