原発性進行性失語症(PPA)とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
原発性進行性失語症(PPA)は、脳の言葉を処理する部分(主に左脳の側頭葉や前頭葉)がゆっくりと衰えていく病気です。話す、聞く、読む、書くといった言語の機能が、年月をかけて少しずつ障害されていきます。アルツハイマー病などと同じグループの『認知症』の一種ですが、初期には記憶力よりも言語の症状が目立つのが特徴です。
重要な事実
- 言葉の症状が何年もかけてゆっくり進行します。
- 初期には計算や記憶は比較的保たれることが多いです。
- 原因はまだよくわかっていませんが、一部には遺伝的な要因が関係します。
まれな病気です。認知症全体の中でもごく一部を占めるといわれています。
主に50歳から70歳くらいの世代で発症することが多く、男性も女性も同じくらいの頻度で見られます。
症状
- 突然、言葉が出なくなる、相手の言葉が理解できなくなる
- 顔の片側が動かない、手足に力が入らない
- 意識がもうろうとする
- ※すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。脳卒中の可能性があります。
- ⚠数日から数週間のうちに、言葉の症状が急に悪化した
- ⚠食べ物や唾液を飲み込めなくなり、むせたり吸引したりする
- ⚠歩行が不安定になり、転倒のおそれがある
一般的な症状
- 会話中に、言いたい言葉がすぐに思い出せない「語忘れ」が増える。
- 物の名前を間違って言ったり、意味の通らない言葉を使ったりする。
- 相手の話す言葉を理解するのが難しくなる。
- 文の構造が崩れて、単語を並べただけのような話し方になる。
- 読む・書く能力が落ちてくる。
- 話すこと自体がおっくうになり、黙りがちになる。
原因
主な原因
- 脳の神経細胞がゆっくりと減少・変性することが原因です。その背景には、異常なタンパク質(タウ蛋白やTDP-43など)が脳内に蓄積することが関わっているとされています。
- アルツハイマー病と同じ病理変化が原因で起こる場合もあります。
- 一部の患者では、遺伝子の変異が関係することがありますが、家族内に患者がいない「孤発性」の方が多くを占めます。
リスク要因
- 50〜70歳の年齢
- 家族に、この病気や前頭側頭型認知症、運動ニューロン疾患の人がいる場合
- 特定の遺伝子の変異がある場合(ただし、明確な遺伝形式をとることはまれです)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 言葉の症状が突然現れた、または急に悪くなった
- 食事のときにむせることが増え、体重が減ってきた
- 歩き方や体の動きに明らかな変化が出てきた
定期受診を予約すべき場合:
- 言葉の間違いや『思い出せない』症状が数カ月以上続いている
- 家族や友人から『最近、話が通じにくい』と言われる
- 仕事や家事でのやりとりに時間がかかるようになった
診断
診断は主に神経内科や老年科、精神科などの専門医が行います。問診や言語機能を含む神経心理検査、頭部MRI・CTなどの画像検査を組みあわせて、他の病気を除外しながら総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(ご本人と家族の方から話を聞きます)
- 言語機能を調べる神経心理検査(絵の名前を言う、読む、書く、聞いて理解するなど)
- 頭部のMRIまたはCT検査
- 脳の血流や代謝を調べるSPECT・PET検査(場合による)
- 他の病気を確認するための血液検査
診察で予想されること
診断には数週間から数か月かかることがあります。はっきりした原因を特定するのが難しい場合もあり、専門医が症状の経過を縦に診ていくことが大切です。診断後も、定期的に通院して経過を見ていきます。
治療
現在のところ、PPAそのものを治す薬はありません。しかし、言語聴覚士によるリハビリテーションやコミュニケーションの支援、症状に合わせた薬物治療などによって、生活のしやすさを保つことが目標になります。
自宅でのセルフケア
- ゆっくり、短い文で話すように心がける。
- 指さしやジェスチャー、絵カード、スマートフォンの文字表示など、言葉以外の方法を組み合わせる。
- 間違いをすぐに訂正するのではなく、本人が伝えようとしている気持ちを大切にする。
- 話すことに疲れたら、休む時間を作る。
- 家族や友人が、本人のペースに合わせて会話を待つ。
医療治療
医師の判断が必要ですが、認知症の進行を抑える目的で、数種類の薬が使用されることがあります。また、うつ症状、不安、睡眠障害などが強い場合には、それらの症状を和らげる薬が処方されることもあります。どの薬も医師の処方にしたがって使用してください。
手術が検討される場合
この病気に対して、手術は行われません。
この病気と共に生きる
言葉でのやりとりが難しくなっても、気持ちはしっかり残っています。ご本人が伝えたいことを工夫して聞き取り、穏やかな時間を過ごすことが何より大切です。生活の中では、文字や絵、身ぶりなどをうまく使っていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に起き、食べ、休むリズムを保つ。
- 音楽や散歩、写真を眺めるなど、言葉が苦手でも楽しめる活動を見つける。
- お金の管理や調理、運転など、安全に関わることは家族や支援者と一緒に行う。
- 無理に人前で話させようとせず、本人が快適に過ごせる環境を選ぶ。
食事と運動
栄養バランスの良い食事を心がけ、飲み込みが悪くなってきたら、食べ物を小さく切る、とろみをつけるなどの工夫をします。ウォーキングなど軽い運動は、気分を安定させるうえでも役立ちます。
精神的健康と心の健康
言葉が出ないもどかしさから、うつ状態や不安、人と会うのを避けるようになることがあります。また、介護する家族の負担も大きくなりがちです。一人で抱え込まずに、医療や介護の支援を利用してください。
予防
現時点では、PPAを完全に予防する方法は見つかっていません。ただし、一般的な健康的な生活(バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、血圧や血糖の管理)を心がけることは、脳の健康のために役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 言葉の障害が進むと、必要なことを伝えられず、誤解や孤立が生じやすくなります。
- 誤嚥(ごえん)により食べ物や唾液が気管に入り、肺炎を起こすリスクが高くなります。
- 進行にともない、判断力や記憶力など、ほかの認知機能にも障害が現れることがあります。
長期的な見通し
病気の進行のスピードは人それぞれです。何年も穏やかに経過する方もいます。リハビリテーションや周囲のサポートを活用することで、たとえ言葉が不自由になっても、その人らしい生活を長く続けることができます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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