肺塞栓症(肺動脈に血のかたまりが詰まる病気)とは?
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肺塞栓症とは、足などの静脈にできた血のかたまり(血栓)が流れていき、肺に血液を送る血管(肺動脈)をふさいでしまう病気です。肺に十分な血液が行き渡らなくなると、息苦しさや胸の痛みなどが現れ、重症になると命に関わることがあります。
重要な事実
- 肺塞栓症は、早期に診断して適切な治療をすれば、よくなる可能性が高い病気です。
- 予防がとても大切です。長時間じっとしているときは足を動かす、水分をしっかりとることが大事です。
- 症状が突然現れることが多く、強い息苦しさや胸の痛みがあるときは、すぐに救急車(119番)を呼びましょう。
日本では年間に数万人が発症すると考えられています。決してまれな病気ではありません。
年齢が高い人、手術後やけがで長く動けなかった人、がん治療を受けている人、妊娠中、血が固まりやすい体質の人などに多く見られます。しかし、若い人や健康に見える人でも起こることがあります。
症状
- 突然の強い息苦しさ
- 胸の激しい痛み
- 血を咳き込む
- 意識を失いそうになる、けいれんする
- ⚠息切れが続く
- ⚠胸の痛みが続く
- ⚠脈が速くなる
- ⚠原因がわからないふらつきや動悸がある
一般的な症状
- 突然の息苦しさ
- 胸の痛み(特に大きく息を吸ったときに悪くなる)
- 咳が出る
- 血を交えたたんが出る
- 心臓がドキドキする
- ふらふらする、気を失いそうになる
子供の症状
- 子どもではまれですが、突然の息苦しさや胸の痛み、顔色が悪くなる、気を失うといった症状があらわれることがあります。
高齢者の症状
- 高齢者では、典型的な息苦しさや胸の痛みよりも、「なんとなく元気がない」「ボーッとする」「転びやすくなった」「息切れが続く」というように、症状がはっきりしないことがあります。
原因
主な原因
- 足(特にふくらはぎ)の深い静脈に血のかたまり(血栓)ができ、それが血流に乗って肺の動脈に流れ着き、詰まることで起こります。
- 骨折や大きなけが、手術後などで長く動かずにいると、足に血栓ができやすくなります。
- 座位が長い(飛行機や新幹線への長時間乗車、デスクワークなど)ことも原因になります。
リスク要因
- 60歳以上である
- 手術後や入院中である
- がん治療中または既往がある
- 妊娠中または産後である
- 経口避妊薬(低用量ピル)を使用している
- 喫煙している
- 肥満がある
- 過去に血栓症を起こしたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の強い息苦しさや胸の痛み、血を咳き込む、意識が遠くなるなどの症状がある場合は、すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。
- 急に息切れや胸の痛みが現れた場合は、その日のうちに医療機関を受診してください。夜や休日なら、休日診療所や救急外来に連絡しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- がん治療中、妊娠中、手術後など、血栓ができやすい状態にある人は、かかりつけの医師に相談して、予防について計画を立てておきましょう。
診断
医師がまず問診と身体診察を行い、必要に応じて血液検査や画像検査を行います。肺塞栓症が疑われる場合は、入院の上ですぐに検査します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血のかたまりの分解産物の量を調べます)
- 手足の静脈エコー(足の血栓を探します)
- 胸部CT検査(肺動脈の詰まりを画像ではっきり確認します)
- 心電図や心臓エコー(心臓への負担を評価します)
- 肺血流シンチグラフィー(肺の血流の状態を見る検査)
診察で予想されること
診断は急を要します。医師や看護師が迅速に対応しますので、不安な点は遠慮なく質問してください。
治療
肺塞栓症は命にかかわることがあるため、基本的には入院して治療します。目的は、血栓をこれ以上大きくしないこと、詰まった血流を改善すること、再発を防ぐことです。
自宅でのセルフケア
- 医師に指示された安静のよしあしを守ってください。
- 水分をしっかりとるようにしましょう。
- 喫煙している人は、禁煙をすすめます。
- 治療中は、体を動かす前に必ず医師・看護師の許可をもらってください。
医療治療
治療の中心は、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬)です。最初は点滴や注射で行い、その後は飲み薬に切り替えて、数か月間から数年続けることがあります。症状が重い場合には、できるだけ早く血栓を溶かす治療(線溶療法)や、カテーテルという細い管を使って血栓を吸引する治療が検討されることもあります。
手術が検討される場合
薬での改善が難しく、命に危険が及ぶ非常に重い場合には、手術で血栓を取り除く手術(肺動脈血栓摘出術)が行われることがあります。
この病気と共に生きる
治療後は再発を防ぐことが大切です。血が固まりやすい状態が続くため、医師の指示に従って飲み薬を続け、定期的に通院しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 長時間同じ姿勢を避け、1時間に1回は足を動かす、立ち上がるようにしましょう。
- 医師にすすめられたら弾性ストッキングを着用しましょう。
- 水分を十分に補給しましょう。
- 禁煙、健康的な体重維持を心がけましょう。
食事と運動
食事はバランスよく、偏りすぎないようにすることが大切です。また、一部の飲み薬では、納豆やクロレラといった食品が薬の効果に影響することがあります。かかりつけの医師や薬剤師に、食べてよいもの・気をつけるものを相談しましょう。運動は、医師の許可が出てから無理のない範囲で始め、徐々に量を増やしていきましょう。
精神的健康と心の健康
突然の強い症状と入院治療は、とても不安な経験です。治療後も、「また起こるのでは」という心配から、気分が落ち込んだり、眠れなくなったりすることがあります。そうした気持ちは、決して我慢せず、医師や看護師、家族に話してください。
予防
多くは予防できます。入院中や手術後は、医師や看護師の指示に従って、早期から足を動かしたり歩いたりすることが大切です。弾性ストッキングや、空気でふくらませて足をマッサージする器具(間欠的空気圧迫法)などが使われることもあります。長距離の移動でも、こまめに水分をとり、足を動かすようにしましょう。
ワクチン
肺塞栓症そのものを予防するワクチンはありません。
検診プログラム
特別なリスクが高い人(過去に血栓症がある人、がん治療中の人など)では、医師が下肢のエコー検査や血液検査を行うことがあります。健康診断で定期的に行われる一般的な検査はありません。
合併症
治療しない場合
- 肺動脈の詰まりが広がると、心臓に大きな負担がかかり、血圧が急に下がってショック状態になることがあります。
- 放置すると命に関わることがあります。
- 治療が遅れると、再発を繰り返すことがあります。
- 長期的に肺の血管が細くなり、肺高血圧症という後遺症が残ることがあります。
長期的な見通し
肺塞栓症は、早期に診断して適切な治療を受ければ、多くの患者さんが回復します。治療後は再発予防を続けながら、通常の生活に戻ることができる病気です。医師の指示を守り、定期的に通院しながら、前向きに生活していきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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