スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)は、薬剤や感染症などがきっかけとなって、皮膚や粘膜に広い範囲の炎症や水ぶくれが起こる、まれで重い病気です。皮膚がやけどのように大きくはがれ落ちることもあり、迅速な治療が必要な、とても緊急性の高い状態です。
重要な事実
- 薬が最も多い原因ですが、感染症やその他の要因でも起こることがあります。
- 皮膚だけでなく、口、目、のど、性器などの粘膜にも症状が出ます。
- 早期に正しい診断と治療を受けることが、回復への大きな鍵となります。
スティーブンス・ジョンソン症候群は非常にまれな病気です。100万人あたり年間およそ1〜2人程度とされ、日本では厚生労働省の調査で年間に数百人程度の報告があります。
どの年齢でも起こる可能性がありますが、成人と高齢者でやや多く、子どももかかることがあります。男性より女性にやや多いという報告もあります。
症状
- 全身の広い範囲(顔、胸、背中など)に赤い発疹や水ぶくれが急速に広がっている
- 皮膚がやけどのように大きくはがれ落ちている
- 口の中やのどが腫れて息苦しい、呼吸がしにくい
- 意識がもうろうとしている、または呼びかけに反応しない
- 体温が39度以上の高熱が続いている
- ⚠口の中や目の粘膜のただれ、水ぶくれが突然現れた
- ⚠皮膚の痛みが強く、触れられないほどである
- ⚠水や食事がとれず、尿の量が減っている
- ⚠目がかゆい、痛い、またはものが見えにくい
一般的な症状
- 発熱や全身のだるさ、筋肉痛などのかぜに似た初期症状
- 皮膚の広い範囲の赤みや発疹
- 皮膚の水ぶくれ(水疱)
- 皮膚が薄くはがれやすい状態
- 口内炎や口唇のただれ、腫れ
- 目の充血や痛み、涙が出る
- 性器や肛門のまわりのただれや痛み
子供の症状
- 子どもでは、発熱後しばらくしてから皮膚や粘膜の症状が出ることがあります。
- 口の痛みから食事や水を摂れなくなることがあり、脱水に注意が必要です。
- 皮膚の痛みをうまく言葉で表せず、泣き叫んだり、触られるのを嫌がったりします。
高齢者の症状
- 高齢者では皮膚のバリア機能が弱っているため、症状が重くなりやすくなります。
- 脱水や体力の低下、他の持病(糖尿病や心臓病など)の悪化を伴いやすくなります。
- 認知症などがある場合、症状を正しく伝えられず、発見が遅れることがあります。
原因
主な原因
- 薬剤へのアレルギー反応(特に薬を飲み始めてから数日から数週間以内に起こることが多いです)
- 感染症(マイコプラズマやウイルス感染など)
- 原因がはっきりしない場合もあります
リスク要因
- HLAと呼ばれる免疫に関係する遺伝子のタイプによって、特定の薬に対して起こりやすくなることがあります
- 免疫の働きが弱っている状態(免疫抑制薬の使用や免疫力が低下する病気など)
- がんなど、基礎疾患があること
- 薬剤の種類によっては、特定の人に起こりやすいことが知られています
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 全身に赤い発疹や水ぶくれが急速に広がっている場合
- 口や目の粘膜にただれや痛みが出ている場合
- 高熱とともに皮膚の痛みがある場合
定期受診を予約すべき場合:
- 発疹が広がる前で、原因がわからない皮膚トラブルが続いている場合
- 薬を飲み始めてから発疹や発熱が出た場合
- 以前に薬のアレルギーで皮膚症状が出たことがある場合
診断
医師が皮膚や粘膜の症状を診察し、詳しい問診を行います。最近飲んだ薬や感染症の有無を伝えることがとても大切です。皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる「皮膚生検」という検査が行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(炎症の程度や腎臓・肝臓の機能を調べます)
- 皮膚生検(皮膚の組織の一部を採取して、顕微鏡で確認します)
- 目の検査(目に炎症や損傷がないか、眼科で詳しく調べます)
診察で予想されること
