フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
フォン・ヴィレブランド病は、血液がうまく固まらなくなる病気です。血液の中にある「フォン・ヴィレブランド因子」というタンパク質が足りなかったり、うまく働かなかったりすることで、出血が止まりにくくなります。
重要な事実
- 遺伝することが多い出血性の病気です。
- 症状のあらわれ方は人によって違い、軽い場合から重い場合までさまざまです。
- 月経のある女性では、月経のときの出血が多くなることがあります。
- 適切な管理をすれば、多くの人は普段の生活をほぼ普通に送ることができます。
遺伝する出血性の病気の中では、最も多いとされています。ただし、症状が軽い人の場合は、診断されずにいることも少なくありません。
男性にも女性にも発症する可能性があります。特に女性では、月経や出産の時期に出血の症状に気づくことが多くなります。
症状
- 頭をぶつけたあと、激しい頭痛や吐き気がある
- 大きなけがをして、出血がなかなか止まらない
- 血尿が出る、または黒い便(血が混ざった便)が出る
- 胸やおなかの激しい痛みがある
- 関節や筋肉が急にはれて、激しく痛む
- ⚠鼻血が30分以上、圧迫しても止まらない
- ⚠月経の出血が異常に多く、顔色が青白い、めまいがする
- ⚠歯科治療や手術のあと、予定よりも長く出血が続く
- ⚠原因がわからないあざや出血が急に増えた
一般的な症状
- 鼻血がよく出る
- あざができやすい
- ちょっとした切り傷でも血が止まりにくい
- 歯みがきのときに歯ぐきから血が出やすい
- 抜歯や手術のあと、出血が長引く
- 月経の出血量が多く、期間が長い
子供の症状
- 鼻血がよく出る
- 転んだりぶつけたりしたとき、あざが大きくなりやすい
- 乳歯が抜けたあとに出血が止まりにくい
- 予防接種や小さなけがのあと、出血や内出血が気になる
高齢者の症状
- 年齢とともに出血したときに血が止まりにくくなることがある
- 関節の内側に出血して、はれたり痛んだりすることがある(多くはない)
- 手術や検査などの処置で出血のリスクが高まることがある
- もともと遺伝でなく、ほかの病気が原因で後から起こることもある
原因
主な原因
- 遺伝子の変化(変異)により、フォン・ヴィレブランド因子が足りなかったり、正常に働かなかったりする(遺伝性がほとんど)
- まれに、免疫の異常やほかの病気によって、後からフォン・ヴィレブランド因子が低下する後天性のタイプがある
リスク要因
- 家族にフォン・ヴィレブランド病の人がいる
- 自己免疫疾患、がん、心臓の病気などで後天性に発症することがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けがや処置(手術・抜歯など)のあと、数時間たっても出血が続く
- 出血量が多くて不安がある
- 妊娠・出産を予定しているが、出血のリスクについて確認したい
定期受診を予約すべき場合:
- 鼻血やあざが多い、月経が重いなど、出血しやすい傾向がある
- 家族に出血しやすさを指摘されたことがある
- これから手術や歯科処置を受ける前にかかりつけ医に相談する
診断
まず問診で、これまでの出血症状や家族歴を確認します。その後、血液検査でフォン・ヴィレブランド因子の量と働き、血小板の状態などを調べます。診断には専門的な検査が必要で、多くの場合は血液内科(血の病気を専門とする科)への紹介となります。
行われる可能性のある検査
- フォン・ヴィレブランド因子抗原量(VWF:Ag)
- フォン・ヴィレブランド因子活性検査(VWF:RCoなど)
- 第8因子活性
- 血小板機能検査
- 必要に応じて遺伝子検査
診察で予想されること
血液検査の結果は通常1〜2週間程度で判明しますが、体調や年齢の影響で数値が変動することがあるため、数回に分けて検査をすることもあります。診断が確定するまでに時間がかかる場合もありますが、焦らずに医師の指示に従ってください。
治療
治療の目的は、出血を止めること、また出血しやすい場面であらかじめ出血を防ぐことです。病気のタイプや重症度、治療が必要な場面(手術前など)によって対応が変わります。軽症の場合は、ふだんの治療が不要なこともあります。
自宅でのセルフケア
- 切り傷や鼻血のときは、清潔なガーゼなどで出血しているところを直接圧迫して止める
