肥大型心筋症(ひだいがた しんきんしょう)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肥大型心筋症は、心臓の筋肉が異常に厚くなる病気です。心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割をしていますが、筋肉が厚くなると心臓が十分に広がれず、血液をうまく送り出すことが難しくなることがあります。また、心臓の電気の流れが乱れやすくなることもあります。
重要な事実
- 多くの場合、遺伝子の変化が原因で発症します
- 症状がないまま経過することも少なくない病気です
- 運動中や急な動作のときに症状が出やすいことがあります
- 適切な管理と治療で、多くの方は日常生活を続けることができます
- 家族にこの病気の方がいる場合は、検査を受けることがすすめられます
比較的まれな病気と考えられていますが、実際には症状がないために診断されていない方も多く、もう少し多く見られている可能性があります。
子どもから高齢者まで、どの年齢でも発症しうる病気です。特に若い世代では、運動中に症状が現れることがあります。家族で遺伝することが多いため、親や兄弟姉妹に肥大型心筋症の方がいる場合、注意が必要です。
症状
- 胸の痛みが長く続く、または締め付けられるような強い痛みがあるとき
- 運動中や動作中に意識を失ったとき
- 激しい息苦しさがあり、座っていても楽にならないとき
- 激しい動悸とともにめまいや意識がとびそうになる感覚があるとき
- ⚠いつもと違う胸の痛みや圧迫感があるとき
- ⚠めまいやふらつきを繰り返すとき
- ⚠安静にしていても動悸が続くとき
- ⚠今までできていた運動が急にできなくなるほど息切れが強くなったとき
一般的な症状
- 胸の痛みや圧迫感
- 息切れ(特に運動時)
- 動悸(心臓がドキドキする感じ)
- めまいやふらつき
- 失神(気を失うこと)
- 疲れやすさ
- 足のむくみ
子供の症状
- 子どもでは症状が出ないことが多いですが、運動中に息切れや胸の痛みを感じることがあります
- 運動中に急に意識を失うこともあり、注意が必要です
- 学校の心臓検診で心雑音や心電図の異常を指摘されることがあります
高齢者の症状
- 年齢による体力低下と似た症状(息切れ、疲れやすさ)が見られることがあります
- 足のむくみや、横になると息苦しいといった心不全の症状が現れることがあります
- 動悸や脈の乱れに気づくことがあります
原因
主な原因
- 心筋のタンパク質をつくる遺伝子の変化が主な原因と考えられています
- この遺伝子の変化は親から子に受け継がれることがあります
- 原因となる遺伝子の変化が見つからない場合もあります
リスク要因
- 肥大型心筋症の家族がいる(親、兄弟姉妹、子どもなど)
- 若い世代で心臓突然死を起こした家族がいる
- 家族に原因不明の心臓病や不整脈のある人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛み、息切れ、めまい、失神など、心臓の異常を疑う症状があるときは、すぐに受診してください。症状が急で強い場合は、遠慮なく119番(救急車)を呼んでください。
定期受診を予約すべき場合:
- 近い家族に肥大型心筋症の方がいる場合は、症状がなくても検診や受診を検討してください
- 運動中に胸が苦しくなる、動悸がする、疲れやすいといった症状が続く場合は、早めに医療機関を受診してください
- 学校や職場の健康診断で心電図の異常を指摘された場合は、精密検査を受けてください
診断
診断は、まず医師が症状や家族歴を詳しく尋ね、聴診器で心臓の音を確認します。そのうえで、心臓の状態を詳しく調べるための検査を行います。確定診断には心エコー検査が特に重要です。
行われる可能性のある検査
- 心電図:心臓の電気の流れを記録し、異常を調べます
- 心エコー検査:超音波で心臓の形や厚さ、動きを観察します
- 心臓MRI:心臓の筋肉の厚さや線維化を詳しく評価できます
- 運動負荷試験:運動中の心臓の反応や血圧の変化を調べます
- 遺伝子検査:原因となる遺伝子の変化を調べます(家族の診断にも役立ちます)
- 血液検査:心臓に負担がかかっていないかなどを確認します
診察で予想されること
