遺伝性非ポリポーシス大腸がん(リンチ症候群)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)は、親から子に伝わる遺伝子の変化によって、大腸がんになりやすくなる体質のことです。腸の中にポリープ(良性のいぼのようなもの)をあまり作らないのに、大腸がんのリスクが高まるのが特徴です。リンチ症候群とも呼ばれます。
重要な事実
- 大腸がんの原因となる遺伝子の変化が家系の中に受け継がれている病気です。
- 大腸のほかにも、子宮や胃など他のがんのリスクも高まることがあります。
- 定期的な検査を受けることで、がんを早期に発見したり、予防したりすることができます。
すべての大腸がんの中で、HNPCCが関係していると考えられるのはおよそ1〜2%程度で、まれな病気です。
男性にも女性にも見られます。親から遺伝子の変化を受け継いだ場合、生まれたときからリスクを持っていますが、がんができるのは多くの場合20代以降で、一般的な大腸がんよりも若い年齢で見つかることがあります。
症状
- 突然の強い腹痛が続く
- おなかが張って、便やガスがまったく出ない
- 大量の出血(下血)
- 激しい嘔吐が続く
- ⚠血便が見られた
- ⚠いつもと違う便が1週間以上続く
- ⚠原因不明の貧血を指摘された
一般的な症状
- 便に血が混じる(血便)
- 便秘と下痢を繰り返す
- 腹痛やおなかの張り
- 原因不明の体重減少
原因
主な原因
- DNA(遺伝情報)の修復を担う遺伝子の変化が原因です。この変化は、親から子どもに伝わります(常染色体顕性遺伝)。
- 代表的な遺伝子としてはMLH1、MSH2、MSH6、PMS2などがあり、身内に同じ遺伝子変化を持つ人がいる場合、受け継ぐ確率は50%です。
リスク要因
- 家族の中に40歳より若い年齢で大腸がんになった人がいる
- 同じ家系に複数の大腸がん患者がいる
- 子宮がんや卵巣がんなど、関連するがんの家族歴がある
- 自分自身が大腸がんや関連するがんにかかったことがある
受診の目安
診断
HNPCCは、詳しい家族歴の聞き取りと、がんになった組織の検査、そして遺伝子検査(血液や唾液で調べる)によって診断されます。
行われる可能性のある検査
- 家族歴の聞き取り(家系図を作る)
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- 腫瘍組織の免疫染色検査(MMR蛋白の有無を調べる)
- 遺伝子検査
診察で予想されること
診断には時間がかかることがあります。まずは消化器内科や遺伝子診療科などに相談してください。必要に応じて、遺伝カウンセラーが検査の意味や結果について説明します。
治療
HNPCCと診断された場合、一度に大きな治療が始まるわけではありません。最も大切なのは、定期的な検査でがんを早く見つけることと、がんができた場合はそのがんに対する治療を行うことです。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する
- 飲酒は控えめにする
- 定期的に運動する
- 暴飲暴食を避ける
医療治療
大腸がんが発生した場合の治療は、一般的な大腸がんと同じように、内視鏡で取り除いたり、手術でがんの部分を切除したりします。進行した場合には、抗がん剤治療などを検討することもありますが、具体的な薬の種類や量は担当医が患者さんに合わせて決めます。また、HNPCCの遺伝子を持つ女性には、子宮がんなどのリスクを減らすために、予防的な手術を選択できる場合がありますが、これは本人の希望やライフプランを考慮して決定されます。
手術が検討される場合
大腸がんが見つかった場合、通常のがん手術に加えて、将来の別のがんを防ぐために大腸を広めに切除する(全結腸切除など)方法を選ぶことがあります。また、女性では子宮がん予防のために子宮摘出を選択することもあります。これらは長期的な見通しを立てて、担当医と十分に話し合うことが必要です。
この病気と共に生きる
HNPCCはあくまで「がんへのリスクが高い」という体質です。必ずがんになるわけではありません。定められたスケジュールで検診を受け、体の変化に注意しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な大腸内視鏡検査を受ける
- 家族への伝え方について遺伝カウンセリングを活用する
- 健康な食事と運動を心がける
- ストレスをためないようにする
食事と運動
野菜や果物、食物繊維(玄米、豆類、野菜)を多くとり、赤身肉や加工肉(ハム、ベーコンなど)をとりすぎないようにしましょう。運動は週に150分程度の中強度の運動(早歩きなど)がすすめられますが、無理のない範囲で行います。
精神的健康と心の健康
遺伝性のがんリスクを知ることは、不安や戸惑いを生むことがあります。情緒的なサポートも大切です。日本では、遺伝カウンセリングや心理的サポートが受けられる医療機関があります。もし強い不安や抑うつを感じる場合は、医療機関や相談機関に助けを求めてください。
予防
HNPCC自体を完全に予防することはできませんが、定期的な検査によって大腸がんの発生や進行を防ぐことができます。内視鏡でポリープを見つけた時に切除すれば、がんになる前に取り除けることがあります。
ワクチン
HNPCCを予防するワクチンは現在ありません。
検診プログラム
大腸がんのスクリーニングは、通常20〜25歳から、または家族歴に基づいてそれより早い年齢から始め、1〜2年に1回の大腸内視鏡検査がすすめられます。また、女性では子宮がんや卵巣がんの検診も重要です。検査計画は専門医が個別に立てます。
合併症
治療しない場合
- 大腸がんが進行し、転移を起こす
- 子宮がん、卵巣がんなど他のがんの発生リスクが高い
- 再発のリスク
長期的な見通し
HNPCCと診断されても、適切な検診と治療を受けていれば、多くの患者さんが健康的な生活を送ることができます。早期発見と予防のための定期的な検査が非常に有効です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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