多系統萎縮症(MSA)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
多系統萎縮症(たけいとういしゅくしょう)は、脳のいくつかの部分がゆっくりと傷んでしまう、まれな神経の病気です。血圧や排尿など、自分の意思とは関係なく働く「自律神経(じりつしんけい)」と、体を動かす働きの両方に影響が出ます。進行性の病気ですが、症状の現れ方や進み方は人によって違います。
重要な事実
- 脳の細胞が減ることで、体の動きや自律神経に障害が出る
- めまい、立ちくらみ、排尿障害、ふるえ、歩きにくさなど、さまざまな症状が出る
- 遺伝するものではなく、人にうつる病気でもない
- 症状をやわらげる治療はあるが、根本的に治す治療法はまだない
- 診断には時間がかかることがあり、神経内科の専門医の診察が重要
まれな病気です。人口10万人あたり数人程度と考えられており、どなたでも発症する可能性がありますが、日本では難病に指定されています。
40歳から60歳くらいで発症することが多いです。平均すると50代半ばで発症することが多く、男性にやや多いという報告があります。子どもに発症することはほとんどありません。
症状
- 意識を失った、または呼びかけに反応しない
- けいれんが止まらない
- 息ができない、または呼吸がとても苦しい
- 食事や水が飲み込めず、むせて窒息しそうな危険がある
- 強い頭痛や体の片側のまひ、ろれつが回らないなど、脳卒中のような症状がある
- ⚠転倒してけがをした、または頭を打った
- ⚠水分が十分に摂れず、脱水が心配される
- ⚠立ったまま倒れることが何度もあり、けがのリスクが高い
- ⚠高熱が出て、意識がもうろうとする
- ⚠飲み込みにくさが急に悪化し、食事や薬が摂れない
一般的な症状
- 立ち上がったときや長時間立ったときのめまい、ふらつき、失神(たちくらみ)
- 排尿のしにくさ、頻尿、尿失禁(おしっこのトラブル)
- 便秘や吐き気などの消化器の症状
- 体の動きが遅くなる、筋肉がこわばる、ふるえ
- バランスが取りにくく、転びやすくなる
- ろれつが回りにくい、声がかすれる、飲み込みにくい
- 体の緊張をうまく調整できず、血圧が下がりやすい
子供の症状
- この病気は大人の病気であり、子どもには発症しないとされています。
高齢者の症状
- 高齢者の場合、同じような症状が年齢のせいや他の病気(例:脳の血流不足など)で起こることがあります。誤って見逃さないために、気になる症状があれば早めに医師に相談してください。
原因
主な原因
- 原因はまだ完全にはわかっていません。脳神経の一部で「α-シヌクレイン」というたんぱく質が異常にたまることで、神経細胞が傷つくとされています。
- この病気は遺伝性ではなく、家族に同じ病気の人がいなくても発症します。
- 感染することもありません。
リスク要因
- 明確な危険因子はわかっていませんが、中年期(40〜60代)の発症が多いという統計があります。
- 一部の研究では男性にやや多いとされていますが、確定的な原因ではありません。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識を失うほどの立ちくらみが頻繁にある
- 飲み込みにくさが急に悪化し、食事が摂れない
- 転倒しそうになり、危険を感じる
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみやふらつきが続く
- 排尿のトラブル(出にくい、漏れる)が気になる
- 歩き方や手の動きがぎこちない
- ろれつが回りにくい、声が出にくい
診断
多系統萎縮症の診断は、主に症状の経過と神経の診察によって行われます。血圧や排尿、運動の状態を詳しく調べ、ほかの病気を除外することが大切です。確定診断には時間がかかることがあります。必ず神経内科専門医の診察がすすめられます。
行われる可能性のある検査
- 問診と神経学的診察(歩き方、動き、反射、感覚などを確認)
- 血圧や心拍数の変化を調べる自律神経機能検査(立ち上がるときの血圧を測る検査など)
- 脳のMRI(磁気共鳴画像検査)で脳の状態を確認
- 排尿障害を詳しく調べる泌尿器科の検査(必要に応じて)
- 血液や尿の検査でほかの病気を除外
- 場合によっては睡眠検査や心電図なども行われる
診察で予想されること
