心臓病と妊娠
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
心臓病とは、心臓や血管の働きに問題がある状態のことです。妊娠すると心臓は赤ちゃんに血液を送るため、普段より多くの血液を送り出さなくてはならず、心臓への負担が大きくなります。心臓病を持つ女性が妊娠すると、その負担が原因で、母体や赤ちゃんにリスクが生じることがあります。
重要な事実
- 妊娠すると心臓の仕事量は約30~50%増えます。
- 心臓病があっても、妊娠前に医師と相談し、妊娠中も専門チームのフォローを受けることで、多くの場合、安全に妊娠・出産を目指せます。
- 妊娠中に初めて心臓病が見つかることもあります。
日本では、妊娠する年齢の女性の約100人に1~2人が何らかの心臓病を持っていると言われています。ただし、軽度のものが多く、妊娠中の注意が必要なケースは限られます。
妊娠を考えている女性や妊娠中の女性で、生まれつき心臓に疾患がある方、過去に心臓の手術を受けた方、妊娠中に血圧が高くなったり、動悸(どうき)・息切れなどの症状が出る方が対象です。
症状
- 胸の強い痛みや圧迫感が続く
- 急に息ができなくなる、苦しくなる
- 意識を失いそうになる、または失った
- 咳(せき)とともにピンク色の泡のような痰(たん)が出る
- そのまま横になっていられないほどの呼吸困難
- ⚠安静にしていても動悸や息切れがおさまらない
- ⚠動くと胸がドキドキし、めまいがする
- ⚠足や手が急にむくみ、体重も短期間で急に増えた
- ⚠血圧が高めで、頭痛や視界のくもりがある
一般的な症状
- 息切れ(階段や少し歩くと苦しい)
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 疲れやすい
- 足や足首のむくみ
- 胸の痛み、圧迫感
子供の症状
- この状態は妊娠中の母親のからだについてのものです。子どもには直接当てはまりません。もし妊娠中に赤ちゃんのことや出産後のことが心配な場合は、担当の医師に相談してください。
高齢者の症状
- この状態は妊娠中の女性についてのものです。高齢者の心臓病とは異なります。高齢者の心臓病については、かかりつけ医にご相談ください。
原因
主な原因
- 生まれつきの心臓病(先天性心疾患)
- 心筋の病気(心筋症)など、妊娠前に心臓が弱っている
- 不整脈(脈が乱れる)がある
- 妊娠中に起こった高血圧や妊娠高血圧症候群によって心臓に負担がかかる
- まれに、妊娠前の感染症が原因で心臓の弁が傷ついている(リウマチ性心疾患)
リスク要因
- 心臓病の家族歴がある
- 以前の妊娠で妊娠高血圧症候群になったことがある
- 妊娠前に心臓の手術を受けたことがある
- 妊娠する年齢がやや高い(35歳以上)
- たばこやアルコールを妊娠中に続けている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息切れが続く
- 動悸や胸の痛みが繰り返し起こる
- 足のむくみが急に悪くなり、体重が急に増えた
- めまいやふらつきがある
定期受診を予約すべき場合:
- 妊娠を考えている方、または妊娠中の方で心臓病がある場合は、産婦人科と循環器科の医師に定期的に相談してください。厚生労働省も妊娠前からの心臓病の相談を推奨しています。
診断
医師が問診(症状や妊娠前の体調の話を聞く)と聴診(心臓の音を聴く)を行ない、必要に応じて心臓の検査をすすめます。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気的な動きをみる検査)
- 心エコー(超音波で心臓の形や動きをみる検査)
- 胸部X線(胸の内部の写真を撮る検査)
- 血液検査(心臓の負担を示す値などを見る)
- 状態によっては、心臓MRIや運動負荷試験
診察で予想されること
妊娠中に心臓病が指摘された場合は、産婦人科と循環器科の医師が連携して、あなたに合った管理方針を立てます。赤ちゃんの成長も一緒に確認しながら進みます。
治療
治療の基本は、妊娠中に心臓への負担をできるだけ減らし、母体と赤ちゃんの安全を保つことです。多くの場合、薬物療法と生活習慣の見直しを行ないますが、必ず循環器科と産婦人科の医師が相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- 十分な休息をとり、無理をしない
- 塩分をひかえた食事を心がける
- 運動は医師から許可された範囲で行なう
- 体重を決められた範囲に保つ
- アルコールやたばこは避ける
- 心配な症状があれば、すぐに医療機関に連絡する
医療治療
妊娠中でも安全に使えるように選ばれた薬で、心臓の負担を減らしたり、血圧を調整したり、脈を整えたりします。薬の種類や量は、必ず医師があなたの状態に合わせて決めます。どの薬を使うか、理由や注意点を医師に確認しましょう。
手術が検討される場合
妊娠中に心臓の手術が必要になることはまれですが、胎児の命や母体の状態によっては、専門病院で緊急に処置が検討されることもあります。日ごろからかかりつけ医と相談し、いざというときの方針を共有しておきましょう。
この病気と共に生きる
妊娠中は、心臓と赤ちゃんの両方に気をつかう毎日になります。受診の予定を守り、体のサインを見逃さないようにしましょう。家事や仕事は『少し疲れたら休む』ことを基本に、周囲に助けを求めることも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 定期健診を受ける(必ず守る)
- 処方された薬を、指示どおりに飲む
- 毎日の体重と血圧を記録する
- 疲れをためないよう睡眠時間を確保する
- 体調の悪い日は安静にする
食事と運動
塩分を控えめにし、たんぱく質や野菜をバランスよくとりましょう。水分は医師にすすめられた量を目安に。運動は、ウォーキングなど医師にOKをもらった軽い運動を短時間で行ない、心臓に負担がかかるような強い運動は避けます。
精神的健康と心の健康
心臓病をもちながらの妊娠は、不安やストレスが大きいものです。しんどさをひとりで抱え込まず、パートナーや家族、友人に話してみましょう。気分が落ち込む、不安で眠れない、といった状態が続く場合は、担当医に伝えることが大切です。必要に応じて、精神保健の専門家につないでもらえます。もし今、命の危険を感じるほどのつらさや、自分を傷つけたい気持ちがある場合は、ためらわずに救急要請(119)や、地域の保健所、かかりつけ医に連絡してください。
予防
心臓病そのものを完全に予防できるわけではありませんが、妊娠する前からの計画的なケアで、妊娠中のリスクを大きく減らせます。心臓病がわかっている場合、必ず妊娠前に医師の診察を受け、『妊娠に耐えられる状態か』『どんな薬に変える必要があるか』を確認しましょう。
ワクチン
妊娠中に感染症にかかると心臓にも負担がかかることがあります。インフルエンザなどの予防接種は、医師と相談した上で受けるかどうか決めましょう。
検診プログラム
妊娠前や妊娠初期に行なう健康診断で、血圧や心電図をチェックすることで、見つかっている心臓病の状態を把握し、妊娠中の管理につなげます。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓の働きが低下して、息苦しさやむくみが強くなる状態)
- 妊娠高血圧症候群(お母さんの血圧が高くなり、赤ちゃんにも影響する可能性がある)
- 不整脈(脈が乱れ、動悸やめまいを起こす)
- 早産や赤ちゃんの低出生体重
- まれに、お母さんの生命にかかわる危険な状態もあり得る
長期的な見通し
心臓病があっても、妊娠専門のチーム(産婦人科医・循環器科医・助産師など)の管理をしっかり受けることで、ほとんどの方が無事に赤ちゃんを迎えています。不安なことをたくさん訊ね、納得しながら進めていけば、妊娠・出産はきっと安心して乗り越えられます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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