産後子癇前症(さんご しけんぜんしょう)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
出産後に、血圧が急に高くなり、尿にたんぱくが出たり(たんぱく尿)、むくみが現れたりする病気です。妊娠中に起こる子癇前症と同じような状態が、赤ちゃんが生まれた後に現れるものを「産後子癇前症」と呼びます。出産後、数日から6週間ほどの間に起こることがあります。
重要な事実
- 自覚症状がないまま血圧が上がっていることがあります。
- 頭痛や目のかすみは、疲れや寝不足と間違われやすいです。
- 放置すると、けいれん(子癇)などの重い合併症を起こすことがあります。
- 早く見つけて治療を始めれば、多くの場合、回復します。
まれではありません。妊娠中の子癇前症と比べると少ないものの、産後に血圧が高くなる女性は一定数います。特に出産後1週間以内に起こりやすいとされています。
妊娠中に子癇前症だった人、高血圧や腎臓の病気がある人、初めての出産、多胎妊娠、40歳以上の人などはリスクが高いと言われています。しかし、妊娠中に何も問題がなかった人にも起こることがあるため、すべての産後の女性が注意を払うことが大切です。
症状
- 全身がけいれんする
- 意識を失う、または呼びかけに反応しない
- 呼吸が苦しい、息ができない
- 激しい頭痛で動けない
- 片方の手足が動かない、言葉がしゃべりにくい
- 視力が急に低下する
- ⚠血圧が高い(家庭で測って高い値を示す、または医師から注意を言われている)
- ⚠吐き気や嘔吐が続く
- ⚠みぞおちの痛みが続く
- ⚠尿の量が極端に少ない
- ⚠急に体重が増え、むくみがひどい
- ⚠目がかすむ、ぼんやりする
一般的な症状
- 治りにくい頭痛
- 目がかすむ、光がまぶしく感じる
- 吐き気や嘔吐
- みぞおちの痛み(胃のあたりが痛む)
- 急に体重が増える、手足がひどくむくむ
子供の症状
- この病気はお母さんに起こるもので、赤ちゃん自身に症状はありません。ただし、お母さんの体調が悪いと、赤ちゃんの世話が難しくなることがあり、赤ちゃんの安全にも関わります。
高齢者の症状
- この病気は出産後の女性に起こるもので、高齢者に特有の症状はありません。高齢者で血圧が高い場合には、別の高血圧の病気が考えられます。
原因
主な原因
- 妊娠中にできた胎盤が大きく関係していると考えられています。出産後も胎盤が作った物質が血管に影響を与えることがあります。
- 出産による急激なホルモン変化や体液の移動が血圧を上げることがあります。
- 遺伝的な要因や免疫の働きの変化も原因のひとつとされています。ただし、正確なメカニズムはまだ研究中です。
リスク要因
- 妊娠中に子癇前症や妊娠高血圧症があった
- 妊娠前から高血圧がある
- 腎臓病がある
- 初めての出産
- 多胎妊娠(双子など)
- 家族(母親や姉妹)に子癇前症の人がいる
- 40歳以上での出産
受診の目安
診断
病院では、血圧測定と尿検査を基本に診断します。さらに、血液検査で肝臓や腎臓の働き、血小板の数を調べ、症状(頭痛、見え方の異常、みぞおちの痛みなど)と合わせて総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 血圧測定(複数回)
- 尿検査(たんぱく尿の有無)
- 血液検査(肝機能・腎機能・血小板の数)
- 必要に応じて頭部のCTやMRIなどの画像検査
診察で予想されること
診察後、状態に応じてそのまま入院となることもあります。入院中は、血圧を定期的に測り、点滴や薬による治療が行われます。赤ちゃんが近くにいる場合は、面会や母子同室が可能かどうかも医療者に相談できます。不安なことは、その場で遠慮なく質問しましょう。
治療
治療の目標は、血圧を安全な範囲に保ち、けいれんなどの重い合併症を防ぐことです。症状の重さによって、通院か入院かが決まります。産後で授乳中の方は、赤ちゃんへの影響に配慮した治療が選ばれます。
自宅でのセルフケア
- からだを休め、横になる時間を確保する
- 塩分を控えめにし、加工食品や外食を減らす
- カフェインの取りすぎに注意する
- 家事や育児は家族や周囲に助けを求める
- 血圧を測って記録する
医療治療
高血圧に対しては、血圧を下げる薬(降圧薬)が使われます。薬の種類や量は、血圧の程度や授乳の状況に合わせて医師が決めます。けいれんを予防するための薬が使われることもあります。重症の場合は、入院して点滴や心電図・血圧のモニター管理が行われます。
手術が検討される場合
産後子癇前症そのものに対する手術はありません。まれに、脳出血などの重い合併症が起きた場合は、その治療のために手術が必要となることがあります。
この病気と共に生きる
退院後も、体調が落ち着くまでは無理をせず、横になる時間をこまめに作りましょう。重い物を持つ、激しい運動をする、夜更かしをするなどは避けてください。家事や上の子の世話、赤ちゃんのお世話は、できるだけ家族やサポートサービスに頼りましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日決まった時間に血圧を測る
- 十分な睡眠を心がける
- 塩分は控えめに(目安は1日6g未満。医師の指示があればそちらに従う)
- アルコールやタバコは控える
- ストレスをためない(趣味や好きなことをする時間も大切)
食事と運動
食事は、野菜や果物、魚、大豆製品などを中心にしたバランスの良いものを心がけましょう。塩分の多い漬物、インスタント食品、外食は控えめにします。運動は、医師から許可が出るまでは、散歩など軽い動きにとどめ、無理のない範囲で始めましょう。産後の体はまだ回復途中なので、ゆっくりで構いません。
精神的健康と心の健康
産後は、女性ホルモンの急激な変化や睡眠不足から、気分が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。体調が思わしくないと、さらに心配になることもあるでしょう。つらい気持ちはひとりで抱え込まず、パートナーや家族、助産師・医師に話してください。また、自分や赤ちゃんを傷つけてしまいそうと感じたときは、ためらわずに119番へ電話するか、最寄りの保健所・精神保健福祉センターに相談してください。
予防
産後子癇前症を完全に予防する方法はまだありません。しかし、妊娠中から定期的に健診を受け、血圧や体重の変化をチェックすることは大切です。妊娠中に高血圧があった人は、出産後も医師の指示に従って血圧管理を続けましょう。
検診プログラム
産後は、入院中と退院後に血圧を測ることが重要なスクリーニングになります。退院後も、1週間〜2週間後に血圧を確認することをすすめられます。かかりつけ医や助産師に相談して、自分に合った測定計画を立てましょう。
合併症
治療しない場合
- 子癇(けいれん発作)
- 脳出血など脳の障害
- 肝臓や腎臓の機能障害
- 肺に水がたまる(肺水腫)
- まれに命に関わることがある
長期的な見通し
早く発見して治療を始めれば、多くの場合、数日から数週間で回復します。産後3か月頃までには血圧が正常に戻ることがほとんどです。ただし、一度子癇前症になった人は、将来、高血圧や心臓病のリスクがやや高くなると言われているため、定期的に健康診査を受け、生活習慣に気をつけることが勧められます。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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