ハンタウイルス肺症候群(HPS)について
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
ハンタウイルス肺症候群(Hantavirus Pulmonary Syndrome)は、ハンタウイルスというウイルスに感染して起こる、まれで重い呼吸器の病気です。感染したネズミの糞(ふん)や尿(にょう)、唾液(だえき)を吸い込んだり、それらに触れた手で口や鼻をさわったりすることで感染します。初期は風邪に似た症状が出ますが、急に呼吸が苦しくなることがあります。早めに医療機関で診てもらうことがとても大切です。
重要な事実
- ハンタウイルスは人から人へは普通うつりません。
- 感染したネズミの糞や尿などを吸い込むことで感染します。
- 早期に適切な医療を受けられれば、回復の可能性が高まります。
- 日本ではとてもまれな病気です。
この病気は非常にまれです。日本ではほぼ報告されていませんが、海外で野性のネズミやネズミの糞尿に触れる機会がある方は注意が必要です。
感染したネズミがいる場所を掃除したり、キャンプ、農作業、山林での作業などでネズミの糞尿に触れる可能性がある人に、かかるリスクがあります。健康な人でも感染する可能性があります。
症状
- 急に息苦しくなる
- 呼吸が速くなる、または浅くなる
- 唇や指先の色が青っぽい(チアノーゼ)
- 血痰(血の混じったたん)が出る
- 意識がもうろうとする
- ⚠風邪のような症状に加えて、息切れや咳が続く
- ⚠高熱が続く
- ⚠ネズミやその糞尿に触れた心当たりがあり、熱や筋肉痛がある
一般的な症状
- 筋肉の痛み、特に太ももや腰の痛み
- 吐き気・嘔吐
- おなかの痛み
- 倦怠感(体がだるい、疲れやすい)
- 病気が進むと、乾いた咳や息切れ、呼吸困難
子供の症状
- 子どもでも大人と同じような症状が出ます。
- 「のどが痛い」「おなかが痛い」と訴えることがあります。
- 呼吸が速くなる、ゼーゼーするなどの呼吸の症状が急に出ることがあります。
高齢者の症状
- 高齢者では症状が重くなることがあります。
- 体力が低下していると回復が遅くなることがあります。
- 発熱や呼吸困難が急に進むことがあるため、早めの受診が大切です。
原因
主な原因
- ハンタウイルスに感染したネズミの糞、尿、唾液が原因です。
- これらの排泄物を吸い込むこと(特に掃除や吸い込むような作業)
- 排泄物に触れた手で口、鼻、目をさわること
- まれに、ネズミに噛まれることによって感染することもあります。
リスク要因
- ネズミが生息する場所での生活や作業
- キャンプ、登山、農作業、倉庫や物置の掃除
- 換気の悪い場所でネズミの糞尿を扱うこと
- ネズミの糞尿がある環境でほこりを吸い込むこと
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱に加えて、呼吸が苦しい、息切れがする
- 咳がひどい、または血痰が出る
- 筋肉痛や頭痛が強く、ネズミや糞尿に触れた心当たりがある
定期受診を予約すべき場合:
- ネズミの糞尿に触れた心当たりがあり、風邪のような症状が続く場合
- 家族や同じ環境にいた人も症状が出た場合
診断
医師は、症状と、ネズミやその糞尿への接触歴(どこでどのような活動をしたか)を確認します。そのうえで、血液検査などを行い、診断を確定していきます。
行われる可能性のある検査
- 血球検査(血液中の血小板や白血球の状態を調べる)
- 血液中のウイルスに対する抗体検査
- 血液や尿の中のウイルス遺伝子を調べる検査
- 胸のX線(レントゲン)検査(肺に水がたまっていないか確認)
診察で予想されること
診断のためには、病歴の詳しい質問と血液検査があります。結果が出るまでに時間がかかることがあります。呼吸が苦しい場合は、酸素投与や入院をすすめられることもあります。
治療
この病気には特別な治療薬はありませんが、症状に合わせた支持療法(症状を和らげる治療)が中心になります。重症の場合、入院して酸素療法や人工呼吸器による治療が行われます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従い、安静を保つ
- 水分をしっかりとる
- 熱や痛みのつらさを医師に伝えて、適切な対処法を相談する
- 症状が悪くなったらすぐに医療機関に連絡する
医療治療
治療は主に症状の改善を目的とします。酸素吸入、水分や電解質のバランスを整える輸液、血圧や呼吸を維持するための医療処置などが含まれます。重症の場合は集中治療室(ICU)での管理が必要になることもあります。薬については、医師が状態に応じて適切なものを処方します。
手術が検討される場合
この病気に対して手術が必要になることはありません。
この病気と共に生きる
回復には時間がかかることがあります。退院後も疲れやすさや息切れが続くことがあるため、無理をせず、徐々に普段の生活に戻るようにしましょう。定期的に医師の診察を受けて体調を確認することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- ネズミの糞尿に触れる可能性のある場所では、換気を十分にしてから掃除する
- 掃除するときは、マスクと手袋を着用し、糞尿を時は水で湿らせてから取り除く
- 住居や作業場のネズミ対策を行う
- 体調が万全でないときは休む
食事と運動
バランスのよい食事をとり、体の回復を助けましょう。運動は、医師に相談しながら、無理のない範囲で行ってください。急に負荷をかけると息切れの原因になります。
精神的健康と心の健康
重い病気にかかった後は、不安や落ち込みを感じることがあります。そのような気持ちは自然なことです。家族や友人に話したり、医療スタッフに相談したりして、気持ちを一人で抱え込まないでください。
予防
はい、予防できます。ネズミとその糞尿、唾液に触れないことが最も大切です。ネズミの巣や糞尿を見つけた場所では、掃除の前に十分に換気し、マスクと手袋を使って、安全に取り除いてください。
ワクチン
現在、ハンタウイルス肺症候群を予防するワクチンはありません。
検診プログラム
気軽に受けられる特別なスクリーニング検査はありません。おもに、ネズミへの接触の可能性と症状から医師が判断します。
合併症
治療しない場合
- 肺に水分がたまり、高度の呼吸不全に陥ることがある
- 血圧が下がり、ショック状態になることがある
- 多臓器不全に進行する危険がある
- 死に至ることもある
長期的な見通し
この病気は重症になる可能性がありますが、早期に適切な医療を受けることで、回復する人も多くいます。特に、呼吸状態をしっかりと管理し、集中治療を行える医療機関での受診が重要です。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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