精巣上体炎(精巣のうしろの管の炎症)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)は、精巣のうしろにある「精巣上体」(精子をためて運ぶ細長い管)が炎症を起こす病気です。通常は片側に起こり、陰のうが赤く腫れて痛みを伴います。尿道から細菌が入って感染することで起こることが多く、早めに治療すれば多くの場合は治る病気です。
重要な事実
- 精巣上体炎は細菌感染によって起こることが多く、抗菌薬(抗生物質)による治療が基本です。
- 痛みや腫れは治療を始めて2〜3日で落ち着くことが多いですが、薬を途中でやめると再発しやすいため、指示された治療を最後まで続けることが大切です。
- 陰のうの激しい痛みは、精巣の捻転(陰のうの中で精巣がねじれる緊急の病気)のこともあるため、急な強い痛みがあればすぐに119番を呼んでください。
精巣上体炎は、泌尿器科で診られる比較的一般的な病気です。まれではなく、あらゆる年代の男性に起こり得ます。
性的に活発な10代から50代の男性と、前立腺肥大などの尿路の病気を持つ高齢の男性によく見られます。小児ではあまり多くありませんが、その場合は尿路の構造の異常が隠れていることがあるため、注意が必要です。
症状
- 突然の激しい陰のうの痛みが続く
- 吐き気や嘔吐、冷や汗を伴う
- 陰のうが急に大きく腫れて触れないほど痛い
- 大便をしたくなるような強い下腹部の痛みを伴う
- ⚠高熱(38.5度以上)がある
- ⚠尿道から膿や血液が出る
- ⚠尿が出にくい、またはまったく出ない
- ⚠自己判断で様子を見ても症状が改善しない、または悪化する
一般的な症状
- 陰のうの中の痛み(片側に多い)
- 精巣が腫れて触ると痛む
- 陰のうの皮膚が赤くなったり熱を持ったりする
- 排尿時の痛みや頻尿
- 尿道からの異常な分泌物(膿など)
- 鼠径部(足のつけ根)や腰、下腹部の痛み
子供の症状
- 小児では陰のうの痛みや腫れをうまく訴えられず、歩き方がおかしい、片足を引きずる、腰をかがめるなどの様子が見られます。
- 発熱や嘔吐、腹痛を伴うこともあります。
- 小児の原因は尿路の先天性異常や細菌感染が多く、成人とは対処が異なるため、必ず小児科または泌尿器科を受診してください。
高齢者の症状
- 高齢者では痛みをあまり感じず、陰のうの違和感や腫れ、頻尿・排尿痛などの症状が目立つことがあります。
- 発熱がない場合でも、前立腺や尿路の感染が広がって起こることがあるため、注意が必要です。
- 放置すると重症化しやすいため、早めの受診が大切です。
原因
主な原因
- 細菌感染:尿道から進入した大腸菌やブドウ球菌、性感染症のクラミジアや淋菌などが精巣上体に達して炎症を起こします。
- 尿の逆流:力を入れた瞬間の尿が精巣上体の管に逆流し、化学的な刺激で炎症を起こすことがあります。
- 尿道カテーテル(排尿のための管)を使用している、または最近泌尿器科の手術を受けた。
- 陰のうの打撲や、長時間座る・重いものを持ち上げるなどの物理的な刺激がきっかけになることもあります。
リスク要因
- コンドームを使用しない性交渉(性感染症のリスクを高める)
- 尿路感染症や前立腺炎を起こしたことがある
- 前立腺肥大や尿道の狭窄がある
- 尿道カテーテルを使用している
- 激しい運動による陰のうの圧迫や打撲
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 陰のうの激しい痛みや急な腫れがあり、吐き気や嘔吐を伴う場合(精巣の捻転の可能性があるため、すぐに119番)
- 高熱があり、悪寒がする場合
- 尿がほとんど出ない場合
- 尿道から膿や血液が出る場合
定期受診を予約すべき場合:
- 陰のうまたは精巣に軽い痛みや腫れがある場合
- 排尿時に痛みや違和感がある場合
- 性感染症の可能性がある、またはパートナーが性感染症と診断された場合
診断
診察では、陰のうの中の精巣と精巣上体をそっと触って、痛みの場所や腫れ、熱感を確認します。そのうえで、尿検査や超音波(エコー)検査などを行い、原因となる細菌の有無や血流の状態を調べます。精巣の捻転(ねじれ)が疑われる場合は、手術が必要になることもあるため、緊急の対応になります。
行われる可能性のある検査
- 尿検査:尿中の細菌、白血球、血液の有無を調べます。
- 尿道分泌物の検査:性感染症の原因となる菌を調べます。
- 超音波(エコー)検査:精巣や精巣上体の大きさや血流を確認し、捻転や腫瘍と区別するために行います。
- 血液検査:炎症の程度や全身への感染の広がりを調べます。
診察で予想されること
陰のう周辺の診察のため、下半身を軽く脱いでいただくことがあります。検査は短時間で済みますが、痛みがある場合は無理をせず「ここが痛い」と伝えてください。初診での診断は比較的簡単ですが、原因によっては追加の検査や泌尿器科への紹介があります。
治療
治療の中心は、細菌を排除するための抗菌薬(抗生物質)治療と、痛みや腫れを抑える対症療法です。症状が軽い場合は内服薬での治療になりますが、強い痛みや発熱がある場合は、点滴や入院が必要になることもあります。治療期間は通常2〜4週間で、症状の経過に合わせて調整されます。
自宅でのセルフケア
