腸瘤(enterocele)とは|膣の膨らみ・排便の悩み
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
腸瘤(ちょうりゅう)は、小腸が通常の位置から下がり、膣(ちつ)の壁を押し出して、膣の中に柔らかい膨らみとして感じられる状態です。骨盤の中にある臓器を支えている骨盤底の筋肉や靭帯がゆるむことで起こる、骨盤臓器脱の一種です。
重要な事実
- 骨盤臓器脱の中でも、小腸が膣に落ち込むタイプが「腸瘤(enterocele)」です。
- 出産経験のある女性に多く見られますが、年齢とともに発症しやすくなります。
- 治療法には、骨盤底体操、ペッサリー、手術など多くの選択肢があります。まずは婦人科で相談しましょう。
骨盤臓器脱全体では女性の約2〜3割が一生のうちに経験するとされる一方、腸瘤だけに限ると、膀胱瘤や直腸瘤ほど多くはありません。骨盤臓器脱を指摘された方の一部に認められます。
特に出産を経験した中高年の女性に多くみられます。閉経後や重い物を繰り返し持ち上げる仕事をしている方、慢性的な便秘や肥満がある方に発症しやすい傾向があります。
症状
- 急に強い腹痛や吐き気、嘔吐、便が出ない、膨らんだ部分が急に大きく腫れて激しい痛みがある場合。これは腸が締め付けられる非常にまれな緊急事態です。すぐに119番で救急車を呼んでください。
- ⚠発熱を伴う腰痛や骨盤の痛みがある
- ⚠膨らみから出血がある
- ⚠突然、排尿や排便ができなくなった
一般的な症状
- 膣の中に何かが出てくるような膨らみや圧迫感を感じる
- 立った状態で骨盤の中に違和感や下腹部の重さを感じる
- 排便がスムーズにできず、指で膣の膨らみを押し上げないと便が出ない(用手補助)
- 腰や骨盤の痛み、性的な痛み
子供の症状
- 子どもにはほとんどみられません。もしお子さんに骨盤の不快感や脱出のような症状があれば、他の病気の可能性もあるため、小児科やかかりつけ医の診察を受けてください。
高齢者の症状
- 高齢女性では、閉経後の膣壁が薄くなり老化による筋力低下が重なるため、症状が目立ちやすくなります。
- 立ち上がったときや歩行時に膣から組織が脱出する感覚が強くなる、排便や排尿に時間がかかるといった症状がみられます。
- 認知機能の低下がある方は、きちんと伝えられないこともあるため、介護者が異変に気づいてあげることが大切です。
原因
主な原因
- 妊娠や出産で骨盤底の筋肉や結合組織がゆるみ、伸びてしまう
- 加齢や閉経でホルモンの影響により組織が弱くなる
- 慢性的な便秘や重いものを持ち上げるなど、腹部に長く力がかかる状態が続く
リスク要因
- 難産や吸引分娩、大きな赤ちゃんの出産
- 閉経後のエストロゲン低下
- 肥満や長引くせき(慢性咳嗽)
- 骨盤内の手術歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上記の救急症状に当てはまる場合は、すぐに救急医療機関へ(119番で救急車を呼ぶ)。
定期受診を予約すべき場合:
- 膣の違和感や膨らみ、排便困難などが気になる場合は、婦人科を受診しましょう。症状が軽いうちに相談すると、選択肢が広がります。
診断
婦人科の内診(診察)で、立った状態や力を入れた状態で膣の中を観察し、小腸の膨らみを確認します。超音波検査やMRIなどの画像検査で、どの臓器が下がっているかを詳しく調べることもあります。
行われる可能性のある検査
- 内診(膣診)
- 超音波検査(経膣・経腹)
- MRI検査
- 排便造影検査(便を出す様子をX線で観察する検査)
診察で予想されること
診察室では、症状の詳しい話を聞いた後、婦人科の内診台で診察を受けます。ふだんの症状を再現できるよう、診察の直前にトイレを済ませないなどの指示に従ってください。診察自体は数分で終わることがほとんどです。
治療
治療は、症状の重さと生活への影響を考慮して決めます。まずは骨盤底筋のトレーニングやペッサリーなどの非手術療法を試みるのが一般的です。症状が強い場合や生活に支障がある場合は手術が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 骨盤底筋体操(骨盤底を意識して力を入れる運動)を毎日続ける
- 排便のときに強くいきまない、慢性的な便秘を解消する
- 重い物を持ち上げる際はひざを曲げるなど、おなかに負担をかけない
医療治療
婦人科では、腟内に装着するペッサリー(支持リング)や、ホルモン補充療法などが検討されます。具体的な治療法はあなたの状態に合わせて医師が説明してくれます。
手術が検討される場合
日常生活に大きな支障があり、ほかの治療で十分な効果が得られない場合は、手術が検討されます。手術では、膣を通して腸を元の位置に戻し、骨盤底を補強します。手術に踏み切るかどうかは、年齢や今後の妊娠希望もふまえて、医師とよく話し合うことが大切です。
この病気と共に生きる
症状は「その日あらわに出るときもあれば、気にならないときもある」という波があり、長時間立ちっぱなしや便秘のときに悪化しがちです。からだを休めると楽になることが多いので、自分のリズムを大切にしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 1日数回、横になって骨盤への圧力を抜く時間を作る
- 毎食の食物繊維と水分を十分にとり、排便を軽くする
- 腹圧がかかる激しい運動や重い物の持ち上げは避ける
- 禁煙する(長引くせきによる腹圧上昇を予防するため)
食事と運動
食物繊維(野菜・果物・全粒穀物)と水分を意識的にとり、便秘を防ぎましょう。運動は、ウォーキングなどの下半身への圧迫が強い運動よりも、水泳やゆっくりした骨盤底体操がすすめられます。食後に急激にからだを動かすのは避けてください。
精神的健康と心の健康
デリケートな箇所の症状なので、誰にも相談できずに悩みを抱え込む方も少なくありません。恥ずかしい病気ではありません。一人で抱えず、専門医に話すことが、気持ちの軽さにもつながります。もし不安やうつ傾向が続くなら、心のケアの専門家にも相談してください。
予防
完全に予防することは難しいですが、発症リスクを下げたり進行を遅らせたりすることは可能です。妊娠中・産後に骨盤底筋体操を行うこと、慢性的な便秘や肥満を避けること、重いものを持ち上げる際に注意することが役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 骨盤底の弱りが進行し、膣の出口から小腸が完全に飛び出す重度の脱出となる
- 排便障害が続くことで痔や憩室などの排便関連のトラブルを引き起こす
- 稀ではあるが、脱出した腸が締め付けられ血行が悪くなる嵌頓(かんとん)という緊急事態を起こす
長期的な見通し
腸瘤は命にかかわる病気ではありません。多くの方が、骨盤底体操やペッサリーなどの治療で症状をうまくコントロールできます。治療を続けながら生活の工夫を行うことで、活動的な毎日を過ごすことが十分可能です。
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重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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