多くの検査は体に負担が少なく、日帰りで受けられます。心電図や心エコー検査は痛みを伴いません。心臓MRIは静かな機械の中で撮影するため、検査時間は少し長めですが、それほど強い痛みはありません。検査前に飲み物や食事を控える必要がある場合もあるため、医師の指示に従ってください。
治療
治療の目的は、症状を和らげ、合併症を防ぎ、突然死のリスクを減らすことです。すべての方に同じ治療が行われるわけではなく、症状の程度や心臓の状態に合わせて、医師と相談しながら進めていきます。
自宅でのセルフケア
- 医師から運動制限の指示があれば、それを守る
- 激しい運動(競技スポーツや全力での運動)は避け、医師と相談して運動量を決める
- 十分な休息をとり、疲れをためない
- アルコールやカフェインのとりすぎに注意する
- 症状の変化を記録し、受診のときに伝える
医療治療
薬による治療では、心臓の働きを助け、心拍数を調整し、不整脈を抑えるための薬が使われることがあります。具体的な薬の名前や用量は、患者さんの状態によって異なるため、医師が適切に処方します。市販薬やサプリメントを使用する際は、事前に医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
薬で症状が十分に改善しない場合や、突然死のリスクが高い場合には、次のような手術や処置が検討されることがあります。たとえば、心臓の筋肉の一部を切除する「中隔心筋切除術」や、心臓に電気ショックを与える装置(植え込み型除細動器)を胸に埋め込む方法などがあります。これらは重症例やリスクの高い方に対する選択肢のひとつです。
この病気と共に生きる
肥大型心筋症と診断されたら、定期的な通院を続け、医師の指示を守ることが何より大切です。体調の変化をよく観察し、不安なことがあれば遠慮なく医師や看護師に相談してください。仕事や学校生活についても、主治医と相談しながら無理のない範囲で続けることができます。
生活習慣のアドバイス
- バランスのよい食事を心がける
- 規則正しい生活リズムを保つ
- 適度な睡眠をしっかりとる
- 喫煙は避ける
- ストレスをため込まないようにする
- 激しい運動や無理な体力を使う活動は医師に相談する
食事と運動
食事は、塩分や脂肪のとりすぎに注意し、野菜や果物を十分にとるようにしましょう。運動は、医師に相談したうえで行うことが大切です。ウォーキングや軽いストレッチなど、体への負担が少ない運動は、心臓の健康のために役立つこともありますが、競技スポーツや瞬発的な力を必要とする運動は避けたほうがよい場合があります。
精神的健康と心の健康
慢性の病気を抱えることは、ときに不安や心配、気持ちの落ち込みを引き起こすことがあります。そうした感情は自然なものですが、長く続くようであれば、医師に相談してみてください。必要に応じてカウンセリングなどの支援を受けることもできます。
予防
肥大型心筋症自体は、遺伝子の変化が原因となる場合が多いため、発症を完全に予防することはできません。しかし、心不全や重大な不整脈といった合併症を防ぐことは可能です。定期的な受診と、医師の指示に従った治療や生活管理が予防につながります。
ワクチン
心臓の病気がある方は、インフルエンザや肺炎球菌の予防接種がすすめられることがあります。感染症は心臓に大きな負担をかけるため、かかりつけ医と相談して、接種を検討するとよいでしょう。
検診プログラム
肥大型心筋症の家族がいる方は、症状がなくても心電図や心エコー検査などを受けることがすすめられます。また、遺伝子検査を受けることで、家族の誰に遺伝しているかを知る助けになることがあります。検査を受けるかどうかは、医師とじっくり相談して決めることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプ機能が低下して、息切れやむくみが出る状態)
- 不整脈(特に心室細動という危険な不整脈)
- 心臓突然死
- 心房細動による脳梗塞(心臓でできた血栓が脳の血管を詰まらせること)
長期的な見通し
肥大型心筋症と診断されたからといって、必ずしも重い経過をたどるわけではありません。近年は治療や管理方法が進歩しており、多くの方が長く良好な状態を保ち、日常生活や仕事を続けています。適切なフォローアップと前向きな気持ちで、健康な毎日を目指していくことができます。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。