水泳肩(スイマーズショルダー)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
水泳肩(スイマーズショルダー)は、水泳で腕を繰り返し動かすことで肩に負担がかかり、痛みや炎症が起こる状態です。肩の腱や滑液包(関節の動きを滑らかにする袋)がこすれて炎症を起こす「インピンジメント症候群」の一種として説明されることが多いです。
重要な事実
- 水泳をする人によく見られます。
- 適切な休養とケアで多くの場合改善します。
- 腕を頭上にあげる動作(クロールやバタフライ)で起こりやすいです。
一般的な運動障害の一つで、水泳をする人なら競技者から趣味の人まで、幅広い年齢で経験することがあります。
競泳選手、マスターズ水泳の選手、水泳教室に通う子どもや高齢者など、水泳を定期的に行う人に多く見られます。特に、バタフライやクロールを多く泳ぐ人に多いとされています。
症状
- 肩に激しい痛みがあり、まったく動かせない
- 肩の形がふだんと違う、または変形している
- 腕や手にしびれ、脱力感がある
- 転んだり強くぶつけたりした後に急に肩が痛む
- ⚠肩の痛みが強く、日常生活(着替え、洗髪など)に支障がある
- ⚠安静にしても痛みが3日以上続く
- ⚠夜間の痛みで何度も目が覚める
- ⚠肩の腫れや熱感がある
一般的な症状
- 腕を上げるときに肩の前や外側に痛みを感じる
- 水泳中や水泳後に痛みが悪化する
- 腕を真上にあげたり、背中に回したりする動作がつらい
- 肩を動かすと「ゴリゴリ」という音やひっかかりを感じることがある
- 夜間、痛みで目が覚めることがある
子供の症状
- 10代前半までの子どもでは、肩の骨の成長とともに痛み方が違うことがあります。安静にしているときは痛みがなく、運動時だけ痛むことが多いです。
- 子どもは痛みをうまく言葉にできないこともあるため、水泳のあとに腕をかばう様子が見られたら注意が必要です。
高齢者の症状
- 加齢により肩の腱や関節が弱くなっていると、痛みが長引いたり、腕を動かしにくくなったりすることがあります。
- 痛みが慢性化しやすく、水泳以外の日常動作でも肩の違和感を覚えることがあります。
原因
主な原因
- 水泳のストロークで腕を頭上に繰り返し回す動作(オーバーヘッド動作)が肩の組織をこすり、炎症を起こす
- 肩のインナーマッスル(回旋筋腱板)の筋力不足やバランスの崩れ
- 肩関節や背中の柔軟性が低いことで、腱や滑液包に負担がかかる
- 筋肉の疲労がたまった状態で泳ぎ続けること
リスク要因
- クロールやバタフライを長時間・長距離泳ぐ
- 泳ぐ距離や練習量を急に増やした
- ウォームアップやストレッチを十分に行わない
- パドルやプルブイなどの道具を頻繁に使う
- 肩や背中の筋力が弱い、または柔軟性が低い
- 過去に肩を痛めたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の強い痛みがある
- 痛みが数日で改善しない
- 腕の力が入らない、しびれがある
定期受診を予約すべき場合:
- 水泳を続けていて肩の痛みが繰り返す
- 朝起きたときの肩のこわばりが続く
- 痛みのために泳ぐフォームが変わり、パフォーマンスが落ちた
診断
医師はまず、あなたの症状の話を聞き、肩の動きや痛む場所を確認します。水泳の頻度や泳ぎ方、使う道具(パドルなど)についても質問されることがあります。
行われる可能性のある検査
- 肩の可動域や痛みの場所を確認する視診・触診
- 肩をさまざまな向きに動かして痛みを確認する検査
- 必要に応じて行うエックス線検査や超音波(エコー)検査
- ほかの病気を除外するためのMRI検査
診察で予想されること
多くの場合、問診と診察の時点でおおまかな診断がつきます。画像検査が必要な場合でも、痛みの程度や原因を詳しく調べるために数分〜数十分で終わります。
治療
治療の基本は、肩への負担を一時的に減らし、炎症をしずめることです。そのうえで、肩の筋肉のバランスを整えるリハビリテーションが中心になります。
自宅でのセルフケア
- 水泳を休む、または距離や回数を減らして肩を休ませる
- 痛みがある部分を氷などで冷やす(1回15分程度、数時間おきに)
- 痛い方向に無理に動かさない
- 肩のストレッチを医師や理学療法士の指示に従って行う
医療治療
市販の痛み止めを使うことはありますが、自己判断での長期使用は避けてください。医師の診察のもとで、痛みを抑える薬や炎症をしずめる薬が処方されることもあります。注射療法が必要な場合もありますが、治療方針は医師があなたの状態に合わせて説明します。自分で薬を選んで飲み続けることはせず、必ず医療機関に相談しましょう。
手術が検討される場合
保存的な治療(薬、リハビリ、休養)で改善しない場合や、腱の断裂などのほかの問題があると診断された場合は、手術が検討されることがあります。ただし、多くの水泳肩は手術をせずに改善します。
この病気と共に生きる
肩の痛みがある間は、水泳の時間や強度を調整し、無理をしないことが大切です。痛みのない範囲で日常生活を送り、腕を高く上げる動作はゆっくり行うようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 水泳の前後に、肩のストレッチやウォームアップを行う
- 泳ぐときはフォームを見直し、無理な力が入らないようにする
- 肩の筋肉を鍛える軽いトレーニングを、理学療法士の指導のもとで行う
- 睡眠時に腕を頭の上に置く姿勢を避けるなど、肩に負担をかけない姿勢を心がける
食事と運動
特別な食事療法はありませんが、骨や筋肉の健康を保つために、バランスのよい食事と、体を動かす習慣を維持しましょう。肩の痛みがある間は、水泳の代わりにウォーキングなど負担の少ない運動を取り入れることもおすすめです。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと、泳げないもどかしさや、大会に出られない不安などから気分が落ち込むこともあります。無理をして痛みを悪化させるより、休養を前向きに捉えることが回復への近道です。
予防
完全に予防することは難しいですが、肩に負担のかからない泳ぎ方や、筋力バランスを整えるトレーニングを行うことで、リスクを減らすことはできます。少しでも痛みを感じたら早めに対応することが予防につながります。
合併症
治療しない場合
- 肩の腱が損傷し、炎症が慢性化する
- 肩関節の動きが制限される(四十肩・五十肩のような状態になることも)
- 水泳だけでなく、ふだんの生活でも腕を動かしにくくなる
長期的な見通し
多くの水泳肩は、早めに休養と適切なリハビリを行えば、数週間から数か月で改善します。肩の状態は人によって違いますが、正しい治療を続ければ、また水泳を楽しめるようになる可能性は十分にあります。あきらめずに、医療者と一緒に無理のない計画を立てましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。