診断までは、数か月から数年かかることもあります。いくつかの検査を受けることになるかもしれませんが、一つひとつの検査は痛みを伴わないものが多く、比較的安全です。診断に自信がない場合や、セカンドオピニオン(別の専門医の意見)を希望される場合は、かかりつけ医に相談してみましょう。
治療
多系統萎縮症を根本的に治す治療法はまだありませんが、症状をやわらげ、できるだけ長く、安全に、自分らしい生活を続けることを目指して治療を行います。お薬、リハビリ、生活の工夫を組み合わせて、多職種のチームでサポートします。
自宅でのセルフケア
- 立ちくらみを防ぐため、寝るときは頭を少し高くし、立ち上がるときはゆっくり動く。
- 十分な水分をとり、医師の指示に従って食事の塩分を調整する(勝手に塩分を増やさないこと)。
- 排尿のトラブルには、水分をこまめにとり、膀胱を温めるとよいことがある。
- 転倒予防のため、家の中の手すりや照明を整え、段差をなくすよう心がける。
- 飲み込みやすい食材や調理方法について、言語聴覚士のアドバイスを受ける。
- 便秘のときは、水分や食物繊維を意識し、腹部のマッサージなどを試す(下剤は医師と相談)。
医療治療
薬による症状の緩和を目的とした治療が中心になります。血圧を安定させる薬、排尿の症状を調整する薬、運動症状を改善する薬、睡眠障害を和らげる薬など、症状に合わせて医師が慎重に選択し、使い始めます。これらの治療薬は人によって合う合わないがあるため、必ず医師の指示に従って服用します。また、パーキンソン症状に使われる治療薬がありますが、どの程度効果があるかは人によって異なります。(薬の名前はあえて挙げません)
手術が検討される場合
多系統萎縮症に対して、外科手術による治療(脳深部刺激療法など)が行われることはほとんどありません。症状の管理は、薬物療法とリハビリ、生活調整が中心になります。
この病気と共に生きる
毎日の生活では、無理をせず、自分のペースを大切にしましょう。睡眠をしっかりとり、体を温め、転倒しないよう注意してください。日々の体調を記録しておくと、医師や家族と情報を共有しやすくなります。症状や不安をひとりで抱え込まず、周囲の人の助けを借りることも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活リズムを整える
- 十分な休養をとり、疲れをためない
- 入浴やトイレは安全にできるよう、手すりや滑り止めなどの環境を工夫する
- 家族や友人、支援者とのつながりを続ける
- 医師・看護師・ケアマネジャー・理学療法士など、チームの助言を活用する
食事と運動
栄養バランスのよい食事をとることが基本です。飲み込みにくい場合は、言語聴覚士や管理栄養士に相談し、とろみをつけるなど安全に食べられる方法を見つけましょう。運動は、できる範囲で、転倒がないよう安全に行います。ストレッチや軽いウォーキングなどは筋力や柔軟性を保つのに役立ちますが、始める前に医師や理学療法士に確認してください。
精神的健康と心の健康
こうした病気は、からだだけでなくこころにも影を落とすことがあります。不安や悲しみ、怒りなどの感情を抱くのは自然なことです。つらいときは、ひとりでため込まず、家族や友人に話したり、医療相談窓口を利用したりしてください。心理士や精神科医などの専門家もサポートします。
予防
多系統萎縮症を予防する方法はまだわかっていません。原因となる生活習慣や環境が特定されていないためです。大切なのは、症状を早く見つけて、医療的なケアや生活の工夫を始めることです。
合併症
治療しない場合
- 転倒による骨折や頭部のけが
- 飲み込みの誤りによる誤嚥性肺炎(食べ物やだ液が気管に入って起こる肺炎)
- 血圧低下による失神や、それによるけが
- 膀胱炎や尿路感染症を繰り返す
- 運動機能の低下により、体を動かさないことで生じる筋力低下や関節のこわばり
長期的な見通し
多系統萎縮症は進行性の病気ですが、進行の速さは人によって大きく異なります。症状を上手にコントロールすることで、長い間、在宅での生活や仕事を続けられる方もいらっしゃいます。医療の進歩により、生活の質を保つためのサポートは年々充実しています。希望を失わず、できることから一つずつ取り組むことが大切です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
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