フェニルケトン尿症(PKU)とは
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
フェニルケトン尿症(PKU)は、生まれつき体の中で「フェニルアラニン」というたんぱく質に含まれる成分を分解する働きが弱い病気です。フェニルアラニンが体にたまってしまうと、脳に悪い影響を与えることがあります。赤ちゃんのときに見つけて、早くから治療を始めれば、健康な発達が期待できます。
重要な事実
- 生まれつきの遺伝子の変化によって起こる病気です。
- 日本ではすべての赤ちゃんを対象に新生児マススクリーニング(かかとからの採血による検査)が行われ、多くの場合はこれで見つかります。
- 治療の中心は、フェニルアラニンを控えた食事療法と、専用のミルク(特殊ミルク)を使うことです。
- 早く治療を始めれば、知的機能への影響をとても小さくできます。
日本では新生児約8万人に1人程度のまれな病気です。
男の子・女の子に関係なく、生まれたときからあり、両親から遺伝子の変化を受け継ぐことで発症します。家族に同じ病気の人がいなくても起こることがあります。
症状
- 意識を失うようなけいれん発作
- 何度も繰り返す激しい嘔吐
- 突然ぐったりして呼びかけに反応しない
- ⚠けいれんはないが、発熱やぐったりが続く
- ⚠乳児の体重増加が悪い、または著しく不機嫌が続く
- ⚠新生児マススクリーニングで陽性と言われ、まだ精密検査を受けていない場合
一般的な症状
- 新生児の時期は目立った症状がないことが多いです。
- 治療せずにいると、発達の遅れや知的な障害が現れることがあります。
- 尿や汗から、ねずみのような特有のにおいがすることがあります。
- 湿疹(皮膚のかゆみを伴う発疹)や、肌の色がうすい、髪の毛が金髪などになることがあります。
子供の症状
- 落ち着きがない、イライラしやすいといった行動面の問題
- 言葉の遅れや学習の遅れ
- けいれん(全身のふるえや意識を失う発作)
- 頭の成長が悪くなること(小頭症)は、治療が遅れた場合に現れます。
高齢者の症状
- 治療を中断していると、気分の落ち込みや集中力の低下が起きることがあります。
- 手のふるえや手足のこわばりといった神経症状が出ることがあります。
- 成人になっても食事を管理し続けることが大切です。
原因
主な原因
- フェニルアラニンを分解する酵素(体の中で物質を変化させるたんぱく質)を作る遺伝子の変化が原因です。
- この遺伝子の変化を両親からそれぞれひとつずつ受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝といいます)。
リスク要因
- 両親がともに保因者(病気の遺伝子をひとつ持っている人)であること。
- きょうだいにフェニルケトン尿症の人がいること。
- 近親婚では遺伝性の病気がまれに増えることが知られています。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- けいれん発作や意識の低下など、緊急症状が見られた場合
- 新生児マススクリーニングで陽性と言われ、まだ精密検査を受けていない場合
定期受診を予約すべき場合:
- PKUと診断されている人は、定期的に血液中のフェニルアラニン濃度をチェックするため、指示された間隔で受診します。
- 妊娠を考えている女性は、妊娠の数か月前から診察と食事管理を受けます。
診断
日本では生後5日前後に新生児マススクリーニングとして、かかとから微量の血液を採り、フェニルアラニン濃度を測定します。陽性の場合は、専門の医療機関で再検査と確認診断を行います。
行われる可能性のある検査
- 血液中のフェニルアラニン濃度の精密測定
- 尿中の代謝物を調べる検査
- 遺伝子検査(原因となる遺伝子の変化を確認する)
診察で予想されること
新生児マススクリーニングから精密検査までの流れは、地域の保健所や指定医療機関が案内してくれます。結果を聞くときは不安を感じるかもしれませんが、医師・看護師・栄養士が協力して、赤ちゃんとご家族を支援します。
