自然冠状動脈解離(SCAD):心臓の血管に突然起こる裂け目について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
SCAD(自然冠状動脈解離)とは、心臓に血液を送る血管(冠状動脈)の壁に、突然「裂け目」ができる病気です。その裂け目に血液が入り込むと、血管が狭くなったり詰まったりして、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなります。その結果、心筋梗塞(心臓発作)のような症状を引き起こすことがあります。動脈硬化(血管が硬くなること)とは関係なく、健康に見える人でも起こり得る病気です。日本では、厚生労働省が心臓病に関する啓発や医療提供体制の整備を進めています。
重要な事実
- まれな病気ですが、特に40〜50代の女性に多く見られます。
- 心筋梗塞のような胸の痛みや息苦しさが突然現れることがあります。
- 動脈硬化が原因ではないため、健康診断で異常がない人でも起こり得ます。
- 多くの場合、時間の経過とともに血管の裂け目は自然に治ります。
まれな病気です。心筋梗塞全体のうち1〜4%程度と報告されており、最近は診断技術の向上により、以前より見つかることが増えています。
女性に多く、特に妊娠中や出産後まもない時期、または閉経前後の40〜50代で多く見られます。男性にも起こりますが、女性より少ないとされています。また、何らかの血管の病気や結合組織の病気を持っている人にも起こりやすくなります。
症状
- 突然の強い胸の痛みが5分以上続く
- 胸の痛みとともに冷や汗や吐き気、息苦しさがある
- 意識がもうろうとする、または失神した
- 上の症状がある場合は、迷わず119番に電話してください。
- ⚠胸の痛みが繰り返し起こる
- ⚠少し動いただけでも息苦しくなる
- ⚠原因がわからない強い疲れが続く
- ⚠このような症状がある場合は、当日中に医療機関を受診しましょう。
一般的な症状
- 突然の強い胸の痛み(締め付けられるような、または焼けるような痛み)
- 左の肩や腕、あご、背中への痛みの広がり
- 息切れや呼吸が苦しい感じ
- 冷や汗、吐き気、めまい
- 強い疲労感
原因
主な原因
- 血管の壁に突然裂け目ができることが直接の原因ですが、なぜ起こるのかはまだ完全には解明されていません。
- 動脈硬化の血栓などとは違い、血管自体に「もろさ」がある人が発症しやすいと考えられています。
- ホルモンの変化(妊娠中や閉経など)が関与している可能性があります。
リスク要因
- 女性(特に閉経前後の40〜50代)
- 妊娠中や産後まもない時期
- 強い精神的ストレスや極度の疲労
- 激しい運動(特に経験のない高強度のトレーニング)
- 結合組織の病気(マルファン症候群など)や血管の病気(線維筋性異形成など)を持っている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の胸の痛みは、軽いものだと思わずに、必ず医療機関を受診してください。
- 息苦しさや冷や汗なども一緒にある場合は、救急車を呼んでください。
定期受診を予約すべき場合:
- すでにSCADと診断されている方は、定期的に循環器科を受診し、心臓の状態をチェックしてもらいましょう。
- 症状がなくても、心配なことがあれば専門医に相談しましょう。
診断
心臓の血管の状態を詳しく調べる「冠動脈造影」という検査を行うことで診断されます。そのほか、心電図や血液検査、心臓の超音波検査などもあわせて行います。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気的な活動を記録する検査)
- 血液検査(心臓の筋肉が傷ついていないかを調べる)
- 冠動脈造影(血管にカテーテル(細い管)を入れて造影剤を流し、血管の状態を確認する検査)
- 心臓の超音波検査(心臓の動きを画像で確認する検査)
診察で予想されること
診断のための検査には、強い不安を感じるかもしれません。しかし、医師や看護師がその都度説明しながら進めますので、わからないことは遠慮なく質問してください。結果はすぐに出るものもあれば、数日かかるものもあります。
治療
SCADでは、多くの場合、すぐに手術をするのではなく、安静にしながら薬で血液の流れを整え、自然に治るのを待つ「保存的治療」が行われます。血管が大きく狭くなっている場合や、血流が保てない場合は、カテーテル治療や手術が必要になることもあります。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って、安静を保つ(無理をしない)
- 胸の痛みや違和感があるときは、活動を中止して休む
- タバコを吸わない
- 飲酒は控えめにする
- 体重管理や睡眠をしっかりとる
医療治療
治療薬としては、血圧を安定させる薬、血液が固まりにくくする薬、コレステロールを調整する薬などが使用されることがあります。どの薬を使うかは、患者さんの状態や血管の損傷の程度によって異なります。処方された薬は必ず指示通りに飲み、自己判断でやめたり、市販薬を追加で飲んだりしないでください。
手術が検討される場合
血管の裂け目が広がり、心筋への血流が危険なほど減ってしまう場合には、カテーテルを用いて血管内にステント(金属の筒)を入れて広げる治療や、心臓の血管を別の血管に置き換えるバイパス手術が行われることがあります。こうした治療が必要になるのは、ごく一部の重症例です。
この病気と共に生きる
SCADから回復した後の生活は、無理のない範囲で普通に過ごせます。ただし、再発を防ぐためには、血圧の管理、禁煙、適度な運動、ストレスケアといった生活習慣の見直しがとても大切です。焦らずに、自分のペースで生活を整えていきましょう。
生活習慣のアドバイス
- ウォーキングなどの軽い運動を医師と相談しながら続ける
- 十分な睡眠と休養をとる
- 喫煙をしている方は、禁煙に取り組む(禁煙外来も利用できます)
- ストレスをためないために、リラックスできる時間を作る
- 定期的に医療機関でフォローアップを受ける
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜・果物・魚を中心としたバランスのよい食事を心がけましょう。運動は、医師の許可が得られた後に、軽い有酸素運動(ウォーキングやゆっくりした水泳など)から始めます。最初は短時間から始め、体調を見ながら徐々に時間を延ばしましょう。激しい運動や重いものを持ち上げる運動は、初めは避けてください。
精神的健康と心の健康
SCADは突然起こることが多いため、再発への不安や、なぜ自分に起こったのかという疑問、抑うつ気分を感じる方も少なくありません。そのような感情は自然なことです。無理に隠さず、家族や友人、医療スタッフに話しましょう。もし、つらい気持ちが続いたり、自分を傷つけたいという考えが浮かんだりした場合は、一人で抱え込まずに、すぐに医師や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
SCADそのものを防ぐ決定的な方法はまだ見つかっていません。しかし、血圧を健康な範囲に保つ、禁煙する、適度な運動をする、ストレスを減らすといった生活習慣の改善は、心臓への負担を減らし、再発リスクを低くするために役立ちます。
検診プログラム
SCADを予防するための特別な健康診断はありません。ただし、妊娠中や産後の女性で胸の違和感がある場合は、すぐに医師に相談することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 心筋梗塞(心臓の筋肉が壊れてしまうこと)
- 重い不整脈(心臓のリズムが乱れること)
- 心不全(心臓のポンプの働きが弱まること)
- まれに突然死につながることもある
長期的な見通し
SCADは、適切な治療と経過観察を受ければ、多くの方が回復して元の生活に戻れます。血管の裂け目は時間とともに自然に治ることが多いです。再発の可能性もありますが、きちんとフォローアップを受け、生活習慣に気をつけることで、リスクは抑えられます。希望を持って、前向きに治療に取り組んでください。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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