診断が疑われた場合は、すぐに入院が必要となります。症状が重い場合は、専門的な治療病院への転院がすすめられることもあります。診断までに時間がかかることがありますが、問診と検査を合わせて総合的に判断されます。
治療
治療は、まず原因が薬であればその薬を直ちに中止し、症状の重症度に応じて行われます。スティーブンス・ジョンソン症候群は緊急の全身管理が必要なため、多くの場合、熱傷(やけど)専門の病院や皮膚科・眼科などが連携する専門医療機関での入院治療が必要です。
自宅でのセルフケア
- 自分で判断して薬をやめたり、市販の軟膏を使ったりしないでください。
- 皮膚をこすったり、水ぶくれを潰したりしないでください。
- 医師が処方した外用薬を指示どおりに使ってください。
- 安静を保ち、体を冷やしすぎず、保温に気をつけてください。
医療治療
治療は、皮膚の保護と粘膜のケアを中心に行われます。熱傷と同じように、特殊な包帯やスキンケアで皮膚のバリアを保ちます。全身の炎症を抑えるための薬や、免疫の働きを調整する薬(ステロイドや免疫グロブリンなど)が使われることがありますが、具体的な薬剤は症状や重症度によって医師が慎重に選びます。目の症状には眼科での専門的な点眼治療が必要なこともあります。また、脱水や感染症に対しては点滴や抗生物質などの支持療法が行われます。
手術が検討される場合
回復期に後遺症として皮膚の瘢痕(傷跡)が残る場合や、目に重度の障害が残った場合に、形成外科や眼科で手術的治療が検討されることがあります。通常、急性期に緊急で手術が行われることはまれです。
この病気と共に生きる
退院後は、皮膚や粘膜が完全に回復するまで時間がかかることがあります。新しい皮膚はとてもデリケートなので、紫外線や刺激を避け、保湿を丁寧に行ってください。定期的に皮膚科、眼科などでの経過観察が必要です。
生活習慣のアドバイス
- 日光を避け、日焼け止めや長袖で肌を保護しましょう。
- 肌を傷つけないよう、柔らかい綿の衣服を選びましょう。
- 目をかゆがらず、ドライアイがひどいときは医師に相談しましょう。
- 原因となった薬は、今後の人生において必ず避ける必要があります。お薬手帳に記録を残し、医療機関で必ず伝えましょう。
食事と運動
回復期は、たんぱく質やビタミンを十分に含むバランスの良い食事を心がけてください。口内の粘膜が痛むときは、やわらかく食べやすいものを選びましょう。運動は医師と相談しながら、無理のない範囲で少しずつ始めるとよいです。
精神的健康と心の健康
見た目の変化や痛みが続くことは、精神的に大きな負担となります。不安や抑うつ感を感じることは自然なことです。一人で抱え込まず、医療者や家族、友人に気持ちを話すことが大切です。必要に応じて心理的なサポートを求めることも検討してください。
予防
完全に予防することは難しいですが、過去に薬でこの病気になったことがある人は、その薬や似た構造の薬を避けることで再発を防げます。医療機関では「お薬手帳」に原因薬を記載し、受診のたびに伝えることが重要です。
ワクチン
ワクチンが原因となることもごくまれにありますが、予防接種を避ける必要はありません。既往歴によっては、接種前に医師に相談することが推奨されます。
検診プログラム
特定の薬を服用する前に、遺伝子検査(HLA検査)が行われることがあります。これは一部の薬で副作用のリスクを評価するために用いられることがある検査です。すべての人に対して行われるわけではありません。
合併症
治療しない場合
- 皮膚の広い範囲が失われ、脱水や感染症を起こす
- 肺炎や敗血症など、命に関わる重い感染症を引き起こす
- 目に永久的な障害(視力低下や失明)が残ることがある
- 口や食道、気道などの粘膜に傷跡が残り、食事や呼吸に影響が出る
- 腎臓や肝臓など、臓器に障害が及ぶことがある
長期的な見通し
スティーブンス・ジョンソン症候群は重症の病気ですが、早期に診断して専門的な治療を受けることで、多くの人は回復します。後遺症が残ることがある一方で、適切なケアとフォローアップにより、生活の質を保つことが可能です。生きる希望を持って、医療チームと一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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