- 安静を保ち、急性期は立ちっぱなしや長時間の歩行を避けましょう。
- 陰のうを下着やタオルで支えて少し高くすると、痛みが和らぎます。
- 冷たいタオルや保冷材を布で包んで陰のうに当てると、炎症が軽くなります。
- 水分を多めにとり、尿路を洗い流すように排尿を促しましょう。
- 症状が治まるまでは性行為や激しい運動を控えてください。
- 喫煙や過度の飲酒は炎症を悪化させることがあるため、控えめにしましょう。
医療治療
抗菌薬は、尿検査や培養検査で見つかった細菌の種類や患者さんの状態に基づいて、医師が選びます。痛みや発熱、腫れを抑えるために、消炎鎮痛薬が併用されることもあります。症状が重い場合や内服薬を飲めない場合は、入院して点滴による抗菌薬治療と安静が行われます。必ず医師または薬剤師の指示に従い、自己判断で薬をやめないことが大切です。具体的な薬の名前や用量は、診察を受けた医師があなたの状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
抗菌薬治療で改善せず、陰のうに膿の袋(膿瘍)ができた場合や、精巣上体の一部が壊死(組織が死ぬこと)した場合には、切開して膿を出す手術や、炎症を起こした部分を切除する手術が必要になることがあります。また、精巣の捻転と区別がつかない場合は、診断を兼ねた緊急手術が行われることもあります。
この病気と共に生きる
治療中は、指示された抗菌薬を最後まで飲み終えることが最優先です。症状がなくなっても炎症が完全に治っていないことがあるため、通院の間隔を守り、必要に応じて尿検査で再発の有無を確認しましょう。仕事や学校は、痛みや発熱が落ち着くまでは、できるだけ負担を減らして休むことも大切です。
生活習慣のアドバイス
- 症状が治まった後も、陰のうを圧迫しないよう、ゆったりした下着を選びましょう。
- 長時間の座位や自転車・バイクの運転で陰のうを圧迫する場合は、こまめに姿勢を変えましょう。
- パートナーがいる場合は、性感染症の可能性についても主治医と相談し、必要ならパートナーも検査や治療を受けましょう。
- 尿意を我慢せず、こまめに排尿する習慣をつけましょう。
食事と運動
急性期の数日間は安静を優先し、水分を多めに摂りましょう。香辛料、アルコール、カフェインの多い飲み物は尿路を刺激するため控えめにします。症状が治まったら、ウォーキングなどの軽い運動から始め、違和感がなければ徐々に負荷を上げて大丈夫です。激しい運動や重いものを持つ作業は、再発を防ぐためにも、治ってから2週間程度は控えるのが目安です。
精神的健康と心の健康
陰のうの痛みは日常生活の集中力を大きく妨げ、不安やストレスにつながります。また、性感染症が原因の場合、パートナーにうつしてしまったという罪悪感や気まずさを感じることもあります。まずは正確な情報を医師から得て、治療についてよく理解することが不安を減らします。心の負担が強い場合は、医療機関の相談窓口や、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
予防
完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことはできます。性感染症による精巣上体炎は、コンドームを正しく使うことで予防につながります。また、尿路感染症や前立腺炎がある場合は早めに治療し、尿を我慢しないことや、十分な水分をとって尿路を清潔に保つことも大切です。尿道カテーテルを使っている場合は、清潔な管理を心がけましょう。
ワクチン
精巣上体炎そのものに対するワクチンはありません。ただし、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は精巣上体炎や精巣炎の原因になることがあり、小児期のおたふくかぜワクチン接種がリスクを下げる場合があります。
検診プログラム
特定の年齢での定期スクリーニングは推奨されていません。ただし、性的に活発な方や性感染症の心当たりがある方は、泌尿器科で性感染症の検査を定期的に受けることをおすすめします。また、前立腺疾患や尿路の異常がある方は、泌尿器科で定期的に経過観察を受けるとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 炎症が精巣におよび、精巣が萎縮する可能性があります。
- 陰のうの中に膿の袋(膿瘍)ができ、切開や排膿が必要になることがあります。
- 炎症が前立腺や膀胱に広がり、慢性の前立腺炎や膀胱炎を併発することがあります。
- 両側を繰り返し発症すると、精子の通り道が閉塞し、不妊の原因となることがあります。
長期的な見通し
適切な診断と治療を受ければ、ほとんどの場合、数日から数週間で症状はよくなり、後遺症を残さずに治ります。慢性化や再発を防ぐには、抗菌薬を指示どおりに最後まで飲み切ることと、再発のサイン(痛みや腫れ)があれば早めに受診することが大切です。精巣上体炎は、泌尿器科の医師の指導のもとで治療を続ければ、生活への影響を最小限に抑えられます。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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