マルファン症候群と心臓の手術
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
マルファン症候群は、体の結合組織(骨や血管、心臓の弁などを支える丈夫な組織)に影響する遺伝性の病気です。心臓や大動脈(心臓から出る太い血管)に問題が起こることがあります。ここでは、マルファン症候群の心臓手術に関する情報を、わかりやすく説明します。
重要な事実
- マルファン症候群は遺伝子の変化によって起こります。親から子に伝わることが多いですが、自分だけに新しく現れることもあります。
- 心臓と大動脈の状態を定期的にチェックすることがとても大切です。
- 手術が必要になることもありますが、適切なタイミングで治療すれば、多くの方は元気に生活を続けられます。
マルファン症候群は珍しい病気で、およそ5,000人に1人の割合で見られます。
男女を問わず、あらゆる人種・民族に起こります。多くは家族に同じ病気を持つ人がいますが、約4人に1人は家族歴がなく、自分だけに新しい遺伝子の変化として現れます。
症状
- 突然の激しい胸の痛み、背中の痛み、またはお腹の痛み(大動脈の解離や破裂の可能性があります)
- 激しい息切れ、息が苦しくて座っていられない
- 突然の意識の消失、または倒れる
- 片側の手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らないなど、脳卒中のような症状
- ⚠胸の痛みや圧迫感がある(我慢できる程度でも)
- ⚠動悸がひどい、または脈が速すぎる・不規則
- ⚠めまいや立ちくらみが続く
- ⚠日常生活に支障が出るほどの疲れやすさ
一般的な症状
- 身長が高く、手足や指・足の指が長い
- 胸の骨が凹んでいる、または突出している
- 近視などの目の問題
- 心臓の弁の異常による心雑音
- 大動脈が拡張している(太い血管が太くなる)
- 背骨の弯曲(背骨が横に曲がる側弯症)
- 関節が柔らかすぎる(ただし個人差があります)
子供の症状
- 思春期前に症状がはっきりしないことも多い
- 学校の健康診断で側弯症や心雑音を指摘されることがある
- 家族にマルファン症候群の人がいる場合は、早めの検査や遺伝カウンセリングがすすめられる
高齢者の症状
- 若い頃に診断されず、加齢とともに大動脈の拡張や弁の異常が進んでから気づくことがある
- 腰痛や関節痛など、一般的な老化と思われやすい症状が出ることもある
- 高血圧や動脈硬化など、加齢に伴う病気が心臓にさらに負担をかける可能性がある
原因
主な原因
- 結合組織をつくる遺伝子(FBN1遺伝子)の変化によって起こります
- 多くの場合、親から子へ遺伝します(常染色体優性遺伝と言います)
- 約25%は家族歴がなく、新たに生じる遺伝子の変化によるものです
リスク要因
- 家族(親、兄弟姉妹、子ども)にマルファン症候群の人がいる
- 大動脈が拡張しやすい体質を受け継いでいる
- 血圧が高いと大動脈への負担が大きくなる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸・背中・お腹の突然の激しい痛みがある(大動脈の緊急疾患のサインです)
- 意識を失いそうなほど強いめまいがある
- 安静にしても続く息切れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 家族にマルファン症候群や大動脈の病気がある場合、症状がなくても一度受診を
- 身長・体格・目の異常など、特徴的な所見に気づいたら
- 心雑音や心臓弁の異常を指摘されたら
診断
診断は、体の特徴、家族歴、心臓の超音波検査(心エコー)などを総合して行われます。遺伝子検査が役立つこともあります。マルファン症候群は厚生労働省の指定難病の対象となる場合があります。
行われる可能性のある検査
- 心エコー検査(心臓と大動脈の状態を確認します)
- 胸部X線検査(心臓の大きさや肺の状態を確認します)
- 心臓CT・MRI(大動脈の太さや構造を詳しく調べます)
- 眼科検査(水晶体の偏位などがないか調べます)
- 整形外科検査(背骨や関節の状態を調べます)
- 遺伝子検査(必要に応じて行われます)
診察で予想されること
