拡張型心筋症
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心臓の筋肉が弱って伸びた状態になり、全身に十分な血液を送り出しにくくなる病気です。心臓のポンプの働きが低下するため、疲れや息切れ、むくみなどの症状が現れます。
重要な事実
- 心臓の筋肉が薄くなり、心室(血液を送り出す部屋)が広がって収縮力が落ちる
- 原因がはっきりしないことも多いが、遺伝やウイルス感染、アルコールなどが関係することがある
- 進行すると心不全や不整脈(脈の乱れ)を起こす可能性がある
- 治療は薬と生活管理が中心で、重症の場合はペースメーカーや補助人工心臓などの治療が検討される
日本では約1万人から2万人に1人程度の割合で見られる、比較的まれな病気です。ただし、心不全の原因のひとつとして重要な位置を占めます。
どの年齢でも発症する可能性がありますが、特に20〜60歳の働き盛りの世代に多く、男性にやや多い傾向があります。家族内で発症することもあります。
症状
- 突然の激しい胸の痛み
- 呼吸ができなくなるほどの強い息切れ
- 意識を失い、呼びかけに反応しない
- 胸の痛みに加えて冷や汗や吐き気がある
- ⚠急にむくみが増えた
- ⚠1日で体重が急に増えた(1〜2kg以上)
- ⚠安静にしていても息苦しい
- ⚠動悸が長く続く、または頻繁に起こる
一般的な症状
- 疲れやすい
- 動悸を感じる
- 足やくるぶしのむくみ
- 失神(気を失う)
子供の症状
- 母乳やミルクを飲む力が弱い
- 体重があまり増えない
- 呼吸が速い
- 汗をよくかく
- 顔色が悪い
高齢者の症状
- 息切れやむくみなどの心不全症状が目立ちやすい
- 疲労感や食欲不振
- 活動量が減る
- ぼんやりするなど認知機能の低下に似た症状が現れることもある
原因
主な原因
- 遺伝的な要因(家族に同じ病気の人がいることがある)
- ウイルスや細菌の感染後の心筋障害
- 自己免疫の異常(体が自分自身を攻撃してしまう)
- 長期間の過度な飲酒
- 妊娠・出産をきっかけに発症することがある
- 原因が特定できない特発性のもの
リスク要因
- 家族に拡張型心筋症や心不全の人がいる
- 高血圧を抱えている
- 心筋炎(心筋の炎症)になった経験がある
- 長期間の多量飲酒
- 特定の抗がん剤などの治療歴がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが急に悪化した
- めまいや失神がある
- 脈が明らかに不規則で、動悸が続く
- 胸の痛みや圧迫感がある
定期受診を予約すべき場合:
- 疲れやすい、階段で息切れするなどの症状が続く
- 足のむくみがなかなか消えない
- 心臓の病気が家族にいる
診断
問診と聴診(心臓の音を聞くこと)を行い、心電図や心エコーなどの検査を組み合わせて診断します。心臓の大きさや動き、ほかの病気がないかなどを詳しく調べます。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気的な活動を調べる)
- 心エコー(超音波で心臓の動きや大きさを見る)
- 胸部X線(心臓の大きさや肺の状態を確認する)
- 血液検査(心臓に負担がかかっていることを示すBNPなどの値を測る)
- 心臓MRI(心筋の状態を詳しく見る)
- 運動負荷試験(運動時の症状と心機能を評価する)
- 遺伝子検査(家族性の可能性がある人で検討される)
診察で予想されること
受診当日に心電図や胸部X線が行われることが多く、結果に応じて心エコーや血液検査を追加します。診断には数日から数週間かかることがあります。
治療
拡張型心筋症の治療は、症状を和らげ、病気の進行を抑え、合併症を防ぐことを目的とします。薬物療法と生活改善が中心で、重症の場合は器械を使った治療や手術を検討します。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えた食事を心がける
- 飲酒は控える(できれば禁酒)
- 毎日決まった時間に体重を測る
- 血圧の記録をつける
- 体調に合わせて無理のない範囲で運動する
- 手洗い・うがいを徹底し、感染症を予防する
- 禁煙する
医療治療
薬物治療は、心臓への負担を減らす薬、心臓の働きを助ける薬、むくみを取る利尿薬、脈を整える薬などを、症状や重症度に合わせて組み合わせて使います。抗凝固薬なども含め、必ず医師の指示に従って服用してください。
手術が検討される場合
重症で薬の効果が十分でない場合は、心臓のリズムを整えるペースメーカー、心臓のポンプを助ける補助人工心臓、末期の場合には心臓移植が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
この病気と上手く付き合うには、定期的な通院と服薬が何より大切です。体調や体重の変化を記録し、疲れを感じたら休息をとるようにしてください。
生活習慣のアドバイス
- 運動は医師に相談してからメニューを決める
- 塩分制限と適正体重の維持を心がける
- アルコールは避け、どうしても飲みたい場合は医師に相談する
- ストレスをためず、十分な睡眠をとる
- 急な体重増加に注意し、記録する
- 家族に症状や緊急時の対処法を伝えておく
食事と運動
栄養バランスのよい食事を基本に、塩分を1日6g未満にするなど心不全に配慮した食事が勧められます。運動は医師の許可を得て、散歩などの有酸素運動を「会話ができる程度」の強さで行いましょう。激しい運動は避けてください。
精神的健康と心の健康
慢性の病気と向き合うことは、不安や気持ちの落ち込みにつながることがあります。自分を責めず、気持ちを家族や医療者に話すようにしてください。必要に応じて心理専門職の支援を受けることも治療の一部です。
予防
遺伝性など原因不明の場合は根本的な予防法はありませんが、過度な飲酒を控え、高血圧や感染症をきちんと管理することで発症を防げる場合があります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌の予防接種は、心不全の悪化や感染症の合併を防ぐために勧められます。接種の時期や可否については医師と相談してください。
検診プログラム
家族に拡張型心筋症や原因不明の心不全がいる場合、症状がなくても心エコーなどの検査を受けることが勧められることがあります。遺伝子検査を検討する場合は、遺伝カウンセリングも含めて医師と話し合います。
合併症
治療しない場合
- 心不全の悪化(全身に血液を送り届けられなくなる)
- 不整脈(心室頻拍・心室細動など、突然死につながる恐れのあるもの)
- 心臓内に血栓ができ、脳に飛んで脳梗塞を起こす
- 突然の心停止
長期的な見通し
完全に治すことは難しい病気ですが、薬物治療や生活管理により多くの人が穏やかに日常生活を送ることができます。治療の進歩により、重症の方でも補助人工心臓や心臓移植で長期生存が可能になっています。希望を持って治療に取り組むことが大切です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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