治療
治療の中心は、フェニルアラニンをとりすぎないようにする食事療法です。たんぱく質は体に必要ですが、その中にフェニルアラニンが含まれるため、母乳や粉ミルク、食品を調整し、専用の特殊ミルク(治療用のアミノ酸ミルク)などで必要な栄養を補います。血液中のフェニルアラニン濃度を目標の範囲に保つことで、脳への影響を防ぎます。
自宅でのセルフケア
- 食品に含まれるフェニルアラニンの量について学ぶ(食品交換表や栄養指導を活用する)
- 肉、魚、卵、大豆、乳製品などの高たんぱく食品のとりすぎに注意する
- 特殊ミルクや低たんぱく食品を指示どおりに使う
- 定期的に血液検査を受けて、食事量とミルクの量を調整する
医療治療
現在の日本の標準治療は食事療法です。一部の患者さんには、医師の判断のもとで薬物治療が使われることもありますが、すべての人に有効というわけではなく、食事療法を置き換えるものではありません。どの治療を受けるかは、専門医の診察と検査の結果に基づいて決まります。薬の種類や商品名はここではお伝えしません。
手術が検討される場合
フェニルケトン尿症に対して、手術が必要になることは通常ありません。
この病気と共に生きる
毎日の食事と間食に加えて、特殊ミルクを数回に分けてとるなど、生活のリズムを作ることができます。血液検査の結果に合わせて、食事とミルクの量をこまめに調整することが大切です。学校や職場では、簡単に食べられる低たんぱく食品を用意しておくと便利です。
生活習慣のアドバイス
- 低たんぱく食品や特殊ミルクを購入しやすい環境を、医師や栄養士に相談して作る
- 持ち運びできる低たんぱくのおやつや粉ミルクを用意する
- 海外の食品を買うときは、アミノ酸の表示を確認する習慣をつける
- 患者会やオンラインコミュニティで情報交換する
食事と運動
たんぱく質のとりすぎを避けながら、エネルギーは十分とるよう、ごはん・パン・芋・果物などの炭水化物や油を上手に使います。主食や野菜は基本的に自由ですが、高たんぱく食品は食品交換表に従って数えます。運動は普通に行えます。成長期や運動量が大きく変わるときは、たんぱく質の必要量も変わるため、栄養士と相談しましょう。
精神的健康と心の健康
食事を制限しなければならないことは、子どもにとって「周りと違う」と感じることもあり、ストレスや孤独感につながることがあります。思春期に治療を中断してしまうこともあるため、家族や医療者のサポートがとても大切です。治療がうまくいかないと感じるときも、自分を責めずに相談してください。
予防
病気そのものを予防することはできません。しかし、新生児マススクリーニングで早期に見つけて、ただちに食事療法を始めることで、知的障害などの深刻な合併症をほぼ防ぐことができます。
ワクチン
フェニルケトン尿症を予防するためのワクチンはありません。
検診プログラム
日本では生後数日の赤ちゃんを対象に新生児マススクリーニングが行われており、フェニルケトン尿症を含む多くの代謝疾患を早期に発見できます。また、妊娠前に両親の保因者検査を受けることもできますが、遺伝について正しく理解するために遺伝カウンセリングを受けることがすすめられます。
合併症
治療しない場合
- 知的障害(精神発達の遅れ)
- けいれん発作や脳波の異常
- 多動や自閉症的な傾向などの行動障害
- 湿疹や皮膚の色素低下(色白・金髪)
- 尿や汗の特有のにおい(ねずみ臭)
- 妊娠中に高フェニルアラニン血症になると、赤ちゃんへの影響(先天性心疾患や発達障害)のリスクが高まります。
長期的な見通し
新生児マススクリーニングで早期に診断され、生涯にわたってきちんと食事療法を続けることができれば、多くの方は通常の学校生活や社会生活を送り、ほぼ健康に近い状態で過ごせます。治療は長期にわたりますが、専門家のサポートを上手に活用しながら、無理なく続けていきましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年8月1日
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