診断のための検査は、外来で行われることがほとんどで、痛みを伴わないものが多いです。心エコーやCTなどの検査結果に基づいて、担当医が心臓の専門医や遺伝子専門医と連携し、治療方針を決めます。検査前に不安なことや質問があれば、医師に遠慮なく伝えましょう。
治療
治療の目的は、大動脈の拡張や解離(裂けること)、心臓弁の異常などによる合併症を予防し、命を守ることです。治療は、定期的な観察と、必要に応じた薬物療法、そして手術の3本柱で行われます。治療方針は患者さん一人ひとりの状態をよく見て決められます。
自宅でのセルフケア
- 血圧を高くしない生活を心がける(塩分を控える、ストレスをためない)
- 激しい運動や、ぶつかる危険のある競技は医師に相談する(特に大動脈に負担をかける運動は避ける)
- 定期的な通院と画像検査を必ず受ける
- 禁煙を心がける
医療治療
薬物療法では、血管を広げて大動脈への負担を減らす薬が使われることがあります(薬の名前や用量は医師の指示に従ってください)。高血圧がある場合は、血圧をしっかりコントロールすることが大切です。どの薬でも、医師の処方に従い、自己判断で服用を中止したり、量を変えたりしないでください。
手術が検討される場合
手術が必要になるのは、主に大動脈が大きく拡張したとき、大動脈の解離が起きたとき、または心臓弁の異常が重度で心臓の機能に影響が出たときです。手術の内容には、拡張した大動脈を人工血管に置き換える方法や、大動脈弁と一緒に置き換える方法があります。手術は心臓血管外科の専門医が行います。早めに専門の病院で相談することが大切です。
この病気と共に生きる
マルファン症候群と診断されても、通院を続けながら通常の生活を送ることができます。ただし、心臓や大動脈に負担がかかる動きや激しい運動は避ける必要があります。学校や職場には、自分に必要な配慮を伝えると安心して過ごせることがあります。
生活習慣のアドバイス
- 定期的に血圧を測り、記録する
- 重いものを持ち上げる、息をこらえるような力を出す動作を避ける
- ラグビーやボクシングなど、体が激しくぶつかるスポーツは医師に相談する
- 妊娠を考えている場合は、必ず事前に医師と相談する(妊娠中は大動脈への負担が心配されます)
食事と運動
食事は塩分を控え、バランスの良い食事を心がけましょう。運動は、ウォーキングや水泳など、心臓に負担が少なく持続的な活動が安心です。ただし、運動を始める前にかならず担当医に確認してください。
精神的健康と心の健康
慢性の病気や心臓手術への不安は、気分の落ち込みや不安を強めることがあります。そんな時は、一人で抱え込まず、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーに相談してください。必要に応じて、精神科医や心理士の支援を受けることもできます。
予防
マルファン症候群自体を予防することはできません。しかし、定期的な心臓のチェックと適切な治療によって、心臓や大血管の合併症を予防することは可能です。
ワクチン
予防接種(ワクチン)は、心臓や体の状態によって受けられないものがあります。接種を受ける前に、かならず医師に相談してください。
検診プログラム
家族に患者がいる場合、遺伝子検査や出生前診断の相談ができますが、受けるかどうかは本人・家族の意思で決められます。国内では、厚生労働省の難病相談窓口や遺伝カウンセリング外来が利用できます。
合併症
治療しない場合
- 大動脈の拡張が進んで解離や破裂を起こし、命に関わることがある
- 大動脈弁や僧帽弁の異常による心不全
- 激しい運動中や妊娠中に大動脈の合併症を起こす危険
- 眼の症状(網膜剥離など)や背骨の弯曲が進行する
長期的な見通し
マルファン症候群は遺伝性の病気ですが、適切な管理と治療によって、多くの人が健やかに生活しています。心臓手術が必要になっても、技術の進歩により成功率は高く、術後の生活も元通りに近い状態を目指せます。定期的に通院し、医師と相談しながら、自分に合った生活を続けていきましょう。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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