- 歯みがきはやわらかいブラシを使い、歯ぐきを傷つけないようにする
- けがをしやすい運動をするときは、ヘルメットやプロテクターなどの防具を使う
- 医療機関で診察や処置を受けるときは、必ず「フォン・ヴィレブランド病」であることを伝える
- 月経の出血が多く、貧血が心配なときは医師に相談し、鉄分を意識した食事を心がける
医療治療
治療には、体の中に蓄えられたフォン・ヴィレブランド因子を放出させて出血を止める薬を用いる方法と、凝固因子(血液を固めるタンパク質)を静脈から補充する方法があります。また、出血を抑える薬を併用することもあります。薬の形は注射や点鼻薬などがあり、出血時や手術・歯科処置の前に使うことがあります。血液製剤を使う場合もあるため、担当医から治療の目的や方法、注意点などを十分に説明してもらったうえで進めます。
手術が検討される場合
手術や抜歯などの処置をする前には、必ず血液内科医に相談します。処置中の出血を減らすために、あらかじめ予防的な治療(フォン・ヴィレブランド因子を増やす薬や凝固因子の補充など)を行うことがあります。
この病気と共に生きる
自分がフォン・ヴィレブランド病であることを記したお薬手帳や災害時カードを常に持ち歩くと安心です。もしものとき、周囲の人や医療者がすぐに適切な対応をとることができます。出血が止まらないときは、落ち着いて圧迫止血を行い、必要に応じて医療機関へ連絡してください。
生活習慣のアドバイス
- 家族や学校・職場の信頼できる人に、必要な範囲で病気のことを伝えておく
- 激しく体がぶつかるコンタクトスポーツ(ラグビー、柔道など)をする場合は、事前に主治医に相談する
- アルコールは血を固まりにくくさせることがあるため、飲みすぎに注意する
- 市販薬やサプリメントを買うときは、成分が出血に影響する可能性があるため、薬剤師に相談してから使う
食事と運動
運動は健康のために大切ですが、転倒や打撲のリスクが高いスポーツは避ける方が安全です。水泳やウォーキングなど、大きなけがをしにくい運動を選びましょう。特別な食事療法はありませんが、出血が多い場合は鉄欠乏性貧血になりやすいため、レバー、ほうれん草、大豆製品など鉄分の多い食品を普段から取り入れるとよいでしょう。
精神的健康と心の健康
出血への不安や、月経の悩み、治療の負担などから、気分が落ち込むことがあるかもしれません。自分の気持ちを信頼できる人に話したり、同じ病気の人と交流したりすることで安心できることがあります。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まずに医師やカウンセラーに相談してください。
予防
遺伝性のフォン・ヴィレブランド病自体を予防することはできません。しかし、正しい診断と治療、あるいは出血しやすい場面をあらかじめ知っておくことで、出血のトラブルを予防したり軽くしたりすることができます。後天性の場合は、原因となる病気の治療が予防につながることがあります。
ワクチン
ワクチン接種は通常問題なく受けられますが、接種後に内出血が起こることがあります。接種の際は、必ず医師や看護師にフォン・ヴィレブランド病であることを伝えてください。
検診プログラム
手術を予定している場合や妊娠を考えている場合は、早めに血液内科を受診して血液検査を受けることをお勧めします。家族にフォン・ヴィレブランド病の人がいる場合は、症状がなくても検査で確認できることがあります。
合併症
治療しない場合
- けがや手術のときに、重度の出血が止まらなくなることがある
- 鼻血や月経過多が続くと、鉄欠乏性貧血になることがある
- 重症の場合、関節内の繰り返す出血が関節の痛みや動きの制限につながることがある
- 妊娠・出産のときに、産後の出血が増えることがある
長期的な見通し
フォン・ヴィレブランド病と診断されても、適切な治療や管理を行えば、多くの人がごく普通の生活を送ることができます。重症型であっても、治療法は進歩しており、手術など出血リスクの高い場面でも対策を立てることが可能です。不安なことやわからないことは、担当医に遠慮なく相談しながら治療を続けていきましょう。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年8月1日
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